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夢みる僕等と、星降る夜に。  作者: ゆうらしあ
第1章 決意、夢現に刺す水の雫、煙草。
2/4

第2話

夜勤続きで逆転生活です。

こんな時間の投稿でごめんなさい。

 鬱蒼とした山道を40分近く掛けて降り、流星の街アルカディアを隠す程大きな門へと着く。何故あるかは分からない、謎の門だ。


 星矢はその脇にある関門所へと向かった。


「トントントンッ」

「おー、入って良いぞー」


 両手に持っている荷物を下ろす事なく、口でノック音を出すと、何処か間延びしたダルそうな声が響きドアを押し開ける。


「啓介さん、また中?」

「当たり前だろうがよ。こんな寒ぃのに外に居れるか。それで? どうだった今日は?」


 中には中年の男。天パの髪を隠す様にキャスケットを深く被った小波こなみ 啓介けいすけは、椅子に深く腰掛け、爪楊枝を加えて言った。

 テーブルの上にはコンビニの袋と、ナポリタンの包装とビールの缶が乱雑に置かれていた。


「別に。いつも通りだったよ」

「そうかそうか。お前も物好きだよなぁ。こんな時に山頂に行くなんてよ」


 啓介は大きく欠伸をして、震えながら言う。


「此処からは霞んで見えるんだよ。山頂の方がよく見えるから」

「あー、そーかい」


 啓介は呆れたかの様に肩をすくめると、一気にビールを煽った。夜勤の勤務は20時から3時まで。深夜に街からの出入りが少ないからと言って勤務中に飲酒はまずいだろう。


「僕は啓介さんみたいになりたくないからね」

「あー? 何だよオメー、俺と一緒に酒を飲めねぇって言うのかよ」

「そう言うことを言ってるんじゃないよ。はぁ、これだから飲んだくれは」

「なんだとぉ!?」


 啓介がいつもの様にふざけながら首を絞めてくる。それを星矢は「ごめんごめん」と笑いながら宥める。

 長年の付き合い…正確には高校に入学してから5ヶ月程であるが、彼だからこそ歳が離れていてもこんな冗談が言い合えるのだろう。


「はぁ〜、日曜の出勤なんて酒飲まねえとやってけねぇっての!」


 啓介は疲れたのか大きく息を吐き、乱暴に椅子に座り直して、また酒を煽った。

 それはそうだけど仕事だから仕方ないでしょ、と思った星矢だったがそれに「お疲れ様」と気遣いの言葉を啓介にかける。


「本当によ〜…来るのはお前ぐらいだし。早くグラビアでも買って帰りてぇぜ」

「まぁ一応緊急で何か起こった時には、すぐ行動出来る様にしとかないとダメだよ?」

「わーってるって! とっととお前もスキャンして帰れ! 高校生は22時以降に出てたら補導されるからな!」


 啓介に眉間に皺を寄せて嫌そうに手で払われると、星矢は呆れる様に街へと続く扉の近くまで行く。そして荷物を下ろし、横にあるスキャン装置へと手を伸ばした。


 冷たい。本当に稼働しているのか怪しいと思う程だ。




 ピッ ピピッ 


『ーーアルカディアの住人と判別。お通り下さい』




 それから2、3秒程でそう告げられ、ドアが開き冷たい風が頬を撫でる。


「啓介さん、じゃあまた来週ね」

「おう、来週こそは日曜出勤じゃ無いだろうがな」


 いつもながら謎の自信溢れる予知に、星矢はぎこちない笑みを浮かべながら関門所を抜ける。


 そして、目の前に広がるは何処にでもある田舎町だった。ポツポツと距離を置かれて建てられた建物。高い建物は学校と星園ぐらいで、それらを世界一綺麗だと言われる、アルカディアの夜空が街を彩る。


「僕にとってはこの街の空よりも山頂の方が綺麗だと思うんだけどね…」


 何故此処が世界一綺麗だと言われているのか分からない、そんな事を続けて呟くと、所々に存在する電柱の灯りを下に進んで行く。


 誰も居ない田舎道、穏やかで、何処か寂しさを感じる。


 だが、元々都会に住んでいた星矢にとっては悪くない気持ちだった。


 車の騒音や電車の走行音、この時間帯なら酒場のキャッチや酔っ払いだろうか。今ならそう言うものは、自分の事を一切邪魔してこない。


「まぁ、あの時の僕だったからこそ、アレで良かったんだろうけど…」


 懐かしみ、自分を馬鹿にした様に鼻で笑うと、明日来るであろう学校を通り過ぎ、そして学校よりも大きい、少し不気味な星園を通り過ぎる。


 詳しくは分からないが、星園は星を見る為に全てがガラス張りになっている建物らしい。田舎である此処では、異色を放っている建物と言える。


 でも…皆んなから変に見られても星をずっと眺められるなら良いな、と改めて思いながら流し目で見ていると、ふと、月明かりに星園の中に誰かが居た気がして立ち止まる。


 学校の登校時間、下校時間に見て行くが、決して中が見える事なんてなかった。


「………気のせいかな?」


 それから何秒待つが、見えるのは田舎にとって近未来そうな、無機質な物質が只々佇んでいるだけ。


 星矢は一度首を傾げた後、家へと向かった。






 そして自分の家、もといボロアパートへと到着した星矢は、階段を登り、201号室と札が書かれているドアの前まで行くとドアを開けた。


 ゆっくりとした足取りで部屋へと入って行く。

 使い古された錆びたキッチンを抜け、扉を開ける。そして誰かがマジックで身長を測っていたのか何本か横棒が引かれてる柱を通りゴミはテキトーに、そして所々軋む床を避けながら、望遠鏡は丁寧に窓側へと運んだ。


 時刻は21時50分。補導時間ギリギリだ。


 しかし、まだ寝るには早い時間帯。


 望遠鏡のすぐ横には敷きっぱなしの布団。星矢はそこへ座って、望遠鏡を覗いた。




 ーーーーーーー




「うん…」


 空一杯に輝く星達。

 これは季節毎に変わる風景だ。ごく自然に、ゆっくりと姿を変えて行く。少しずつ、少しずつだが変えるその姿に、星矢はとても惹かれていた。



 夢中に目をキラキラとさせ見ていると、時間はあっという間に過ぎる。



 星矢が近くの目覚まし時計に手を伸ばすと、それは両針とも12を回っていた。



 それを確認した星矢は、手早く風呂、歯磨きを済ませる。


 そして自分の布団へと寝転んだ。



「今日も良い1日だった…明日も頑張ろう…!」



 そう呟いた。2年程前の自分には言えないその言葉に自然と心が昂るのを感じた。


 その言葉は、小さく、小さく部屋に響く。


 壁は隣の住人の寝息が微かに聞こえて来るほどに薄い。

「面白い!」

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