8話 色々ありすぎる日々.3
あー頭痛い何なの? 何か巻かれてる?
頭を触ったら布ぽい物で頭をぐるぐる巻きにされているけど触り心地が物凄く悪くてごわごわしてるし何でこんな物巻かれてるんだよ。
「あれ……俺いつの間にベットで寝たんだ?」
ミルンと黒姫も居ないし今何時だ? 知りませんよ時計無いもの。時計誰か作ってくれないかなぁ、王都では鐘で時間を知らせていたから絶対時計がある筈なんだよ。だって正確に鐘を鳴らすのって時間分かって無いと無理だよね。まさか大体の時間で鐘鳴らしてたって事は無いよね。いっそ誰かに相談して作ってやろうかな……作れるかな。
あー無駄な事考えて更に頭が痛くなってきた。
「水飲みたい……ウォーター……あっヤバい」
身構えたけど、丁度俺の目の前に直径十センチ程の水球が現れてふわふわと浮いている……暴発しない? 成功したのか危ねぇ、危うく顔面滝行ずぶ濡れ状態になるところだった……これ飲めるんじゃね?
空間収納からコップだしてっと、水をそこに入れま──ベシャッて毛布の上に落ちましたよ。
うん、そこに落ちるかぁ。
「お父さんまだ寝て──」
「静かになのぢ──」
扉開けっぱなしだったからね。
二人共入って来たけど毛布の上の湿りを見て固まったよ違うよこれは魔法の水だよ待ってミルン黒姫何も言わず去ろうとしないでこれ違うからおねしょじゃ無いからぁあああ!!
直ぐに毛布をくるめて部屋の角に投げつけベットが濡れてないか確認──良しっ、ベットは濡れてないぞほら二人共戻ってほら──!!
「おとうさんまだねてるのかな?」
「静かになのぢゃミルン」
あれ? また入って来た……何て優しい子達! 見なかった事にしてくれたんだね大丈夫だよ濡れてないからね!!
「おはよミルン、黒姫」
二人共さっきの事で若干部屋の匂いを嗅いだけど直ぐに頷き飛び込んで────
「おとうさ──ん!!」
「やっと起きたのぢゃ魔王!!」
────ぐぇっ!?
ミルンは俺の顔面に、黒姫は腹部に、見事に突撃をかましましたね。また──って意識が飛びましたよ力強すぎだろ二人共。
「起きたか流君。傷の具合はどうかね」
二人の声が聞こえたんだろうか、村長が入って来たな丁度良い。
「村長おはよう。なあ村長、何で俺頭にこんなん巻いてるの? いつ寝たか知ってる?」
俺の言葉に村長が難しい顔したけど何だよどうしたんだ?
「思い出せぬか? 一昨日流君がシャルネ嬢に襲われた際に魔法を放ち、その衝撃で飛ばされ頭を打ち意識が無かったのだ」
あ────っ痛てて! そうだったな。
豪炎使って何でか爆発。んで、俺も吹っ飛んで頭打ってここに至ると。
二日も寝てたのか俺、どうりで頭が痛い訳だよ。
シャルネはどうした、生きてるのか?
「すまない流君。どの様な手段を使ったのか影殿ですら見つける事が出来なかったのだ」
マジかよ……影さん達を振り切って逃げたのか。
「おはようございます旦那様。回復された様で何よりに御座います。それと……お助け出来ず、申し訳御座いません」
ドゥシャさん入って来て早々謝るのは無しでお願いします。お菓子作り頼んだの俺だし、気を緩めてしまった事もこっちの責任だ。影さん達も追い出したの俺だから責任を感じる必要は無いかな。
「寛大な御心に感謝致します。お怪我の具合がまだ悪いご様子、聖女様をお呼びして参りますので横になられてお待ちください」
出て行っちゃったよ。
あれは相当気にしてるなぁ、シャルネにやられて逃げられて、俺なら地団駄踏んで怒りに燃えて無力に嘆いて引き籠るのに凄いや。
「さて、これからどうしようかミルン、黒姫」
未だくっついたままのミルンと黒姫に聞いてみるが、反応がない……心配かけたな。
「おと…むにむに」
「われは…ぶき…のぢゃぁぁぁやめ……」
黒姫だけ悪夢を見てるのか……トラウマになってね? やり過ぎてしまったかなぁ。
「村長、俺もう少し寝るわ」
ミルンと黒姫も寝ちゃったしね。
村長は分かったと言って壁の方へ一度頭を下げ、ゆっくりと出て行った──壁?
壁の方へ視線を向けると、影さん(院長)が腰に剣を携え優しい眼で俺を見ていたよ怖いから気配消すのやめて!?
「お気になさらず、念の為の護衛です。あの子達では彼女──シャルネに対抗出来ない事が分かりましたので私が見ております」
まったく不甲斐無いと言ってるしやっぱり影さん(院長)は強いんだね。ドゥシャさんが影さん達を指揮していたけど、もしかして影さん(院長)の部下だったりして──あははは考えるのやめよう。
「それじゃあ寝ますけど……寝れねぇよ!!」
※
リティナのビンタで元気はつらつ全身回復一家に一人は欲しい栄養剤件聖女様ってなんで顔面ビンタで起こすんだよ!?
「おはよーさん流にーちゃん。どや? もう痛いとこ無いやろ」
確かに痛い所は無くなったけど俺の顔の立派な紅葉が消えてないんだよ恥ずかしいわ!! でも有難う御座います!!
「おとうさんがげんきになった!」
尻尾振り振りミルンさん心配かけて悪かったねぇモフモフ……癒されるぅ。
「我も心配してたのぢゃ、撫でるのぢゃ」
頭をぐりぐり押し付けて来ないでね黒姫。角がドリルで危ないからな。ほれ撫で撫で。
「ぬふふこれなのぢゃ。黒い奴等とは違うのぢゃ」
黒い奴等? ああ影さん達か……何されたんだか。
「にしても災難やったなー流にーちゃん。女王からアルカディアスには注意せーよー言伝あったんやけど既に襲撃受けてるんやから……くくっ」
お前若干笑ってるだろ。
危なかったんだぞマジで。
あの筋肉人形さんオーガ十体分を押さえれる縄を腕力だけで千切って襲いかかって来たんだからな本物の化物だぞあれは。
「しゃーないやん。ヤバい女に狙われとる流にーちゃんが面白すぎてこれでも堪えてるんやで? 笑てええの?」
笑ったら今ここでお前が醜態晒す迄くすぐりの刑だからな。ミルン、黒姫、準備せよ!!
「おててわきわき?」
「角をぶっ刺せば良いのかや? 刺すなら尻なのぢゃ!!」
そうだねミルン、そのままリティナの脇をワキワキするんだよ。それと黒姫、流石にそれは女の子にやっちゃいけません。ばっちいから。
「誰がばっちいんやコラ!? 聖女に向かって言う言葉やないでホンマ!」
聖女ならもっとお淑やかになりなさいな。ただでさえ見た目派手なんだから内面を変えないとなんちゃって聖女のままだぞ。
「どつきまわしたろかぁ!!」
はいはい御免なさい聖女さまー小さな拳でも痛いからやめて下さい聖女さまーっぷぷ。
「くっ……ミルンが邪魔で懐に入られへん! やめぇその手! あとそこの角生えたガキんちょなんなんさっきからウチの尻狙ろうとるけど!?」
んっ? そうかリティナは黒姫に会うの初めてだったな。ほれ黒姫さんや、そんなにリティナの尻を見つめても駄目だからな、挨拶しなさいな。
「のぢゃ? 駄目なのぢゃ? 刺さんのかや?」
残念そうな顔しないで挨拶しなさいな。
そんなに尻が好きなのか? いや、影さん達に何か吹き込まれたなこれは……角を武器にするって学んじゃったのか。
「仕方ないのぢゃ……試して見たかったのぢゃ」
何の実験だよ尻に角刺すって……後で影さん達に問い詰めなきゃな。
「コホンッ、初めましてなのぢゃ。我は古き高貴なる龍にして魔王より名を授かり者──黒姫なのぢゃ!!」
いつもとフレーズが違う?
魔王より名を授かり者って何だ? 単なる呼び名だろうにそんな仰々しく言う事か?
「はぁ、黒姫っちゅうのかよろしゅうな……?」
どうしたリティナそんな呆けて。
急に本を開けたな……黒姫と本を交互に見てるぞ何その動き新しい首振り体操か?
「なあガキんちょ……もういっぺん名前聞いてもええか?」
その若さで耳が遠くなったのか? 黒姫、もう一回自己紹介してあげてくれ。なんちゃって聖女様が聞こえ無かったって。
「ふむ良いのぢゃ!! 我は古き高貴なる龍『そこでストップやガキんちょ!!』のぢゃ!? 止められたのぢゃ!」
どうしたリティナ? 自己紹介の途中で止められたから黒姫がのぢゃのぢゃ怒ったじゃないか。
「流にーちゃんどえらいもん側に置いとるな……これ見てみい」
何だそのボロい本。
分かったよ見れば良いんだろ本の角を向けるなミルンにワキワキさせるぞ危ないな。
「ワキワキする!」
危なくなったらそれでリティナの脇をワキワキしてくれなミルン。
「ここやこの箇所、よう読んでみい」
はいはい見ますよえっとなになに──龍の追跡調査記録ね、読みづらい。