3話 犬耳ミルンと角っ子幼女.5
岩の上に腰掛け、ゆっくりと魚が喰いつくのを待ってますよと右手をご覧下さい。
「またきた! えぃ!」
ミルンと同じ大きさの魚が上がってるよね木の棒めっちゃ頑丈だな。
「我もきたのぢゃ! のぢゃ!?」
引っ張られて川へダイブしたけど、釣竿モドキを離さずそのまま魚を抱えて戻ったてきたな…デカい魚だ。
ミルンも角っ子もずっとデカい魚を釣り上げてるぞ。俺は坊主ですが何か? 一向に先っちょのミミズ? に魚が喰いつかないぞ。このままでは大人の威厳が!!
こいこいこい魚!? 鯉じゃ無いよね!?
「俺も来たぁあああ!! このしなり具合結構な大物の筈っどりぁああああああああ!!」
ピチャッときたぞうん…手乗りサイズのデカい牙が生えた小さい小魚ですね。キャッチアンドリリースだな。さらば小魚、大きくなってまた釣られに来いよ…。
「おとうさん…いまのおさかな」
どうしたミルン。さっきの魚何か知ってるのか?
「魔王…何と勿体無いのぢゃ」
何だよ角っ子まで、小魚だったろ?
ミルンも角っ子も何も言うまいとまた釣りに集中し始めたぞ何なんだ、さっきの小魚がどうしたんだよ?
釣りから帰り、ドゥシャさんと影さんに魚の事を聞いてみたら────
「旦那様、それは古代魚と言う魚で御座います」
「流さん。それ一匹で金貨三百枚はしますよ」
────と言われ俺は膝から崩れ落ちた。
勿論俺の成果はゼロですよははは…くっそおぉおおおおおおおおおおおお!!
肩の上からミルンが俺の頭を撫で、角っ子は俺の背中をさすってくれた…ぐすっ。
※
逃した魚はデカ過ぎたけど、ミルンと角っ子のお陰で結構な量の川魚が獲れた。空間収納から出してみたら沢山の魚。魚臭い魚。
ミルンがデッドフィッシュ十三尾、バリアントフィッシュ五尾に、角っ子はデッドフィッシュ六尾とゴールドフィッシュ一尾だな凄い数だ。
「何と言うか、凄い見た目の魚共だな」
各魚の名前はドゥシャさんに教えて貰ったが、デッドフィッシュって直訳で死の魚じゃんか。毒は無いけど下顎の牙が凄いよ。
そんで、バリアントフィッシュ。分かりやすい例えが人面魚だな。おっさんの顔に見えるよ食えるのかこの魚っ!? こっち見んな!!
最後に一尾、ゴールドフィッシュ。鱗がマジもんの金で俺が逃した古代魚より劣るらしいけど、三十センチ台の大きさに金色に光る鱗は一攫千金を狙う冒険者にとっては喉から手が出る程手に入れたい魚だそうだ。味も抜群で、一度食べると又食べたくなり、踊って叫んで暴れ出すぐらいの禁断症状がでるらしい。
「どうやって食べるか…素揚げして塩で…いや、串焼きも…いやいや、鍋も良いな」
流石にケモ耳達全員に行き渡る量が無いので今回はミルンと角っ子だけのご飯とするが、いつか海の魚を食べたいなぁ。海あるのかなこの世界? 一通り作るか。
屋敷近くのテントの前でテーブルを設置。まな板代わりの木の板(熱湯消毒済だよ)の上に魚を置いて、ナイフで鱗を取り取り鱗を取り取りした後に、腹を切って内臓を取り出し、しっかりと水洗い。コカトリスの卵を溶いた容器に浸し、パン粉を潜らせて、油の中へさようならデッドフィッシュ。
「どんな寄生虫がいるかも分からんしな」
頭を落として中骨に沿って刃を入れ、手早く、三枚おろし完了。これを十尾分ひたすら繰り返して繰り返して本当に腕が死ぬるぞ。
五尾は頭がついたまま水で洗い、串を通して塩を塗り込み、焚き火の近くで焼きましょう人面魚さん…デッドフィッシュにすれば良かった串に刺さるおっさん顔恐ぇぇ。
気を取り直して、九尾はぶつ切りにして香辛料とタレ、野菜を入れた鍋にポイポイと煮込みましょうね。
最後の一尾、ゴールドフィッシュ。
どうしたもんかこの魚。
鱗取り取り鱗取りからの金ぱらぱら。
鱗一枚何グラム? 鱗十枚何グラム? 売れば幾らになるのやらっと。
「何をしておるのぢゃ? まだ出来ぬのかや?」
もう直ぐだぞちょっと待ってなさい。
あとコレ、鱗が金だって。角っ子のだぞ。
「金なのぢゃ? 光物は好きなのぢゃ!!」
布袋に金の鱗を入れて渡すと、角っ子は其れを懐? に仕舞う。
一瞬角っ子のドレスもとい鱗が浮いて、その中に布袋を入れたぞ? 着脱できるのその鱗ドレス?
「出来るも何も我の体の一部じゃからの。変化させる事ぐらい夕飯前なのぢゃ」
凄い体の構造してるのな角っ子。
じゃあ最後のゴールドフィッシュは火で炙ってサラダと出すか。