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Candy  作者: 朝比奈叶夜
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プロローグ

 初投稿です。よろしくお願いします。


 昔、私には(たける)君という幼馴染みがいた。


 私の家から歩いて五分くらいの場所に健君は住んでいて、小学校の登下校も毎日一緒にしていた。近所に住んでいるからお互いの母親同士も親しく、健君の家にはよく遊びに行ったし、健君も私の家で何度も遊んだ。


 一緒に過ごせた時間は短かったけれど、健君と過ごした日々は、私にとってかけがえの無いものだった。


 夏休みには、私の母親が運転する車に乗って一緒にプールに行って、買ったばかりの水着を着て泳いで。


 私の誕生日には健君がプレゼントをくれたし、健君の誕生日には私もプレゼントを渡した。後から聞いた話しでは、私へのプレゼントを選ぶ時には健君のお母さんが手伝ってあげていたらしい。


 冬休みは、二人で雪だるまを作って遊んだ。ただ、雪だるまを作った場所が健君のお母さんがいつも車を停めている場所のど真ん中だったようで、その日のうちに雪だるまは撤去されてしまった。二人で一生懸命作った力作だったのに、とちょっと落ちこんだことを覚えている。



 思い出し始めたら切りが無いほど、健君との楽しい思い出はたくさんあった。それだけ、私と健君は仲が良かったという証拠だと思う。


 ……本当に、私にとって大切な幼馴染みだったのに。健君は、もう今はどこにもいない。


 小学三年生の夏、死んでしまったから。


 それも、事故死や病死では無い。殺されたのだ。


 どんな風に殺されたのかを私は知っている。聞いてしまったからだ。健君がゆっくりと殺されていく音を。

 

 地獄に迷い込んでしまったのかと錯覚してしまうくらい、あれは凄惨な出来事だった。


 恐ろしすぎて、そのことを今まで誰にも詳しく話したことは無い。誰かに話せば、なぜ止めなかったのか?と激しく非難されるとは思うが、私だって止められるものなら止めたかった。大切な幼馴染みだ。助けたいに決まっている。


 でも、無理だった。幼かった私は恐怖のあまり体を動かせず、ただ息を潜めて隠れることしか出来なかったのだ。


 全てが終わった頃、私は汗や涙や鼻水などあらゆる体液を垂れ流していて、それはもう散々な状態だった。


 ようやく脅威が去って辺りを恐る恐る見渡した私の目に映ったのは、大きな血だまり。その中心に、ランドセルと靴、そして大量のピンク色の包装紙が落ちていた。


 青かったランドセルは血に赤く染まり、靴は乱雑に散らばっていて、健君の体は一欠片も残っておらず。お葬式に参加した時、棺の中は空っぽで。健君がいなくなったことを、強く自覚させられた。



 どうして、あんなことが起きてしまったのか。大人になった今でも、よくわからない。


 だって、始まりはほんの些細なことだったから。あんなものが、平和な日常を壊すだなんて全く思いもしなかった。




 たった一つの小さな飴が、健君の運命を大きく狂わせてしまったのだ……。


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