7話 頭が可笑しい奴等達.5
筋肉人形さんが両手で顔を隠しながらシクシク泣いている…何で? 何もしてないのに。
「流君、流石に年頃の若い御嬢様に筋肉人形と言うのは酷いと思うが」
村長何言ってるんだ? 確かにこの筋肉人形さんは見た目は華奢な御嬢様だけど、殺戮人形と呼ばれてて中身はオーガ十体分の筋肉だろ? しかも頭が病んでるから、合わされば立派な筋肉人形さんだ!!
「旦那様、それは良い二つ名で御座います」
ほら、ドゥシャさんも絶賛の名前じゃないか。泣く程…嬉しいのか成程!!
「その様な訳が無かろう! すまぬなシャルネ嬢、そこの者達は少し…いや、普通に頭が可笑しいのだ」
筋肉村長に頭可笑しいって言われた!? 筋肉村長の方が頭可笑しいじゃ無いか! どこでも筋肉筋肉してるしさ!!
「私のはただの運動だ!! 他国の御令嬢を可笑しな名前で呼びおって!」
村長がまともな事言ってる…槍の雨が降るのか? いや、筋肉の雨か!? 気持ち悪いなぁ…筋肉の雨。
「────です」
んっ、筋肉人形さん何か言った?
「殺ー人形ーです」
村長聞こえるか? ミルン、黒姫、聞こえたの? なんて言ったのこと筋肉人形さん。
「うれしいっていってるの。なんで?」
「変な奴なのぢゃ」
嬉しい? 何で? 何が嬉しいんだ?
「殺戮人形と言われ無かった事が嬉しいと仰られております旦那様」
そうなのドゥシャさん? 筋肉人形頷いたよマジか────ほら村長、俺の言った通りじゃ無いか。
「君達全員…頭が可笑しいぞ!!」
村長が頭を押さえて痛そうにしているな…頭、大丈夫か村長?
※
「それで、筋肉…シャルネ嬢は何を尋ねたいんだ? ぶっちゃけ面倒臭いから早く答えてお引き取り願いたい」
筋肉人形さんって言おうとしたら村長が拳を握って筋肉膨らませて脅して来たよあれ痛いんだよなガチで。
「ぐすっ…ズズッ!」
無表情で涙流しながら鼻水出てるよ。
ほら、これで拭きなさいなまったく、いい歳した御嬢様なのに…いや、ルシィもこんなんか?
「有難う御座いますわブブーッ!!」
おい拭けよ擤むなよそのハンカチ高級品なんだぞ!? 返す? 要らねえわ!! 押し付けるな汚えベッタベタじゃないか。まてよ、案外マニアに売れば元が獲れるんじゃ……あっ!? ミルン! 黒姫! 返しなさいあ────!?
「こんな汚い物は破って棄てるの!!」
「こんな物は燃やすのぢゃ!!」
ミルンが俺からハンカチを奪い破り棄て、それを黒姫が口から火を噴き燃やし尽くした…火を噴けるの黒姫!?
「我は龍ぞ!? 火ぐらい噴けるのぢゃ!」
何で今まで噴かなかったの? それ有ればお前あの時とかあの時とか楽に抜け出せただろ。
「この姿では力を使い過ぎるのぢゃ。余程の事が無い限り使いたく無いのぢゃ!!」
今の余程の事なの!?
「私、光の柱や天にまで届いていた煙の事を調査しに参りましたの。ご存知ありませんこと?」
お前もマイペースだなぁあああおい!? しかもそれ聞く為だけの理由で俺の脚狙ったの!? やっぱりお前頭可笑しいわ!!
「それで、光の柱だって? なんかどっかで聞いたような…何だっけえっとぉー思い出せない」
村長がマジかお前見たいな顔してるし、ミルンは肩の上から俺の頭を叩いてくるし黒姫は抱っこされたまま欠伸してるし影さん達は黒外套で顔見えないし何だっけ? ドゥシャさんどうしたの?
「旦那様……ごにょごょ」
何だよドゥシャさん小声になって……ふむふむ光の柱は俺が教会粉微塵にした魔法で、煙は俺がラクレル村を消しちゃった魔法? んっ? うん、全部俺のやっちゃった事だよねーと言う事はこの筋肉人形さん俺目当て確定パチパチパチパチ────良し帰って貰おう。
「まったく全然知りませんお帰り下しゃいっ!?」
痛っ!? 動揺して噛んじゃった。