8話 色々ありすぎる日々.4
ドラゴンと龍の違いについては前に記述した通りであるが、色々な者達から話を聞くと、私の中の魔龍の印象とは違いが有るように思えてきた。
そこで私は、長寿であり、先の魔龍との戦いを経験したであろう一人のエルフに接触を試みる。
その者の名はシアード・エルファス。
初代ジアストールと共に魔龍を封印せしめた古代魔術を操るハイエルフである。
金、人脈、噂話等あらゆる手を使い、なんとか接触する事は出来たが、話を聞こうとすると激昂し、捲し立てて来た。
酒に酔っているのか支離滅裂な言葉を発し、しかしその発した言葉の端々には、懐かしさ、後悔、懺悔、憤りなどを感じ取る事ができた為、一つの可能性としてその内容をここに記す。
魔龍とは古き高貴なる龍であり、天候を操り、一部の国では神に等しき存在である。
初代ジアストールがその神に等しき存在を怒らせた為にあの戦いが起きた。
魔龍の側にいた者"魔王"が関係しているものと思われる。
シアード・エルファスは"魔王"の友人であり、酒を飲み交わす程仲が良かった。
シアード・エルファスは魔龍とも話をした事があるらしい。
"魔王"と酒を飲み交わす際にいつも"黒く輝く角を生やし、黒のドレスを身に纏った女性"を同伴させていた。
ジアストールが己の欲の為に獣族達を殺し、"魔王"を斬り、そして起きた戦い。
怒り狂った魔龍を鎮める為、古代魔術で封印式を展開した。
その時に発した魔龍の言葉が────
【いつか必ず目覚めた時に報いを受けさせるのじゃ】
────そう言い残し地下深くへ封印された。
友を助ける事が出来なかった。
友を守ることが出来なかった。
そう言って酔いが回ったのか、シアード・エルファスはゆっくりと眠っていった。
※
あ──なんて言うか……リティナ。
「なんや流にーちゃん」
こののぢゃっ子黒姫がこの本に記されてる通りの魔龍だと?
「記されてる事がホンマやったらそやろ」
だって見てみろよアレ……頬っぺた膨らませてのぢゃのぢゃ怒ってるアレがこの本に記されてる魔龍と同じ存在? 嘘でしょ。
「まあそやねんけど……記されてる姿があまりにも酷似しすぎてるやろ、用心しときや」
「何を話してるのぢゃ!! 我の事を無視するでないのぢゃ!!」
俺とリティナは目を合わせ頷き合い、とりあえず保留ということで解決。
だってもう頭爆発お腹いっぱいだぞ無理だ。
「ごめんよ黒姫、リティナが黒姫の名前をどうやって決めたのか聞いて来たから教えていたんだ」
全力で誤魔化す!!
何か俺、この異世界来てから全然休めてないし気絶ばっかりしてるよね……おかしい。
「そやで、黒姫っていうんやろ? ウチはリティナや、よろしゅーな!」
良しリティナ良い応えだ! このまま誤魔化されてくれ!!
のぢゃ? っと首を傾げたが納得したのか元気良く両手を上げて────
「うむ、黒姫なのぢゃ!!」
────挨拶をしたよ良かった誤魔化せた。
「くろひめのはなし?」
あっ……ミルン文字読めるんだったよミルンさんこの話は黒姫にしちゃ駄目だよマジで!!
「お肉を要求します」
普通の声でミルンが脅して来た!?
この眼は本気だな分かったよお肉焼くから黙っててくれよな!!
「なんや、アンタら見てると……真面目に調べとったんが馬鹿らしく思えるわ」