表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/21

11 山賊はいなくなった

絵に描いたように顔面から前に倒れた王女は、すぐに起き上がると双棍に見せかけた見えない剣を抜いたが、構える前に山賊に蹴り飛ばされ、手放してしまった。たちまち山賊たちに囲まれ、後ろ手に縛られる。腰に下げていた双棍の鞘もむしりとられ、脇にほうり投げられた。


幸運がふたつ。


ひとつは、どう見ても12歳くらいにしか見えない容姿と、上等なローブ。どこかのお嬢様としか見えない。まぁ、合っている。なにしろ、いちおうは王女だ。おかげで、身代金が取れるとふんだ山賊たちによって、殺されることも乱暴されることもなくて済んだ。


もうひとつは、手にした武器が30cmに満たない棍棒に見えたこと。子どものおもちゃと思われたのか、そのまま捨てられて山賊に回収されなかった。


森の中に逃げ込んだクレアとアマンダは手が出せずに様子をうかがっている。

「金貨50000枚だ!5日以内に身代金を持ってこい。さもねぇとこいつは殺す!」

山賊は森に向かって叫ぶと、王女を担ぎ上げて洞窟の方にもどっていった。


アマンダが捨てられていた王女の武器を回収してきた。

「いかがいたしましょう、クレア様」

「そうですねぇ…見捨てる訳にもいかないでしょうし…」

大したことではないかのように答えているが、動揺を隠せてはいなかった。

「魔法攻撃を無効化する魔道具を発動していてくれたならば、さっき山賊と一緒に魔法で攻撃できたのですが…あらかじめ相談しておくべきでした」

「ミスター様にお願いするにしても、5日では間に合いそうもありません。そもそも今どちらにいらっしゃるのかも判りませんし…」


上手い思案も浮かばず、どうしたものかと悩んでいると、洞窟の方で何やら騒ぎが起こっている。洞窟の奥の方で爆発音らしき音が何度もし、入り口からは閃光が見えた。入り口から数名の山賊が飛び出てきたかと思うと、洞窟の中から火球が飛び出て山賊たちを吹き飛ばした。


洞窟の入り口から盛大に煙が吹き出すのを見て、クレアとアマンダが洞窟の方へ向かうと、煙の中から煤ぼけた王女が飛び出してきた。その姿を見てクレアはギョッとした。王女が手に黒い球を持っていたのだ。

「駄目だと言ったのに…」

後から王女を追って山賊がやって来る。王女が振り向いて黒い球を突き出すと、山賊たちは慌てて洞窟の中に隠れた。黒い球から数発の小さい火球が放たれ、洞窟の入り口部分で爆発した。


「エイダ、大丈夫ですか、怪我はありませんか」

クレアが王女に声を掛ける。小さな火球を連射しながら王女が叫んだ。

「どうだい、クレア、ちゃんと威力を制御できているだろう。ボクは同じ失敗を繰り返したりはしないよ。このまま山賊を殲滅しちゃおうか」

「どうやって…」

「持っている物を全部渡せというから、ポケットからこれを出し、取り上げようとした男に向かって、小さい火球を放っただけさ。山賊たちが混乱する隙に、魔法防御のバリアを発動させて、相手の干渉魔法を無効化し、後は周り中に火球をばらまきながら、入り口向かって走っただけだね。余裕だね。少しは見直して欲しい物だね。これで残念王女の汚名は返上じゃないかな」

余裕でクレアに説明していると、洞窟の中から矢が飛んできて、王女の手を掠った。魔法の攻撃を打ち消すバリアも物理攻撃には効果が無い。思わぬ傷を受けて、気が動転したのか、魔道具の発する火球のサイズが大きくなった。

「あ、駄目!」

クレアが大きく叫ぶ。アマンダが後ろから王女を抱え、森に向かって突進する。クレアもそれに続き、森に飛び込むと地に伏せた。


洞窟の奥に向かって放たれた火球は煙の中に消え、ひと呼吸置いた後で地面が揺れた。洞窟の入り口から500メートルほど先の地点の森が盛り上がって、やがて光り輝きはじめ、直視できないほどの閃光が生じた。王女たちは地に伏せていたが、爆風はやってこない。


「スラムの時と…」とクレア。

「同じですね…」とアマンダ。

「おかしいな…」と王女。


閃光が納まり、顔を上げた3人の目の前には、森も集落も、崖すらなく、土と岩がむき出しの窪地が数百メートルに渡って広がっていた。


「山賊は…」と王女。

「いませんね…」とアマンダ。

「感知されません…」とクレア。


「洞窟の中にあったお宝は…」と王女。

「何も見えませんね…」とアマンダ。

「何もありませんね…」とクレア。


3人は山道まで引き返し、商隊を追いかけた。山を迂回している街道に出て、目的地の町に向かう。日が落ちるころになって、町の入り口に着いた。帝都で作ったギルドカードを番兵に示し、町に入るとギルドに向かった。ギルドでは何やら人が集まって騒ぎになっている。その中にダグラスさんがいた。


「おう、あんたたちも無事だったか。心配していたぞ。山賊はどうした」

王女が答えようとするのを制して、クレアが答えた。

「残念ですが山賊の根城までいけませんでした。途中で地面の揺れを感じ、遠くで閃光が生じたのですが、あれは何だったのでしょうか」

「そう、そのことで今騒ぎになっているんだ。馬で偵察に行った野郎があんたたちの少し前に帰ってきたんだが、広い範囲の森が消え去って、地面がむき出しの大きな窪地になっているらしい。まだ広まっちゃぁいねぇが、先日帝都で似たような事件があったんだ。帝都のスラム街が一晩で閃光とともに更地になって消滅したっていう事件がな。原因は分からねぇが、噂ではドラゴンの仕業じゃねぇかってことだ。とても信じられなかったが、ここでも似たようなことが起こると、ドラゴンの話も与太じゃぁねぇかもしれねぇ。あんたたちは何か見なかったか」

「ドラゴンは見なかったと思いますが…閃光のあと、頭上はるかを大きな黒い物が飛び去るのが見えました。あのときは目の錯覚かと思ったのですが…」

クレアがしれっと嘘を言う。

「そいつだ、そいつがドラゴンにちげぇねぇ」

ダグラスの言葉に、周りの冒険者の騒ぎが一団と大きくなる。ギルドの受付が叫んだ。

「お手柄です。早速帝都のギルドに報告します。帝都からはドラゴンの存在の調査依頼が届いています。帝都で受けた冒険者がいたようですが、ここでも調査依頼を出すことにします。引き受けてくださる方は、こちらに並んでください」


皆が我も我もと並ぶのを見て

「ボクたちも並んだ方がいいかな…」

王女がつぶやいた。

「並ばずに、さっさと次の町にいきましょう」

クレアが王女を見つめながら言う。

「ドラゴンを発見されるとまずいですから…」

「え、ボク、ボクのせいなの。あれは山賊がいけなかったんじゃないのかい」


その日の夜を町で過ごすと、朝一番で町を出る3人であった。



★★ 外伝は不定期に、あまり間隔を開けずに投稿しています。


本篇は

https://ncode.syosetu.com/n6008hv/

「魔術師は魔法が使えない ~そんな魔法はおとぎ話だと本物の魔術師は言う~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ