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1・苦痛の日々

「ファイアボール!」


 放課後の夕方、ここはペンタレスタ王国魔法学校の庭、その一画で一人の赤い髪の少年が魔法の練習をしていた、しかし、その火の玉は直径5㎝程の小さいサイズだった。彼はラウル・ロックヴェルト、魔法学校の生徒にして公爵家であるロックヴェルト家の三男だ。


「ハッハッハ、なんだそれ! ファイアボールのつもりか!?」


「また無駄な事してんのんか? 落ちこぼれ。」


 その火の玉を見て五人の男子生徒が笑っていた。


「ベルディクト……」


 真ん中にいたリーダー格であり同じ公爵家である金髪の男子、ジン・ベルディクトを睨みながら苗字を呼ぶ。男子生徒の言う通り、ラウルは子供の頃からどう言う訳か魔法がうまく使えない、その為「落ちこぼれ」等と呼ばれている。


「本当のファイアボールってのはなあ、こうやるんだよ!」


 ジンはラウルに向かってファイアボールを放つ、その大きさは直径50cm程だ。


「!?」


 ラウルはファイアボールを避ける。


「ほらほら、避けろ避けろ!」


 他の男子生徒も次々に魔法を放つ。ラウルはボロボロになった。


「これで使い方がわかったろー! せいぜい頑張れ落ちこぼれー!」


 男子生徒達は笑いながらその場を離れる。


「畜生……畜生……」


 ラウルは涙を流しながら蹲っている、ラウルは魔法を使う際、身体で何かが閊えるような感覚を感じているのだが、それが何なのかはラウルにもわからない。


「……」


 その様子を一人の青い長髪の女子生徒が見ていた。


「リリー……」


 その少女はリリー・エルキュレーデ、ラウルの幼馴染である。しかし、リリーはラウルと目が合うと逃げ出してしまった。


「……」


 ラウルは俯いたまま歩き出す。実は先ほどラウルを虐めていた男子生徒の中の一人、緑の髪の男子生徒アンディ・リーロンドも彼の幼馴染なのだ。子供の頃はリリー、アンディとは三人で一緒に遊び、一緒に魔法を学ぶほど仲が良かったのだが、魔法学校に入り、魔法の腕に差がついた頃からアンディはいじめる側に混ざり、リリーからは冷たく避けられるようになってしまった。


『ラウル、遊ぼうぜー。』


『大丈夫? ラウル。』


『やったよ、二人共、魔法使えたー。』


『マジか、すげーなリリー。』


 ラウルは2人と遊んでた幼少期を思い出しながらロックヴェルト家に帰宅する。


「何だその姿は」


 黒い長髪の青年がラウルに向かって話す、ロックヴェルト家の長男でラウルの兄、アラスター・ロックヴェルトだ。


「また虐められたのか? 本当情けねー奴だな。」


 アラスターはラウルを嘲笑う。


「全くだ、お前といいアウストといい……我が家の面汚しめ、アラスター、息子と呼べるのはお前だけだ。」


 アラスターの後ろから話しかけてきた壮年の男性はラウルの父親でロックヴェルト家の当主、アーノルド・ロックヴェルトである、アウストはラウルの兄でアラスターの弟、ロックヴェルト家の次男だ。普段は部屋にこもりっきりで姿を見せない。


「任せてください父上、俺がいればロックヴェルト家は安泰ですよ。」


 談笑しながら離れるアラスターとアーノルド、メイド達もラウルから離れていく。


「……」


 その後ラウルはとある墓地へと向かった。


「セバスチャン……」


 その墓地に埋葬されているのはセバスチャン、ラウルの執事をしていた老年の男性である、若い頃は凄腕の剣士だったらしく、ラウルの剣の師でもあったのだが、2年前に病死してしまったのだ。


「今日も駄目だったよ、相変わらず魔法は使えないままだ……医者に聞いてもなにも出来ないの一点張りで、何も教えてくれない……本当どうなってんだろうな。」


 ラウルは墓に花束を添える。


「アンディには裏切られ、リリーには避けられ独りぼっち、どうすりゃいいんだろうな。」


 ラウルは眼に涙を浮かべながら墓石に話しかける。

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