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夢みる僕等と、星降る夜に。  作者: ゆうらしあ
第1章 決意、夢現に刺す水の雫、煙草。
3/4

第3話

 冬月星矢は昔から何をしても続かなかった。

 何にも興味を示す事はなく、周りがその部活に入ったから同じく入り、周りがシャーペンを買ったから同じ物を買い、周りがその中学に行くからと同じ所へ入った。


 何故こうなったのかは分からない。強いて言うなら家庭の事情で少し貧乏で蔑視されていた事が原因だろう。怒るのも、怒られるのも、何もかも面倒臭くなり、何にも手が付かない。人に変に思われない様に作り笑いを覚え、空気を読む事に徹した。


 そんな寂しい小学校生活を送り、中学2年の5月、学校から『留学の勧め』というプリントが配られた。ハッキリ言って特に行きたいと言う訳でもなかった。むしろ英語は得意じゃないし、行くのが少し憂鬱だったぐらい。

 しかし、つるんでいた友達が行こうぜと言うので、親に必死にお願いして行く事にした。



『は、はじめまして…冬月、星矢と言います』

『はじめまして! アニーよ! よろしくね! 星矢!』


 異国の匂い、雰囲気の空港で迎えてくれたのは、同い年の女の子アニー。手には「ようこそ!! せいや!!」と拙いながら平仮名で書かれている。今回のホストファミリーだ。

 こっちにいる間お世話になる訳だが、女の子だとは聞いていなかった星矢は、少し気恥ずかしげになりながら挨拶を済ます。


 そして翌日、アニーが通っている学校へと行って簡単な自己紹介。何日か授業を受けて、思ったよりも刺激的な生活を送る。

 外国の見慣れない授業風景、学校生活、日本よりも自由な校風に、日常では見たことのない食べ物、サイズがひと回り違う食事等々。

 日本に居たら体験出来ない事の連続に、心が熱くなった。


 しかし、それが星矢の無関心な心を少しでも揺るがしたかと言われるとそうではない。



 外の世界に触れても自分は変わらなかった。

 世界に自分が居る必要なんてあるのだろうか。自分が居て誰か得をしているのか? そんなネガティブな思考が自分の頭を駆け巡る。



 目指す所がないのに走り続けるのは苦痛でしかない。何事にも無関心な自分が生きて、何か利益を齎《もたら》すとも思えない。



 出来るとしたら相手の気持ちを汲んで空気を読むぐらい。


「ふぅ……何してんだろう」


 そんな時ふと少し目線を滑らすと、学校の掲示板に張り紙をされているのを見つける。



『流星群を見たくはありませんか?』



 あー、そう言えば流星群の名所なんだっけ。

 此処に来る前に友達と調べてたんだ。


『星矢! 何してるの?』

『あ、アニー、これなんだけど…』

『あー、流星群! それなら此処から近いよ!』


 留学してそれなりの日にちが経ち、拙いながら英語で聞くと、アニーは親指を立てて大きく頷く。


 そして休日、2時間バスに揺られてある場所へと向かった。この時の"近い"は外国スケールだったのだと知った。


『ここがそうだよ!』


 アニーに案内された所は、草原だった。見渡す限り草しかない広大な大地。日本では見る事は叶わないだろう地形だ。


「…綺麗だ」


 星矢が空を見上げると、そっと呟く。

 周りには数人の男女、真上には雲一つない星空が広がっている。都会で見上げてもこの風景は絶対に見られない。


 大きく立ち並ぶビル。空は何処か澱んで見えて、星の光りよりも街の明かりが眩く光る。人もそうだ。

 嫌でも目に入る人。時計を見ながら急いで走るサラリーマンに、フラフラとした足取りの水商売の男女、俺はビックになる! と叫んでいる大学生らしき若い男。色々な目的の人が道を通り過ぎる。



 しかし此処では違う。

 此処に居る人達は流星群を見るという、1つの目的の為に居る。



「悪くない…」

『? 何か言った?』

『あ、いや、何でもないよ。此処って寝転んだりしても良いのかな?』

『大丈夫だよ!』



 自分の言った言葉に少し驚きながら、ゆっくりと草原に寝転ぶ。


 身体に草が当たり少しくすぐったい。穏やかな風が吹くとザワザワっと心地よいBGMが聞こえて来る。大きく深呼吸すると、なお心地良い。


『あ! 星矢見て!』

「え」


 自然と目を瞑っていた星矢は反射的に起き上がってアニーを見る。アニーは空に指を差していた。



 ーーーーー ーーーーー ーーーーー



「……」



 言葉を失った。

 これ以上綺麗な自然現象があるのか?

 目が離せない。


 流星群という言葉は知っていた。

 だがこれ程だとは思わなかった。


 周囲の人々も真上を見て押し黙っている。

 それほどまでにコレは、魅力的な物だという事を表している。


「決めた…」

『え?』

「僕はこれを見続けていたい」


 戸惑うアニーを無視して、星矢は続けた。




「これを見続ける仕事に就きたい」




 少年はこの日、「天文学者」になる事を決意した。

 今まで無気力で無関心だった少年は、初めてそれに興味を示す。


 興味を示したのは地球上の物ではない。遥か遠く、触れる事も叶わない未知の存在、宇宙に存在する…



 "流星群"



 彼はそれに大きく心を揺さぶられた。

「面白い!」

「続きが気になる!」

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してくれたら私のやる気がupしますᕦ(ò_óˇ)ᕤ

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