3話 犬耳ミルンと角っ子幼女.6
出来たぞーお魚料理フルコースだ。
ミルンと角っ子がまだかまだかと涎を垂らし待っているテーブルへ魚料理を乗せていく。
焼き魚はシンプルに塩でありながら人面魚の顔さえ気にしなければ魚の脂と塩っぱさが合わさってご飯があれば何杯でも胃に収まるであろう。
次に揚げ物。切り身をパン粉でコーティングして油でカラッと揚げたサクサク食感と魚のふわふわな身が口の中を楽しませるが、欲を言えば小麦粉が欲しかったな。
焼き魚、揚げ物に無ければならない汁物。肉のタレを使い、野菜と煮込む事でまろやかに。魚のぶつ切りにその汁が染み込み、優しい風味となっているが、やはり味噌が欲しい。
最後はゴールドフィッシュの炙りサラダ。表面を焦げ目がつかないように炙り、軽くレモモの汁をかけてサッパリとした味わいに。居酒屋でだせば店から酒が無くなる程呑むであろう旨さ。
なんで知ってるのか? 味見したからな。
「おとうさん。さきにたべた?」
ミルンの嗅覚を忘れていたよスンスンと可愛い鼻を向けてくる。味見だよ味見。不味い食事をミルンに出さない為の味見だよ。
「もう食べて良いのぢゃ?」
おっと、そうだな。二人共、召し上がれ。
「いただきます!」
「それ何ぞ? いただきますなのぢゃ?」
二人が魚を口に入れた瞬間、ミルンは耳が立ち尻尾が膨らみ、角っ子は眼の瞳孔が縦長になって背中から小さい翼が生えたな…翼あったのか。勢い良くテーブルに並んだ魚が消え、そのまま喰い尽くす勢いだったのに二人共焼き魚、人面魚の眼を見てしまい一瞬止まり固まって…どうなるんだ…齧り付いた!?
人面魚の頭から齧りつき平らげていった。
※
二十五尾の魚を使った料理を二人で食べ切ったぞ凄いお腹になってる。
「うっ…うごけない。おとうさんたすけて」
「のぢゃふ、もう喰えないのぢゃぁぁゲプッ」
またなのかミルン…俺の腰を潰す気か?
作った甲斐があるけどもね。
「きょうはいっしょにねるの」
そこのテントだけど良いのか? 良い? 分かったよ今日は一緒に寝ようか。
「我も一緒に寝るのぢゃ。誰かと寝るのなぞ…今何年なのぢゃ?」
俺も何年か知らないな。気にした事ないし、明日にでもドゥシャさんか影さんに聞いてみよう。この世界の事何も知らないしね。
「さて、腰を捻ってから屈伸して、腕を回して準備完了! いくぞ! ふんっ!!」
幼女二人は重くないっよ。
軽々とテントに運ぶっよ。
腕がっ腰がっ!?
よいしょっとぉおおおおおお!!
ミルンは顔面からベッドインして直ぐ寝息をたてて、角っ子はベッドに角が突き刺さりのぢゃのぢゃと暴れたがそのまま寝てしまった。
「角頑丈すぎだろ」
ベッドから角っ子を引き抜いてミルンの隣に寝かせてからテントの外へ。
「料理とは、片付けまでの事を言うってな」
食べた後の食器やら調理器具やらを洗い、ゆっくりと陽の光が沈むのを眺めていた。




