7話 頭が可笑しい奴等達.2
「ミルン御嬢様に刃を向けたのは貴様か」
ドゥシャさんが金髪少女の頭上から現れ手に持った包丁をその脳天に突き刺そうとするが、金髪少女が折れた大剣で其れを弾き飛ばし、ドゥシャさんの足先が地に着く前に肉薄して折れた大剣を横薙ぎに腹を狙い、ドゥシャさんは脚を上げその折れた大剣の刃を足場に宙返り。
「何これバトル漫画ですか? 目で追えきれないしあんな動き俺には無理だぞ」
「おとうさん、どうするの?」
ドゥシャさんが来てくれたお陰でミルンは安心したのか甘えた声に戻ってるよう撫で撫で。
「どうしようか、逃げる?」
戦いながらこっちをチラチラと見て来るしあの金髪少女。ドゥシャさん相手に余裕だな、まだ本気じゃ無いって事か。
「あいつ、こっちをねらってる!」
そうなんだよミルン。下手に動いたら後ろから脚チョンパされそうでヤバい。
「我を無視するで無いのぢゃ──!!」
そこに居ると危ないぞー黒っ…頭踏まれたな大丈夫か? うん大丈夫の様だ。のぢゃのぢゃ言って元気いっぱい楽しそうに踏まれているな。
「貴女様は海洋国家アルカディアス代表の御息女、シャルネ・アルカディアス様で御座いますね」
ドゥシャさんその金髪少女知ってるの? ヤンデレからデレを抜いてヤンでるだけの危ない女の子がお姫様? 嘘でしょ?
「失礼な殿方ですわね、私は病んでおりませんわ?」
この距離で聴こえてるのね、いやどう見ても病んでるだろ口調は普通なのに目と口に感情がのってないんだよ口角上げろよせめて瞬きして下さい。
「旦那様、お気をつけ下さいませ。こちらのシャルネ・アルカディアス様には二つ名が御座いますので」
二つ名? 何それ? 俺の魔王みたいな称号か? なるほどその人の特徴と言うか通り名みたいなもんだな。
「シャルネ・アルカディアス様のもう一つの名は────っく!?」
ドゥシャさんの肩に折れた大剣の剣先が刺さり、血が飛び散る。
「殺戮人形姫と、呼ばれておりますの。失礼な二つ名だとは思いません事?」
見たそのまんまじゃんナイスネーミング普通に恐い奴だよね。
※
ドゥシャさんにその刃を刺したまま、更に力を込めて押し込んで行く金髪少女。
仕方なく街への被害を覚悟して魔法の準備をする。だってこのままじゃドゥシャさん危ないし、仕方ないよな!!
「旦那様っ! 大丈夫に御座います!」
いやどう見てもギリギリでしょ!?
駄目? 街が滅ぶ? 信用無くね!? そんな事言ってたらドゥシャさんやられちゃうじゃん!!
「仕方ないですね、旦那様の前で呼びたく無かったですが!!」
「あら? 誰を呼ぶと言うのですか」
金髪少女は余裕の無表情だよマジでどうするのさドゥシャさん…今なら魔法撃てるよ?
「来なさい、影達!!」
えっ影さん? 達?
ドゥシャさんが影達と言葉を発した瞬間、ドゥシャさんと金髪少女を囲む様に黒外套の集団が何の音も無く、それこそ初めから居たかの様に自然と現れドゥシャさんに跪く。
いや、跪く前に助けなさいな何この集団?
「全員影さん? 影さん集団!?」
「「「我ら、ミルン御嬢様親衛隊!!」」」
急に叫ぶなよ!? 何だよ親衛隊って!? ミルンが眼を輝かせて尻尾振っちゃってるじゃ無いか可愛いぞミルン!!
その集団を見て分が悪いと思ったのか、金髪少女がドゥシャさんを刺したままの大剣から手を離し後ずさる。
「影達、殺さず捕まえなさい。他国の要人です」
命令を受けた影達が一斉に動き出す。
影さんの一人が鎖の様な物を投げ金髪少女の脚に絡みつき動きを封じて、別の影さん達が瞬時に近づき両腕を押さえ、別の影さんがドゥシャさんを手当てをしている。
影さん影さんややこしいわ!?
「あらあらこれは、どういたしましょうか?」
お前余裕だな金髪少女。
「我をだずげるのぢゃー魔王!! のぢゃ!?」
あっ、忘れてた。
泣き顔の黒姫が影さんの一人に抱っこされて撫でられてキスされて影さん集団の中へ…可愛い者好き?
「貴様等何を…止めるのぢゃぁああああ!?」
まあ、大丈夫だろ黒姫なら。
ミルンはその光景に尻尾丸めて俺の背中に隠れたし…さっきまで羨望の眼差しだったのに。
「あのひとたちこわい!!」
だよなぁ、何人いるんだよ影さん。