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21・思わぬ救い

 間を開けてしまい申し訳ありません、本当ならこの話で終わらせる筈でしたが長くなってしまったので2話に分けることにしました、どうぞお読み下さい。

「如何にドラゴンでも、上級悪魔の私には及ばなかったようねえ。」


「まあ、どんな力を持っていても所詮は獣よ。」


 余裕の表情で見下ろすメレスとアウスト。


「放せってのコラー! 根暗! 性悪!」


 シェリーは触手に掴まったまま叫ぶ。


「グ……グォ……」


 ヘリオスは所々から血を流し、ボロボロで横たわっていた。


「ハァ……ハァ……クッ……」


 怪物の攻撃でボロボロになり、リリーの浄化に魔力を使い果たして息を切らせているラウル、眠っているリリーに背中を向けたままフラフラと立ち上がる。


「フッ」


 しかし、メレスは鼻で笑うと、ラウルを触手で軽く叩く。


「グァ!」


 ラウルは倒れてしまい、聖剣も手から離れて遠くへ弾かれてしまった。


「ラウル!」


 叫ぶシェリー。


「もう魔力も使い果たしてヘロヘロのようだけど……まだやる気かしら?」


 ラウルは尚も強い眼差しで二人を睨む。


「そう、なら……」


 メレスは触手の先を鋭く変え、ラウルに止めを刺そうとする。


「待て。」


「あら?」


 突然メレスを制止するアウスト。


「ラウルよ……私の下へ来い。」


「!?」


「はぁ!?」


 突然自分の下へラウルを勧誘するアウストにラウルとシェリーは驚愕した。


「兄上……?」


「考えてみろ、何故我らが戦う必要がある。」


 融合していたメレスの額から離れ、ラウルの前に降りて来るアウスト。


「我らは愚劣な国の愚劣な家に生まれ、寂れた思想に苦しめられて来た者同士……」


「大した能力も無いのに先に生まれただけで持て囃されてきた屑と、その屑を持て囃して来た愚物とは違う。」


 アウストはラウルに手を差し伸べる。


「我らは同じ境遇を味わった者同士、本当の家族ではないか。」


「私の下へ来れば、お前の仲間も助けてやろう。」


「駄目よ!ラウ……ンン!?」


 叫ぶシェリーだが、細い触手で口を覆われる。


「うるさいわよチビ助。」


 メレスはシェリーを睨む。


「どうだ? ラウルよ。」


「既にドラゴンはボロボロ、妖精は手も足も出ず、魔力も殆ど使い果たし、もはや他に選択肢はあるまい。」


 手を差し伸べるアウストに対し、ラウルはゆっくりと手を伸ばす。


「フッ……」


 そんなラウルに対し、口角を吊り上げるアウスト、しかし……


パシッ


 ラウルはアウストの手を払いのける。


「む?」


「お断りします……」


 ラウルは強い眼差しでアウストを睨む。


「自らの憎しみの為に、悪魔と契約し、無関係な人間を恐怖に陥れ、リリーを悪魔に変えようとする……そんな人間の下に就く気は……毛頭無い!」


 さらに強い口調で叫ぶラウル。


「そうか……ならば仕方がない……」


 アウストは魔法陣から禍々しい剣を取り出し、その剣を振り上げる。


「お別れだ……弟よ……」


 アウストが剣を振り下ろそうとした、その時だった。


「オオオオオオオオーーーーーー!!」


「!?」


「!?」


「!?」


「!?」


 突然響き渡る叫び声、それに驚くラウルとアウスト、シェリー、メレス、四人が声の聞こえた方に目を向けると、黒いフードを被った人物がラウルの聖剣を逆手で握り、メレスに飛び掛かっていた、そして、その聖剣は不意を突かれたメレスに突き刺さる。


「ギャアアアアアーーーー!!」


「ヌ……グ……グアアアアアーーー!!」


「な!?」


 聖剣を突き刺されたメレスは所々からドス黒い血のような液体を吹き出しながらもだえ苦しむ、さらにアウストも同じように全身から血を吹き出し悶え苦しむ、その様子にラウルは驚いた。


「グ……ガ……な……何者……だ……」


 アウストが苦しんでいると、フードが捲れ、その素顔が明らかになった。


「!?」


「兄上!?」


 二人は驚愕した、なぜならその人物は……


「ハッハハハ! どうだ、聖剣の味は!」


 二人の兄、アラスター・ロックヴェルトだったのだ、アラスターは笑いながら聖剣に魔力を注ぎ続ける。


「ア……ガ……ガアアアア!!」


「ガガ……!! ガ……! キ……貴様ぁ……!!」


「先に生まれただけで持て囃されて来ただぁ……? 馬鹿にしやがって……俺の力を思い知りやがれ!!」


 アラスターは怒りを込めて叫び、魔力を注ぎ続ける。


「ア……ガガ……ガ……舐めるなぁぁぁぁ!!」


「!? ウ……ウワアアア!!」


 メレスは魔力を爆発させる、アラスターは吹き飛ばされ、聖剣も手から離れた。


「よくも……やって……くれたわね……」


 メレスはボロボロの体を引きずりながらアラスターを睨む。


「ヒ……ヒィ……!」


 アラスターは腰を抜かした様子で後ずさる。


「この……虫けらがぁ……!!」


 メレスは左手をアラスターに向かって振り下ろす。


「う……うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 アラスターは逃げ出すが、頭上にメレスの左手が迫る。


「グォォォ!!」


「な!? こいつ……まだ……」


 しかし、その左手は再起したヘリオスによって止められた、二体はボロボロの身体で激しく組み合う、アラスターはそのまま逃げ去った。


「ラウル、大丈夫!?」


 メレスがダメージを負った事で触手から解放されたシェリーが聖剣を拾い、ラウルに近寄る。


「うん……なんとか……」


 ラウルは聖剣を受け取り、フラフラと立ち上がる。


「リカバリー!」


 ラウルに回復魔法をかけるシェリー。


「ありがとうシェリー。」


 肉体が回復したラウル、しかし、完全には回復できておらず、少しふらついている。


「ガフッ……クッ……愚兄め……」


 アウストは血を吐きながらフラフラと立ち上がる。


「強い契約で悪魔と繋がっていたから、聖剣の作用ががあいつにも発生したようね、多分あの様子じゃあしばらく魔法も使えないわ。」


 シェリーはアウストの様子を見て話す。


「……シェリー、リリーを頼む。」


「え?」


「このまま闘ったら、リリーを巻き込みかねない。」


「けど、あんた達だけでどうにかなるの?」


「一応考えはあるよ、うまく行くかはわからないけど……お願い。」


「ハァ……しょうがないわね……」


 シェリーはリリーの下へ行くと、風の魔法でリリーの身体を浮かせる、そしてリリーと共に物陰へと隠れる。


「……何を企んでいるのか知らんが……これしきの事で勝てると思うな。」


「……」


 互いに剣を構えるラウルとアウスト、ヘリオスとメレスも二人の下で対峙する。

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