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第一話 ある不幸な男の登校

久しぶりの投稿です。

前回の駄作より少しは成長しているといいのですが…。

更新は不定期になると思います。

「読みたい小説更新されてねーよ」そんな時にでも読んでもらえたら幸いです。


ちなみにこれは前作の続きではありません。

ご了承ください。

 俺は不幸だと思う。物を落としたり自販機に金を()われることくらいはいつものことだし、車にひかれそうになることだって月に一回はある。今、生きていることが不思議なくらいだ。あまりにも事故にあうから、命を狙われているということも考えたりした。だけど、運転手は性別も年齢もバラバラだし、金銭面にも不幸の魔の手が及んでいる俺を殺したところでなんのメリットもない。ということは、俺が『不運』のせいで事故に遭いやすいのは紛れもない事実になるわけで、となると今までは人を巻き込んだことがないとはいえ、いつ人を巻き込むことになるかわからない。だから、登下校はいつも一人でするようにしている。けっして友達がいないからではない。




 ということで、今日も一人で登校している。できるだけ、他の生徒と鉢合わせしないようにいつも早めに家を出ているため俺が歩く通学路には人っ子一人いない。たまにごみすてをするおばさんにはあったりはするが挨拶をしすぐに離れるので特に問題はない。ふと上を向けば晴れ渡る空が広がる。空気も澄んでいてとても清々しい朝だ。鳥が気持ち良さそうに飛んでいる。


……ベチャッ


「んの、鳥野郎!気持ち良さそうに(くそ)落とすな!」


 前言撤回。……最悪の朝だ。飛ぶためにふんを体に溜められないとはいえ、せめて誰もいないところに落としてほしい。


クスクス


 誰だ?人の不幸を見て笑っている奴は。そう考えながら笑い声がした方を振り返ると、うちの制服を着た女子がいた。


「……何笑ってるんでい」

「ゴ、ゴメンね。本当に頭の上にピンポイントで鳥のふんを落とされている人を見たの初めてだから」


 笑いすぎのためか目尻に浮かんだ涙をぬぐいながらその子が言った。そして、鞄からポケットティッシュをだし俺に渡す。


「ありがと。え~と、名前なんだっけ?」


 頭についたふんを拭きとりながら言う。

 やっぱり、拭いたくらいじゃきれいに落ちないな。学校着いたら頭洗おう。あ~、ばっちぃ。


「え……。私、神代君と二年連続で同じクラスなのに……。」


 その子が目を潤ませる。

 そういえば、何度か話したことがあるような気も……。特に他人の顔と名前を覚えるのに苦手意識はなかったのだが本当に意識していなかっただけのようだ。ちなみに、神代ってのは俺の姓。名前は千秋。


「千秋でいいよ。ちょい待てよ。え~っと……。さくたしゅん、だっけか?」


 確かそんな感じだったはず。多分。きっと。


「……佐久間潤だよ。今日でちゃんと覚えてね。ち、千秋君。」


 惜しい。




キキーッ


 俺達が横断歩道にさしかかると同時に車のけたたましいブレーキ音がなり信号無視をした車が俺達に向かって突っ込んできた。またか……。なんて、いつもならそんな事を考える余裕すらある。だが、今回は間が悪いことに佐久間がそばにいた。何か理由をつけてでも佐久間から離れるべきだったか。


「チッ」


 俺は舌打ちをすると、佐久間に手を伸ばす。


ゴシャッ


 俺が暴走車の軌道上から出そうと佐久間の腕を掴んだ時だった。


「なん……だ?」


 突然、車がまるで何かにぶつかったかのように前方部分が潰れ、止まった。とりあえず、運転手の安否を確かめる。車に近づくとタイヤが溶けた臭いが鼻についた。窓から覗くと乗っていたのは若い男が一人。血の臭いに混じって酒の臭いがする。飲酒運転だろう。平日の朝なのに飲酒運転とはいいご身分だ。肝心の怪我は、ひどそうだが命に別状はなさそうだ。一応、ブレーキを踏んでいたのが功を奏したようだ。俺は携帯で救急車を呼び、佐久間のところに戻った。


「大丈夫か?」

「うん……。」


 返事とは裏腹に座り込んでいる佐久間の顔は青ざめていた。無理もないだろうな。俺は慣れてるけど、事故に遭うことなんて普通は一生に一度あるかないかだろうからな。とりあえず、佐久間に怪我がないのは良かった。だが、やはりもう少し自分の『不幸』に対し警戒するべきか。


「運転手さんは……?」

「とりあえず、息はしている。素人目だが怪我も命に危険があるってほどではなさそうだ。とりあえず、警察(サツ)にいろいろ聞かれるのは面倒だ。立てるか?」


 なにせ俺達にも何が起こったのかよくわかっていない。そうなると、事情を説明できない以上警察はご遠慮願いたい。

 佐久間に手を貸して立たせると俺は尋ねた。


「どうする?家まで送るか?」


 正直、これだけショッキングなことがあったら学校に行くのはちょっとキツイだろう。


「ううん、大丈夫。このまま学校に行くよ。」

「そうか。でも、まだ顔色悪いぞ?」


 少しは落ち着いたらしく、顔色もほんの少しだが戻ってきてはいた。だが、それでもまだ青ざめている。


「ほら、大丈夫だよ。行こ?」


 佐久間は割としっかりとした足取りで少し歩き、こちらに振り返ると笑顔で言う。

 その笑顔にはやはり少し無理が見える。よほど、学校を休めない事情でもあるのだろうか。……皆勤賞とか? そんな間抜けなことを考えながら佐久間のあとを追い、俺も学校に向かって歩きだした。



良い点、悪い点、ご指摘いただけたらとても嬉しいです。

感謝感激雨霰です。

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