10話 いつの間にやら城塞都市.2
色々ごたごたも片付いて……いないけど順調に開発は進んでいる。進んでいるんだけど、俺は異世界を甘く見ていたよ。
石壁と言うより城壁になった壁に登り、俺は復興具合の確認で眼前に広がる街並みを見渡していた。
「開発……進みすぎだろこれ」
ちょっとやりすぎたかなぁ。だって石壁もう完成しているんだけど、この規模ってもう商店や繁華街が主体の街と言うより城壁に囲まれた都市、城塞都市だよね。
屋敷裏手の魔龍の川まで壁で囲って、これ辺境伯クラスの広さじゃん直径何キロメートルあるんだろ。
「普通やってる間に気付くのぢゃ!!」
「いきあたりばったり!」
おいおいミルン、黒姫、辛辣な言葉を投げてくるじゃないか。無計画と言ってくれても良いんだぜ。
俺は何を言われてもへこたれない。
まさか一ヶ月もかからずにここまで開発するなんて誰が想像出来るんだよ無理だって。
地球でこんな開発するなら二年、いや五年以上の年数かけないと出来ないからね。そのかわりに岩山二個消えたけど……岩山あった場所どうするかなぁ。地面硬くて畑にはむいていないし、川から水引き込んで貯水地にでもするか?
「流君、少しいいかね」
何だ村長こんな所にまで。
「流君、君に街? の名前を決めて欲しいのだ」
やっぱり村長も疑問に思っている規模なんだ。
急にどうしたの村長。ここ旧ラクレル村だからラクレルでいいんじゃないか?
「いや、これだけの規模だ。もうラクレル村では無く、新たに名前を決めた方が良いであろう。女王陛下からの許可も頂いている」
根回し早いな。
そんな急に言われても直ぐには決めれないぞ? それでも良いなら考えるけど。
「それで構わん。宜しく頼むぞ!」
それだけ言って降りてったな……村長忙しい筈なのにわざわざ来てまで言う事か?
「気分転換なのぢゃ!」
「さぼりともいう!」
成程、気分転換と言う名のサボりか。
二人共息ピッタリだな。
それじゃあ俺達もお仕事しますかね。
行くぞ、ミルン、黒姫。
「働きたく無いのぢゃ!!」
「はたらきたくないの!!」
それは……俺の真似だな。
そうだよね、働きたく無いんだ本気でね。
※
「ここの名前かぁ……何にしよう」
ケモ耳パラダイスか…いや、それだと人が集まらないだろうし……多種族城塞都市ミルン!! だとミルンの物みたいだからなぁ。
「魔龍の住処はどうなのぢゃ?」
それだと余計に誰も来ないだろ黒姫? いや、案外有りなのかな名所みたいな感じで。
「まおうながれさんのおうち!!」
ミルンさんや、それだと俺、完全に討伐対象になってふははは来たな勇者! 我が魔王流である! ってやらなきゃ駄目になるから却下します。
久々にミルンを肩車して黒姫を抱っこしながらのんびりと街歩きだ。
移住希望者達の要望を聞き、できるだけ種族、特性に合った仕事をして貰っている。
威圧感が有り命令に忠実な馬人、いわゆるケンタウロス達には石壁……いや、もう城壁でいいか。城壁の門番をしてもらい、出入りの管理を任せた。
当初の予定通り門は居住区用、商業物流用、旅行者用、貴族用と四つ造り、各門に常時六名の門番を配置して交代しながら仕事をしてもらっている。
門を入って直ぐの場所には小屋を設置して、有事の際はそこに設置した鐘を鳴らすよう通達済みだ。耳の良い兎族がその音を聴いたらその脚の速さで直ぐに役場へ知らせが行き、兵士として雇った元冒険者や犬耳猫耳熊さん達がその場へ駆けつけ制圧する流れとなっている。
羽人達には城壁内外の伝達と巡回、監視をお願いした。
空を飛んでるから伝達速度が早くて作業効率もアップだね。上を見上げたら結構な人数が行ったり来たり忙しそうだ。
「これでもまだまだ人員不足なんだよなぁ」
二千来た移住希望者の内、百人程お帰り頂いた。
マジカルストーンで紫になった奴はいなかったんだけど、奴隷探しの馬鹿や馬鹿貴族の子供等馬鹿馬鹿馬鹿がおよそ百人って多すぎだろ犯罪者予備軍!?
んで、仮の住民資格を得た人やケモ耳達を各事業へ割り当てしたんだけど、およそ千人は農業系なんだよね。居住区の畑を広く見積もっておいて良かった……良かったんだけど!! 残る九百人の内、四百が職人や商業系、百が歓楽街、百は役場や人員管理で残る百は子供達。
「ここを二百で護るって? 無理だよなぁ」
まあ最悪、他国や魔物が攻めて来たら俺が行って加減無しで魔法使えば……駄目だせっかく作った街? 都市? が一瞬にして粉微塵になる未来しか見えん。
「敵の股間を潰すの!!」
「のぢゃ! 尻を刺すのぢゃ!!」
ミルンさんや、甘えたが素になってますよ。黒姫も、その角で尻刺されたら何かに目醒める人もいるから気をつけような。
「いったい誰の影響を受けてるんだ二人共」