7話 頭が可笑しい奴等達.3
黒姫が影さん達? 黒外套さん達? に揉みくちゃにされているのを横目に金髪少女から意識を離さない。だってあの殺戮人形さん影さん達に押さえられて居るのに全然困ってる感じじゃ無いし、ずっとコッチを見て来るんだもの…瞬き一つしない眼で…何でだよ見て来るなよ恐いんだよ瞬きして下さい!
「大人しくして下さい。ドゥシャに命じられたのは捕まえる事のみですので、手荒な真似はしたくありません」
「我々は貴女を傷つけるなとは命令されておりません。抵抗なさるなら手脚を折ります」
「こんな事早く終わらせて私もあのプニプニを愛でに行きたいのです。手隙の影達は狡いのです。私もあのプニプニの生き物を触りたい」
「私はあの魔王の後ろにお御隠れ遊ばされたミルン御嬢様の尻尾で癒されたい。ですのでさっさと終わらせましょう」
うん、影さん達結構余裕なのね…誰が喋ってるのか全然分からないけど一人だけミルン目当てというのは理解した。触らせないぞ?
「ドゥシャさーん、大丈夫かー?」
あれ? さっきまで手当を受けていたのに居ないぞ? どこ行ったっ!?
「大変申し訳御座いません。不覚を取りました」
いきなり後から!? なぜ後ろに回るのさ!? 怪我は大丈夫なのか? 剣が結構深く刺さってる様に見えたけど。
「御安心下さい旦那様。これしきの傷で動けなくなる程、このドゥシャめは柔では御座いませんので」
なら良いけど、メイド服に血が付いているからミルンを抱っこ出来ずに頭だけ撫でて少し悔しそうだな。金髪少女は大丈夫なの? 諦めて無いっぽいけど。
「流石の殺戮人形も影達から抜け出す事は出来ないかと存じます。あの影達は前任者が鍛え上げた影達で御座います故」
前任者…影さんか? もう影さんばっかりで影さん呼びがややこしいなっておい…あの金髪少女化物ですか!?
「四人がかりで押さえてるのに動いてるんですけどドゥシャさん…本当にアレ、ヤバくないか」
※
あらあらどうしましょう、動けませんわ。このままでは彼方の殿方に逃げられてしまいますの。私の様なか弱い乙女を相手に四人がかりとは、酷い事をなさいますのね。
「でも、貴女達では私を止められませんのよ?」
私は唯、あの殿方にお尋ねしたい事が有るだけですわ。私を前に逃げようとなさるから、お引き留めしただけですのに酷いですわね。
「先ずは邪魔な鎖を外しましょう」
脚に力を込め鎖を引き千切り、それを見た黒外套達が一瞬硬直した隙に腕を振り、両の手を押さえている物達を地面に叩き付け、残る一人、見張りに立っている黒外套へ千切った鎖を鞭の様にしならせて振り下ろす。
「あら? そうそう上手くは行きませんのね」
「影を舐めないで貰いたいですね殺戮人形」
鎖を剣で絡め取り直撃を回避しましたのね。素晴らしい動きですわ。でも、私より少し力が足りない様ですわね。
「えーと、貴女? 貴方? は先程、手荒な真似はしたく無いと言われた方ですよね? 私は暴力が嫌いですの、なので優しくして差し上げますわ」
剣に絡まったままの鎖を軽く引っ張ると剣が折れて鎖が自由になったので其れを軽く横に振り、黒外套の腰辺りに巻き付けそのまま引っ張り拘束する。
「何ですかその膂力は、人の其れとはかけ離れ過ぎていますね! ふっ!!」
凄いですわ、鎖が斬られてしまいましたの。腕も一緒に巻き付ければ良かったかしら? それに膂力と言われても私はか弱い女の子ですので力は余り強く無いのですよ?
「貴方達が弱過ぎるのでは無いでしょうか? 私はか弱い女の子ですのよ?」
「どの口が言う人形め」
納得頂かなかったご様子ですの。このままでは埒が開きませんわね、仕方がないですわ。
「一人か二人程、亡くなって頂きますわね」
だってこのままですと逃げられてしまいますもの、必要な事ですわ。
「影総員でかかりなさい!! 命令です!!」
先程のメイドですの? あら? これは流石に多いですわどうしましょう。