7話 頭が可笑しい奴等達.1
うん。世界樹の枝を湖の浅瀬に刺したら、黒姫の土左衛門が出来上がりましたよ凄い結果ですねー大丈夫か黒姫?
ミルンが湖を犬掻きで泳ぎ、浮いていた黒姫を咥えて戻ってきたな凄いぞ犬掻きだよ可愛い過ぎるよ俺も隣で泳ぎたい!!
「ちょっとした大木になったなぁ。世界樹って大昔に枯れたって影さん言ってたけど、こんなに生命力あるのに何で枯れたんだ?」
湖の中央、丁度水が湧き出る辺りに高さ十五メートル程の大木が成っていた。風が吹くたび緑に輝く葉が揺れ、心地よい音を奏でているけどこれどうしよう。
「有る意味名所が出来ました。看板立て掛けて説明文に世界樹って書いて湖は立入禁止するか? いや、ボート作ってデートコースと言うのも悪く無いしそこでお金を取るか?」
見た目も良いし、綺麗な木だよなぁ。世界樹だから街の護り木になって下さいなお願い致します。と両手を合わせてお祈りお祈り? 木の枝がこっち流れて来た。さっき湖の中に刺した奴は木に成ったから違う枝だよね? まぁ良いやお帰りお枝さん。空間収納内に回収と。
「おみずきもちいいの!」
お帰りミルン。何か毛並みが艶々になってるぞ? この湖の水質かな…何か湖、透き通るぐらい綺麗になってないか?
「のぢゃ!? 我死ぬかと思うたのぢゃ!!」
おっ、生き返ったな黒姫。
「世界樹の奴め、我を蛇と勘違いしおって危ない処ぢゃったのぢゃ!!」
だから引き込まれたのか? 養分にならずに良かったな。
「全部蛇の所為なのぢゃ!! ぷんぷんっ!!」
【9話 頭が可笑しい奴等達】
湖から上がり、柵に身体を預けて陽の光で全身を乾かしている。ミルンは凄いな、全身ぷるぷるとしたら水滴が飛んで一瞬で乾いたよミルン脱水機じゃん非売品です。
黒姫はのぢゃのぢゃと湖の囲いに干されたお布団みたいになりながら木を見つめて何かを言っているな。木とお喋りしてるのか? まさかね。
「あの木は何ですの?」
んっ? あの木はただの世界樹さんですよ?
この街の護り木兼デートスポットさんです。
「世界樹なのですか、初めて見ましたわ。綺麗な木ですわね、是非私に譲って下さいな」
あの木はあそこが気に入ったから無理ですよ。違う場所に行きたいって言ったら考えなくも無いですが。
「そうですの、残念ですわ」
誰この美人さん? 人形みたいな白い肌に、青が混じってる瞳。金髪少女?
「あんた見ない顔だけど、誰?」
こっちに顔向けて来たけど、無表情だな。
ドゥシャさん見たいな鉄仮面とは違って凄く、非常に、マジ者で、感情が見えないぞ。
「申し遅れました。私、シャルネ、アルカディアスと申しますの。ちょっとお尋ねしたい事が在りまして、お声をお掛けしたのですわ」
服乾いたかなー良し大丈夫、乾いたな。
服を着て、ミルンを肩にセットイン。
まだのぢゃのぢゃと遠くの木に何かを言っている黒姫を抱っこして、準備完了だ。
「俺達忙しいから、話は違う誰かに聞いて下さいそれではさようならっ!?」
その場を逃げようとしたらいつの間にか金髪少女の手にデカい剣が握られていて其れを俺の脚に振りかぶって──
「危なっ!?」
──全力でジャンプして避けましたよ危ないな俺の脚チョンパする気じゃん。
「あら? 避けましたのね、凄いですわ」
いや無表情で言われても、あと急に切りかかって来るなんて何考えてるの? 犯罪だぞ?
「だってお尋ねしたい事があるとお伝えしましたのに、離れようとしたのですもの。脚が無ければ離れる事が出来ませんよね?」
それはヤンデレの台詞です。デレはどこ?
可愛く首を傾げても無表情だから可愛くないんだよ恐いんだよ瞬きして下さい。
ミルンが肩から降りて牙を出し威嚇しているし黒姫は俺の胸に顔埋めて良い匂いなのぢゃ! のぢゃ! って何やってんの黒姫さんや!?
抱っこしている黒姫を全力で振りかぶってぇえええ金髪少女にぶん投げました!! あっ、投げちゃった!? 黒姫!?
「のぢゃぁあああああああああ!?」
金髪少女が大剣を腰に添えて──閃──普通の人なら良くて粉砕、悪くて真っ二つになるであろうどちらにしても死ぬじゃんそれと言うその一撃が黒姫に迫り、大剣と黒姫の頭が衝突した瞬間、パキィッと大剣が折れ、黒姫の鋭い角が金髪少女の顔に突き刺さるかと思われたがギリギリで避けられた。
黒姫は金髪少女を飛び越えて地面に顔面ダイブしたな…起き上がった? 頭大丈夫なのか?
「魔王何をするのぢゃ! 我を投げるで無いのぢゃ!」
痛そうに鼻を押さえてるけど頭大丈夫なのか? 大丈夫? 大剣と頭ぶつかってなんで大剣の方が折れるんだよ。金髪少女も首を傾げて折れた大剣と黒姫を交互に見てるしロボットみたいな奴だな。
「貴方様は魔王なのですか?」
そこに食い付くな金髪少女。
魔王じゃ無いですただの職業ニート希望の三十五歳趣味はミルンをモフる事!!
「私は十九歳、趣味はお金儲けで、夢は素敵な旦那様を見つける事ですわ」
ヤンデレからデレを取った様なヤバい人に旦那が出来ると思うなよ。折れた大剣を気持ち悪い手つきで触ってるし顔はやっぱり無表情だ。瞬き一つしない。
逃げたい、けど逃げられない。
「お父さん! ミルンも戦う!!」
甘えた声じゃ無くなった!? 駄目だって絶対アイツ村長より強いだろ。
非常に不味い。ミルンは戦闘モードだけど武器なんて持って来て無いんだよ!!
魔法を使うか? こんな街中で? また隕石来たら終わるぞ! そうだよ…こんな時はあの人だ! ミルンのピンチなら絶対駆けつける困った時のモフモフ仲間!
俺は息をすぅうううっと吸込み助けを呼ぶ。
「ミルンが襲われているぞぉおおおおお!! 誰か助けてぇえええええええええ!!」
金髪少女は欠けた大剣を俺に向け、首を傾げてゆっくりと歩いて来るよ瞬きして下さい。
「何を叫ばれているので?」
あー声出した喉が痛い。
大丈夫、今に分かるさ。
だってこの街には、この近くには────
「ミルン御嬢様に刃を向けたのは貴様か」
────万能メイドが居るのだから。
ピンポンパンポーン(上がり調)
レベルが1上がりました(他力本願だ!?)
ピンポンパンポーン(下がり調)
他力本願言うな!?