難易度A、「しそわかめ」を狩 (ハント) せよ!
穂積 零 先生の活動報告は、料理ガチ勢にとって見過ごすことは出来ない。
どうみても料理系エッセイ作品である。
私がそれを指摘すると、先生より指令が下った。
「ソフトふりかけ、しそわかめ をハントせよ」
貴族令嬢でありながらもハンター資格を持つ私は、さっそく業務スーパーに出向き佃煮コーナーを探す。 もちろん念能力「 凝 (ぎょう) 」を使った。 業務スーパーだけに。しそわかめは……
……無い。
まあ、わかっていたことだ。自社ブランドがメインの業務スーパーは、品ぞろえが良いわけではない。 無いモノは無い、あるモノは過剰にある、それが業務スーパー。
天かす1kgとか誰が買うねん……枕やん……
とはいえついでに野菜と冷凍食品を買った私は、次のお店に向かう。 その名はコープ、通称「 コープさん 」。 兵庫県民、とくに神戸周辺に在住の奥さま方は必ず「 さん 」付けする。 しそわかめは……
……無い。
まあ仕方ない。そのコープ、いやコープさんはATMがあるので、ついでに現金を下ろした。
次に向かったのは高級スーパー。 とある大手家電ショップの別業態で経営されるこの店は、まじ高級路線。 オーガニックがん推し。
店内のBGMがヤバイ、やたら高尚な混声合唱。エヴァの使徒でも働いているのか、カオルくんが来店しているのか。 しそわかめは……
……無い。
まあ仕方ない。近くのキリン堂へ。 しそわかめは……
……無い。
まあキリン堂はドラッグストアであり、総菜や佃煮はメインじゃない。 切り替えて大きめのスーパーへ向かった。
フレッシュバザールという綺麗な広いスーパー。 初めて足を踏み入れたが通路が広い。バリアフリーというかユニバーサルデザインに特化したお店で、電動車いすの方が快適にお買物される姿を目にした。
好印象だ。 問題があるとすれば……
……しそわかめが無いことだ。
最後の望みの綱、二件目のコープさん。 どうせ無いんでしょ? わかってるし。 そう考えることで絶望に耐え、万が一の奇跡を称える心の準備をする。
……しそわかめ、無い。
終了。 ハント、失敗。
帰りは少し寄り道して、ふだん行かない道を通った。 新たな風景を目にすることで、気分を切り替えたかったのだ。
……行き止まりだった。 (実話)
私は帰宅後、昼だというのに焼酎をストレートで飲んだ。
◇◇◇
「宇宙戦争(H.G.ウェルズ著)における火星人の死因に関する一考察」
作者: よろ研 先生
https://ncode.syosetu.com/n9329jp/
xoo 先生の推薦エッセイ。
まず前提として「 宇宙戦争 」を読んでいなければならない。 あるいはトム・クルーズの映画「 宇宙戦争 」は見ておかないと、このエッセイの面白さは伝わらないだろう。
……いや、ネタバレ抜きでこのエッセイは語れない。 ものすごく私も語りたいが無理。「 宇宙戦争 」は、あらすじだけでも星新一のショート・ショートなみに面白い作品だが、そうしてしまうと独特の緊張感が薄れてしまう。
SF好きなら、ゆっくり読んで考察したくなるエッセイ。
◇◇◇
「パチンコの改良は産業の発達に寄与するのか?」
作者: 御代出 実葉 先生
https://ncode.syosetu.com/n4396ef/
xoo 先生の推薦エッセイ。
最初に書く。めっちゃ面白い。
なんか難しそうでパチンコも興味ないし、などと甘く見ていた。 作者がブチ切れている。面白い。
ほんと失礼で申し訳ないが、知的で理性ある方が本気でキレる姿は面白い。 しかもそれを文芸という形で読者に、世間に突きつける。
これだ、こういうのが読みたかったのだ。 私が無い知恵を絞って嘘八百とわずかな真実を書いたところで、本作の足元にも及ぶまい。
読むべきは内容の是非にあらず。 重要なのは、明哲な紳士が本気でキレて、叩きつけるように書いた気迫が、ビリビリ伝わる作品だということだ。
◇◇◇
xoo 先生の推薦エッセイはまだ二作あるが、それは後日。
◇◇◇
「自分たちだけ手の込んだゼリーを食べてずるいずるいと旦那氏が言うので、コーヒーとミルクのセパレートゼリーを作ってあげたら家族みんなが幸せになりました〜おかわりがほしい?割り当てはひとり1個です!〜」
作者: 押根こむる 先生
https://ncode.syosetu.com/n8672hc/
ひだまりのねこ 先生の推薦エッセイ。
……だれもが思うことだが、やはり書かざるを得ない。
タイトル長ッ!
主人公というか、筆者 K氏 (押根こむる 先生) の 「そこの鍋」 というセリフが本当に聞こえるように生々しく感じて私の笑いのツボに入り、その後独り身である自分の境遇を思い出し無言で焼酎をあおった。
それはそうと、「 ずるいずるいと叫ぶ妹もいないし婚約破棄もされていないが 」という文言に私は閃いた。 今さら気付いたのだ、ネットミームと化した嘘松エピソードの存在意義に。
あれは、現代の神話なのだ。 異世界恋愛がテンプレート化しなろうに書かれるのは、散らばった神話をまとめて聖書とする過程なのだ。
それはともかく、私はコーヒーゼリー派である。
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「文系脳でごめんなさい」
作者: 中村 颯希 先生
https://ncode.syosetu.com/n5628fa/
ひだまりのねこ 先生の推薦エッセイ。
私が思う典型的なプロの作品。
ここまで文体が極まってくると、作者の性別がわからなくなる。 太く隙の無い文章が、流し読みを許さず読者の頭に内容を注入してくる。
作中では「 娘の私 」とあるが、女性作家であるとは到底信じられない。 漫画家で言うと「 荒川弘 」や「 森薫 」のような、最近だと「 九井諒子 」、肉の厚みを感じるとでも言い表すべきか。
私は二話目の「 どう握ろうかと言われても 」が心を打ち抜かれた。
何も知らない、何もできない、何も達成していない私がレビューすることに、耐えがたい恥辱を感じる作品である。怖い。
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しそわかめ……
しそわかめ……
久々の買い物で目当てのものが手に入らず
涙目であおる麦焼酎
来客用のジャックダニエルは
本来の目的を果たすことなく
先週私がカラにした