4話 異世界のお勉強.2
「おはよう御座います旦那様。先日はミルン御嬢様への失言で御迷惑をおかけしました事、誠に申し訳ございません」
うん。屋敷に入って顔見るなりすぐさま謝罪して来たよ先日の事って? あぁ、ミルンに角っ子がドラゴンだと聞かれた事か。
「もういいよドゥシャさん、見てよアレ。二人共仲良しになったから結果オーライだ」
ミルンが朝ご飯を手に角っ子の口へとそれを突っ込んでは尻尾を振り、突っ込んでは尻尾を振り振り楽しんでいるぞ。
「のぢゃ!? ゲプッもうムグムグいらないのぢゃ! ムグムグゲプッのぢゃぁああああ!!」
角っ子がイヤイヤと首を振るがミルンに角を掴まれスプーンを口に突っ込まれて見る見るお腹が膨らんでいくぞ。
「ミルン御嬢様が上の立場だと擦り込みさせているのでしょう。御立派に御座います」
いや、昨日の時点で角っ子フルボッコされてたから上下関係はハッキリしてるし、あれは妹扱い? いや、角っ子可愛いから御人形扱いだな。
「まだたべれるでしょ! あーんして!」
角を掴まれて逃げられないから口を必死に閉じようと頑張っている角っ子だけど、ミルンの眼を見てヒィッと恐がった瞬間またスプーンを突っ込まれたな…拷問ごっこかな?
そろそろ助けなきゃまた白目になるか。
「ミルン、角っ子はお腹いっぱいだから止めてあげなさい。ちゃんとミルンも食べなきゃだめだぞー」
それを聞いたミルンは角っ子のお腹を見てぷにぷにとつつき、頷いてから自分の分を食べ始めたな…何の行動だ? まあ良いか。
「ドゥシャさん。今日時間あるか?」
この国の事、この世界の事、歴史や暦の事等々聞きたい事は沢山だ。
「旦那様のご下命とあらば、幾らでも私の時間を御使い下さいませ」
時間有るよって事だな。じゃあミルン食べ終わったら二階の部屋で色々聞きますか。
「ごちそうさまでした!」
ミルンが朝ご飯を食べ終わり俺の元へと走って来て背中をよじ登り肩へ到着しましたね。
「我も行くのぢゃゲプッ」
床を這いずって来たよ角っ子…ホラーだ。
あーミルンが角っ子にご飯を食べさせていた理由が分かったぞ…ミルンさんパネェっす。
「のっ…登れなぃのぢゃぁぁぁ」
お腹が膨らみ小さなお相撲さんと化した角っ子が俺に背に登ろうとするが、重すぎて登れないと脚にしがみついて悔しがってるな。
「つのっこおデブ」
確信犯だな。流石にこの重さの角っ子を朝から持つのは嫌だし、脚ならまだマシか。
ミルン、程々にね。
「それじゃ、ドゥシャさんに色々この世界の事、教えて貰いましょうかね」
※
二階の個室でドゥシャさんが棚から地図を出して来たぞあるのかよ地図。それ国家機密じゃ無いよね?
「それでは旦那様、こちらの地図を参考にして先ずは周辺諸国から御説明させて頂きます」
ジアストールは山々に囲まれた小国である。
西側、魔龍の川を超えた先には海洋国家アルカディアス、北にはドルジアヌ帝国、南にはノーザン連邦国、東にはルノサイア国等の小国が点在しており、この国々が存在する大陸はエイドノアと呼ばれている。地図の先、海の向こうには何が有るのかは知られておらず、海の魔物達が船の運航を阻み、未だ解明されていない。
初代ジアストールは海の向こうから来た異邦人では、と言う学者も居るが、五百年前の記録が秘されている為真実は分からないと。
「旦那様、ここがアルカディアスに御座います」
指を地図に這わせ説明してくれるのは良いんだけど…何て書いてあるんだ? 何かくねくねした落書きが書いてある様にしか見えん。
「のぢゃっ? 昔と記述が変わっておるのぢゃ」
えっ、角っ子これ読めるの?
「あるかでぃあすのしゅと?」
ミルンも読めるの? 凄いなぁ。
なにドゥシャさん。不思議生物発見しましたみたいな顔で俺を見てさ。
「失礼ですが旦那様。文字をお読みになれないのですか?」
そんな事無いよ。異世界に来て結構経つけど普通に買物してたし名前も書けるよほら。
「旦那様…それは何と書いてあるのでしょうか? 私には読む事が出来ませんが」
えっ…漢字ですけど…俺の名前。
「おとうさん。かいものするとき、ぜんぶくださいしかいってない!」
そうだっけミルン? 各国の名前は…読めんな…何故だ? 言葉通じているのに。
「旦那様。ミルン御嬢様の御父上として、最低限文字の読み書きは必須に御座います」
ドゥシャさん何で俺の襟掴むの?
どこ行くの?
引っ張らないで歩くからちょっと待ってくれおいどこ行くのか言って下さいよ!?
「おとうさんとおべんきょう!!」
「我もついて行くのぢゃ」
まてミルンお勉強って何こんなおっさんに今更お勉強って…まさか!?
一階の大部屋。そこにあったのは昭和レトロを感じさせる木で造られた机と椅子で、ケモ耳っ子達がいっぱいの天国じゃないのかひゃっほうモフモフだ!!
「旦那様は此方に御座り下さいませ」
力尽くで全列中央の椅子に座らされたぞ先ずはモフモフだろドゥシャさん。
ミルンは俺の右の席へ座り、角っ子は俺の左の席に座ったな…嫌な予感しかしない。
「それでは、授業を始めます」