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06 都を去った

翌朝、宿を引き払ってギルドに向かった。様子だけ聞いて、早々に帝都を立ち去ろうと、クレアは考えていた。


町は治安維持部隊があちこちで警備に出ていて騒然としていた。ギルドに着くと、遅い時間にも関わらず冒険者で一杯だ。


受付に行ってクレアが声を掛けた。

「すみません、昨日受けた依頼の件なのですけれど…」

「あぁ、クレアさん、スラムでの依頼ですよね。皆さんが無事で良かったです。あの依頼は取り消しになりました」

「あのー、何かあったのですか?今日から取りかかろうと思って、スラムにはまだ行っていないのですが」

クレアがとぼける。

「幸運でしたね。実は大変なことが。こちらに来る途中で気づいたと思いますが、その件で都は朝から大騒ぎです。なんと、スラムが消滅したんです、昨夜」

「それはまた、いったいどうして?」

「原因は治安維持部隊と皇帝の魔術師団が調査にあたっていますが、今のところ判らないようです。噂では、スラムのギャングが未知の魔道具をいじって暴走させたとか、夜中にドラゴンがやって来て、何らかの原因でスラムを消滅させたとか…」

「ええと…、魔術師が何かの極大魔法でとかは…」

「あんな強力な魔法が使える魔術師なんていませんよ。爆発も何もなしで、一区画まるごと消滅してるんです。帝国一のクレアさんでも無理ですよね」

「まぁ、確かに…」

「それに、魔術師団の調査では、魔力が使われた形跡がないんですよ。不思議としか言えません。そんな訳で、昨日の皆さんへの依頼はキャンセルされました。ですから、未達成のペナルティはありませんので、ご心配なく」

「それで、一般人への被害は…」

これが重要だ。万一、一般人の被害者がいたら…。

「幸いなことに、それが全くなかったんです。もう、狙ったかのようにスラムのギャングだけで…。まぁ、商人組合で裏の商売をしてた人がスラムに行っていた可能性はありますが、申し出はないですね。出るはずもありませんが。犠牲になっていたとしても、自業自得でしょうね」

「一般の方たちに被害がなかったのは何よりでした」

「まったくです。ところで皆さんの依頼はキャンセルされましたが、新しい依頼を受けてもらえないでしょうか」

「依頼がキャンセルされたので、都を出て他の町に行ってみようと思うのですけれど」

「それは残念ですね。帝都のエース冒険者が留守になるのは…。でも、都を出てもこの依頼は出来ますから、是非お願いしたいのですが」

「どんな依頼なのですか」

「スラムを消滅させたドラゴンの調査です」

「ドラゴンと決まった訳ではないですよね」

「えぇ、でも可能性はあるので、念のための調査です。そんなドラゴンが都の周辺を飛び回っていたら大事件ですからね。町々でギルドの支部に寄ったついでに報告していただければOKです。ドラゴンが見当たらなければ、それは良い結果だと言うことで。依頼の失敗の設定はありません。ある程度の回数の報告で成功とみなし、報告をしたギルドで報酬をお支払いします」

「そういうことであれば、依頼を受けることにします。でも、ドラゴンは見つからない気がしますね。そうでしょ、エイダ」

「あー、そうだね…。難しいよね…」


王女たちはギルドを出ると、早々に帝都を後にした。



急ぎ旅ではないので徒歩で街道を歩いている。どこに行くという目的があるわけではないので、道も適当に選んでいた。


最初に王女が音を上げた。

「お腹がすいたよね。そろそろ昼じゃないかと思うのだが」

アマンダが答える。

「そうですね、もう昼食にしても良い頃合いですね。少し先の道沿いに大きな木が見えますから、その当たりで食事にしましょうか」

「え、まさか道ばたで食べるとか言うのではあるまいね」

「え、どこで食べる気だったのですか?あのあたりがちょうどいい場所ではありませんか」

「テーブルや椅子は…」

「テーブルで食べたければ、町か村に着くまで我慢して歩くしかありませんね」

「冒険者というのは、思ったよりも野蛮な生活なんだね…」

クレアが呆れている。

「エイダは軟弱すぎます。そもそも荷物だってアマンダに持って貰っているじゃありませんか。冒険者として落第です。もしも、不足の事態で三人がばらばらになってしまったら、どうするんですか。自分で荷物を持っていないとサバイバルできませんよ」

「クレアがボクをひとりにするなんてあり得ないでしょう」

「万一の場合です」

「アマンダだってボクをひとりにするはずがないし」

「何が起こるかわかりませんよ」

「万一がふたつ重なるなんて、絶対にないから」

「それが起きるのが冒険者の生活です。そうだ、やはりエイダの荷物はエイダに持って貰うことにしましょう。少し鍛えた方がいいかも知れません」

「えー、そんな…」

「幸い、クレア様は水の魔法が得意ですので、持ち歩く水は最低限の量で済んでいます。それだけで、とても楽な旅なんですから」


大きな木の生えている場所につくと、アマンダは早速荷物を二つに分け始めた。

「はい、小さい方の鞄がエイダ様のお荷物です。お食事が済んだら、これを背負って歩いてくださいね」

「なんてメイドなんだ。主に荷物を持たせるなんて、臣下として…」

「主人を鍛えるのも臣下としてのつとめでございます。これからは旅に同行できなかったわたくし以外のメイド6人の分も、このわたくしが鍛えて差し上げます」


木の下にシートを広げただけの場所で、アマンダが昼食を用意した。

「ええと、これは何かな、アマンダ」

「昼食でございます」

「深皿がひとつだけなんだが…」

「はい、間違いありません」

「前菜は?スープは?それにナイフとフォーク、スプーンが1本づつしか無いのだが…」

もう食べ始めているクレアが、エイダに言う。

「それでも多すぎます。それはアマンダが持って歩いているのですよ。冒険者は食器も全部自分で持ち歩くのです。私はこの深皿とスプーンだけですよ、出来るだけ荷物を減らすために。冒険者になると言ったのは、どこの誰だったでしょうか」

「えー、こんな話は聞いてないよ。冒険者ってのは、魔物や盗賊を相手に、バーンとやって、ダーっとやって…」

「それはごく一部です。今やっていることが冒険者ですから。もう止めて屋敷に帰りますか?」

「それはボクの沽券に関わるよね。帰らないよ。大丈夫だ、すぐ慣れるから。ボクに出来ないことなんか無いのだよ」

そういうと、王女はスプーンひとつで深皿の中身を一気に食べ出した。

「本来ならば街道脇にところどころ用意されている野営場所を使うところなのです。なんの用意もない場所では魔物に襲われたとき面倒です。食べ終わったらすぐに出発しましょう」

「そうですね、クレア様。この先はエイダ様も荷物を持ってくださいませね」

「これ、重いんですけどー」

「それでも、わたくしの荷物の半分くらいですよ」

「一度屋敷に戻って、残りのメイドたちも全部連れてこようよー」

「どこの世界にメイドを大勢連れて歩く冒険者がいるんですか」

「ボクは先駆者になるんだよ、この世界最初のメイドを連れた冒険者に」

「馬鹿なことを言っていると、置いていきますよ、エイダ」

「あっ、まってくれたまえ。待ってー」

「急がないと夕暮れまでに次の町につきませんよ」

「もっと、優しくは出来ないのかい。クレアはボクを愛しているんじゃないのかい」

「あなたも私を愛してくれているなら、遅れずに着いてきてくださいね」


残念王女の旅は、前途多難であった…



★★ 外伝は不定期に、あまり間隔を開けずに投稿しています。


本篇は

https://ncode.syosetu.com/n6008hv/

「魔術師は魔法が使えない ~そんな魔法はおとぎ話だと本物の魔術師は言う~」

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