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夢みる僕等と、星降る夜に。  作者: ゆうらしあ
第1章 決意、夢現に刺す水の雫、煙草。
4/4

第4話

 日本に帰る2日前になり、星矢はアニーに誘われ、一緒に出掛ける事になった。


『星矢、どうだった? この3週間?』


 大きな川の流れる公園を散歩しながらアニーが、星矢の前を歩きながら聞く。

 静かに流れる川のそばには老夫婦が仲良くベンチで談笑し、若い男女がジョギングしながら笑い合い、穏やかな時間が過ぎる。


 アニーはフワフワな白いニットに、赤いロングスカート、そして黒のヒール。ヒールを履いている為、星矢よりも背が高く、いつも後ろに束ねている髪は下ろされ、何処か官能的だ。

 それに比べて星矢は黒のパーカーに下に白のレイヤード。そして灰色のスウェットに革のブーツ。いつも通り外に出る時のラフな格好。


『楽しかったよ。日本では絶対体験出来ない事の連続だった』


 星矢は穏やかに微笑む。

 出掛けた時は、ほぼ毎日が新鮮な出来事ばかりだった。今ではこれが此処の常識なのだと理解し始めている。


『本当? 良かった。星矢って結構不思議な人だったから考えが読めなかったのよね』

『え? 僕が不思議な人?』

『えぇ、何をしても誤魔化す様に笑って、人の機嫌を逐一気にしているみたいだった…』


 突然のアニーの言葉に星矢は言葉を詰まらせる。それは今までの星矢の人生を的確に表現出来ていた。


 アニーは明るく、皆んなのリーダー的存在だ。やりたい事をズバッと言ったり、よく皆んなをまとめているのをよく見る。

 だが星矢からしたら、他人の事をよく見て1番周りを気にしている人というのがアニーという人物だった。


 この3週間、普段と違う環境という事もあり、星矢は不安と緊張で心身共に疲れていた。

 しかしアニーといると、それが魔法の様に軽くなり、自然と明るい気持ちになれた。


 本当によく見てるな、と星矢は小さく笑みを深める。


『…アレ? だったって事は今は違うの?』


 公園に10月の何処か冷たい乾いた風が吹き、アニーの髪をたなびかせた。そしてアニーは俯きがちに髪を耳に掛け振り返った。


『うん。今は違うよ』


 不覚にもその仕草に僕はドキッとした。


『そ、そう言えば行きたい所にはまだ着かないの?』


 そしてそれを誤魔化す様に問い掛ける。

 今日もアニーのリードの下、こうして出掛けている。いつも目的地は教えてくれない。


『もう少し!』


 アニーは笑顔で駆け出した。





「…」

『此処が私が星矢とずぅっと来たかった場所だよ』


 道から少し外れた裏路地、鼻の奥にツンと響く様な独特な臭い、ジメジメとした苔やカビが蔓延る地面。そして周囲にいる強面の男達。


『アニー…?』

『ごめんね? 星矢?』


 今まで見てきた可愛いウィンクが、今では悪魔の様に思える。


 視界が暗くなると同時に、頬が熱くなった。頭、腹、背中、脚、全てが熱く感じる。続けて数秒後には激痛が身体中を襲った。


 アニーは食べる事が好きだ。夢は世界中の食べ物を食べる事。


 その目的の為にコレをやっているのか?


 夢を叶える為に?


「あ"…あ"に"ー…」

『ごめんね星矢。私にも色々あるの』


 濡れた地面を体全体で感じながら、アニーの笑顔に鳥肌が立った。






 星矢が帰国したのは、それから1月後の事だった。アニーの家に置いてあった自分の荷物は全部売られ、パスポートと身分証だけは頭を下げ、何とか売られないで済んだ。


 そして軟禁状態の中、一瞬の隙を突いて学校に駆け込んだ。何とか学校と協力し、別れを告げる事なく帰国すると、アニーが仲間諸共捕まった事を聞いた。星矢を軟禁したのは金銭目的で、両親の仲があまり良くなく、それで非行に走ったらしい。


 星矢は完全に安全が確保された事に胸を撫で下ろすと同時に、胸にぽっかりと穴が空いた様な喪失感があった。

 だが、いつも通りの日常に戻れ、家族という存在が近くに居る事と比べると安心感の方が強く感じた。


「…ふぅ」


 学校上、風邪で帰国するのが遅れた事にはなってはいる。しかし、このボロボロな姿を見れば、誰がどう見ても他に理由がある事は明らかだった。


「…ただいま」


 両親がこれを見たらどう思うだろうか。

 そんな事を考えながら星矢は俯きがちに、ゆっくりと扉を開けながらアパートの部屋へと入る。


 そして、ある物に目が止まる。




 ーー知らない革靴だ。


 ウチは貧乏で革靴なんて買う余裕はない。増してや父親の職業は現場作業員。革靴は必要ない。


「あーーー」

「ふーーーー」


 聞いた事のない声に、両親共に吸わない煙草の匂い。何故か嫌な予感がする。


「っ…」


 自分の呼吸が自然と止まっている事に気付き、ゆっくりと息を吐く。


 いや、何かの間違いだ。保険屋が営業にでも来たのだろう。それでお茶でも出してもてなしているんだ。


 一歩。また一歩と、リビングに続く扉へと近づく。



「ンッ…アッ!」

「ハァッ! 気持ちいいかい?」


 扉の隙間。そこからは想像の最も最悪な光景が広がっていた。


 頬を赤らめて若い男と交わっている、母親の乱れた姿だった。

「面白い!」

「続きが気になる!」

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