第1話:夢かタイムスリップか?
60歳の俺、突然胸が強烈に痛くなって、そのうち意識が薄れていった。浅い意識の中で、後悔が頭の中をグルグル回った。
母ちゃんを大事にすれば良かった。もう一度会いたい。
家族と仲良くしたかった。
もう少し丈夫な身体が欲しかった。
次は手先が器用でもう少し背が高い男の人生を送りたい。
初恋の子になんか言えば良かった。
不思議なぐらいにハッキリと後悔の言葉が駆け巡った。俺だけか?、こんなに死ぬ間際に後悔して、2回めの人生へのお願いばかりして・・・・あれ、中々死なないぞ。助かったのか?夢か?
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「銀次、銀次、そろそろ起きろ」
「あっ姉ちゃんの声、銀次?誰?」
「起きろって、ご飯よ」
「俺?銀次?ってこれいつなんだ?、どこなんだ?」
目を開けて見ると、小さい頃の家の雰囲気だ。ちょっと違う気もするが」
「銀次、いつまで寝とるんや」
「銀次?俺のこと?」
「寝ぼけんな!」
もしかしてこれ昔の昭和か?となると母ちゃんがいるかもしれない!走って台所に行くと、おーー若い頃の母ちゃんだ!なんと、会えた。
「母ちゃん、久しぶり」
「お前、やっぱり寝ぼけとる」
と声を聞いて、顔を見たところで、やばい。家の外に飛び出した。
強烈に涙が溢れた。まさか50年前にタイムスリップして、また母ちゃんに会えるとは。死ぬ前に色々お願いしたおかげなのか?不思議だけど本当に良かった。いやまだこれは夢かもしれない。
でも夢では無かった。次の日も起きると母ちゃんはいた。父ちゃんも姉も妹もいた。朝飯時もなんとかギリギリ平静を保った。昨日の晩飯時も泣きそうになるのを誤魔化すの必死だったな。
ちょっと昔というか以前の俺との違いが分かって来た。なんだかちょっとカッコイイのだ。足が以前より長い感じ。でもでも名前が銀次ってなんなんだよ。昭和でも輩系ネームだぞ。スタイル良くなったこととのトレードか?まあでもラッキーと思うことにしよう。
なんといっても生きている若い時の母ちゃんに会えたんだ。良かった。良かった。
小学校に着いたら、懐かしい面々がいた。先生もすごく懐かしい。しかし、この後単なるタイムスリップではない、違和感のある出来事が沢山待っていた。