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世界を変えて、繰り返される夢  作者: うみねこ
3/3

ドライブの夢

蝉の声が響き渡り、暑さによって視界が揺れている。

遠くには海が見えた。

振り返ってからガードレールにもたれかかり、ポケットからライターを取り出して煙草の火をつける。目の前には私が停めた黄色い車が静止しており、まだ乗ってはくれないのかとチカチカとランプを点滅させていた。

誰かと待ち合わせをしていてここまで来たような気がするけれど……肝心の誰と待ち合わせをしていたのか全く思い出せない。

顔を思い出そうとすれば、モザイクがかかったかのように輪郭も、顔も、表情も何も分からなくなる。


「まぁいいや、どうせ実際に会ったら思い出せるし言ってくれるだろ」


きっと待ち合わせの相手は来てくれると根拠はないが信じ込み、煙をはいた。

何時に待ち合わせをしていたっけと思いスマホを開く。

時間は13時を指していて、そんなに遅かったっけと首を傾げつつ新規のメールを見た。

恐らく待ち合わせをしている人からのメールで「もう少し時間がかかるかもしれないから車の中にいてでも待っててくれ」と書かれている。

まだ待たせるつもりなのかと思いつつ、スマホを閉じて車の中に戻った。

ここに来るまでにつけていた冷房の冷たい空気が車内を満たしており、少なくともまた付け直す必要がないかなと思い、シートを倒して休むことにした。


「…………」


ドライブに行くってこちらから提案したのは良いけれども、どこへ行くなど全く考えておらずノープランだったので、スマホでいい場所がないかと探す。

山はここからは遠いし、午後から行くにしても何もできないだろう。そもそもそんな準備はしていない。

海は……目の前にあるからここに来るのにわざわざ車出さなくっても良かったと損した気分になるのは御免だ。

やっと立てられた予定は、少し遠くのお店で晩御飯を食べるくらいにしておいた。


どれくらい経っただろうか、行く場所を決めてしばらく休んでいるとまたメールが来た軽快で短い音楽が鳴る。

メールにはもうすぐ着く、と書かれているはずだった。

しかし想像に反し、そのメールには


「今すぐそこから離れろ」


と表示がされていた。

意味の分からないぞわりと背筋が凍る。きっと何かの冗談だろうと思い込んでいると窓が叩かれる音がニ、三度響いた。

ああやっと来てくれたんだと思い、音のする方を見る。


そこには、顔のない人間がいた。

目や鼻、口がある場所は落書きのように赤く塗りつぶされぐちゃぐちゃになっている。人間と言い難いそれは笑って、窓を叩くのをやめ、代わりに手を窓に押しつけた。

手も同じように赤く塗りつぶされ細い糸からでる赤い液体がずるずると窓を赤く染めていく。

そいつは、窓に赤い手型を残し、車のドアを開こうとしているのかガチャガチャと内部に音が広がった。


「ひっ……」


異様な光景にそう短く悲鳴を漏らし、どうしたらいいのか、どうすれば助かるのか思考を張り巡らせる。

しかし、いくらしても良い案は思い浮かばずただ、開けられない様に鍵を閉めるだけだった。

しばらくして、目の前のそれは開けようとするのをやめ、ゆらりと顔を上げた。


彼は、なぜ?とでも言いたそうに悲しそうな表情を浮かべ、ふと何かに気づいたかのように、携帯を取り出し何か操作をしてそれを、顔の横に当てた。

それと同時に私のスマホも壮大な音楽が流れ始める。

電話の着信の音楽だった。

怯えつつ、おそるおそるスマホを手に取り電話に出る。


ゴボゴボという溺れているような音と、弱弱しい息づかい、人々の騒がしい声、何かを話している男の声、そして、電車のアナウンスの声がスピーカーを通し流れ出てきた。

なにか嫌な予感がして、顔を上げると気づいてしまった。


目の前にいる彼は、私が待っていた相手だったという事に。

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