表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】爆装特警クィンビー  作者: eXciter
本編
8/23

FILE3.[メルはマイティ・マザー!]③



 「わあ……」


 成人男性ならこの光景を見てさぞ引いたであろうが、園児たちはすっかり憧れの視線でメルを見ていた。

よいしょ、と小さく言ってメルはバスを下ろした。マーケット帰りの買い物袋並みの軽さだ。

メルは園児たちに駆け寄り、彼らの頭を撫でてやった。


 『ママーー!』

 「みんな、よく頑張ったわね。もう大丈夫よ!」


 歓声を上げる園児たちに、メルはご褒美のキャンディを配っていた。

園児たちは完全に彼女をママと認識している。本当の家族との関係が少々不安になるが、まあいいだろう。

こうやって見ると、子供たちを笑顔にさせるメルは、やはりママなのであった。


 その光景を横眼に、ルナは周辺のビルを見回した。

その中の一つに、見覚えのある社名のプレートがかかっていた。


 『砂生理科学工業株式会社』。略して砂生理工。

傭兵部隊の本部にあった盗聴器入りビスの、製造販売元だ。


 そして先ほどバスをスキャンした時、外装が未知の合金でできていることが判明した。

材質は超硬チタンとセラミック、炭素分子を結合・圧縮した、極めて強度が高い合金だ。

同時に、バルクも人工島に着地していた。運転していたダイアンが降りてきた。


 「ボス、バスの着地成功です。動力を破壊されたので、至急運搬をお願いします」

 「わかった。ステッパーと交代で乗せよう、幼稚園の子達も」

 「それともう一つ―――お願いしたことは?」

 「そっちも大丈夫」


 ルナとダイアンは運転手の顔を見た。目が合った途端、彼は不安げに二人を見た。

ルナは運転手に歩み寄り、園児たちに気付かれぬよう、小声で告げた。


 「大丈夫です」

 「…本当ですか?」

 「奥さんとお子さんは助かります」


 その言葉を聞いた運転手が、叫び出しそうになった口元を押さえた。

ルナはQスマートの画面を運転手に見せた。どこかの住宅付近で、シティポリスが何者かを叩きのめし、逮捕していた。

SMSの番号は『2』。かつてメルとジェイソンが所属していた、第二分隊だった。

そしてルナ達は知らなかったが、目の前の運転手こそ、『キング・スコルピオ』首魁が住所を確かめた運転手であった。

そして園児を通じてルナに渡された紙には、彼の住所と家族が人質になっていることが書かれていた。


 「あなたがあの子にメモを渡してくれたおかげです」

 「あっ…ありがとうございます…!」

 「事情はあとで伺います。すみませんが、署で待っていてください」


 運転手が礼を言ったところで、レッシィがコマンドバルクのアームを操作し、

セイルステッパーを海上に下ろすと、入れ替えでバスを格納した。

園児たちも格納庫に乗り込み、すげーかっけーと歓声を上げていた。

格納庫には二十人分ほどが座れる座席があり、レッシィがアナウンスして子供達を着席させていた。

レッシィは、念のためにとメディックスキャナで子供達を検査している。


 「じゃあルナ、メル、頼むぞ」

 『了解!』


 ダイアンが運転席に乗り込み、バルクが発進した。

それを見送ると、メルは指紋と声紋の認識でセイルステッパーのキャノピーを開けて乗り込んだ。

前後に細長く、船体の左右に大型のエンジンが据え付けられている。

船体後部にはストライクハートが固定され、その真横の可動アームには大型の機関銃が取り付けられていた。


 「このコックピット、ケッタですね?」


 セイルステッパーのコックピットは、かつてのレバーやパネルから変更されていた。

メル愛用のケッタと似た、丁字型ハンドルおよび一体型のアクセルとブレーキ。

彼女が最も運転しやすいインターフェイスであった。


 「レッシィちゃんに改造してもらったの。これなら運転できるって思って」

 「なるほど」

 「ただその、武器は全部ルナちゃんまかせになっちゃうけど…」


 それこそ、セイルステッパーの武装は後部に取り付けられた機関銃だけのようだ。

それもストライクハートに乗ったルナが撃つことになる。

ルナは笑ってそれを承知した。


 「任せてください。ママは操縦に専念して、奴をしっかり追って」

 「じゃあお願いね」


 キャノピーが閉じたところで、ルナは再度ヘルメットをかぶり、固定されたストライクハートのシートに座る。

機関銃にはソケットがあった。そこに愛用の銃を差し込むと、サイズが一致した。

機関銃のトリガー、あるいは安全装置解除用のキーになっているようだ。

 ルナがハーネスで体をバイクに固定したところで、ボートは海上を滑り出した。

そしてジェイソンが落下したとみられる場所まで来たが、その周囲にはいかなるマシンも無かった。


 「…何もありませんね」

 『レッシィちゃんの言ってた球形スクリーンね。レーダーにも映ってない』

 「スキャナでも無理です。どうします?」

 『気配を探るわ。武術で習う、暗所での戦い方の一つよ』


 コックピット内でメルは目を閉じ、ジェイソンの気配―――その中でも特に殺意を探り出した。

なるほどと納得しかけ、通じるのか?と首をかしげ、しかしルナはメルの事を信じて機関銃を構えた。

いかにプロフェッショナルが殺気を押さえる物とはいえ、命を奪う時だけは必ずにじみ出る、と父から教わっていた。

そして達人中の達人であれば、押し隠している殺意すらも掴める。恐らくメルにはそれができる。

待っていた言葉は、すぐに告げられた。


 『三時の方向!』

 「了解!!」


 ルナは真横を向き、機関銃のトリガーを引いた。硬い金属音と発砲音。

排出された薬莢は、セイルステッパーのダクトに全て吸い込まれる。海を汚さないための処置だ。

そして、空間に突然ひびが入り、割れた。破片が海面に飛び散る。

途端に日々の周辺の光景がブレ出した。まさに、レッシィが言っていた、『リアルサイトシミュレイトスクリーン』だ。

ジャックの際に乗り込む姿が視認されなかったのも、真上からコックピットに飛び込んだジェイソンが姿を消したのも、まさにこれだった。

周囲に溶け込む映像は消失し、灰色の大きな球体―――異形の球形マシンがそこにあった。


 「ビンゴ! さすが、アタシ達のママ!」


 船体が高速で向きを変え、球形マシンと向かった。正面のキャノピーから、ジェイソンの姿が見えた。

直径十数メートルはあろうかという球体の前面にコックピット、その横に機銃とミサイルランチャー。

機体底部にはフロートとジェットエンジンおよびAGMT、魚雷発射管。

そしてコックピットから見て右側面に、巨大な狙撃銃が取り付けられていた。


 『船の操縦程度はできるようになったか。フォンテーヌ!』

 『ええ。仲間のおかげで』


 悪意をむき出しにするジェイソンに対し、メルの声は冷たかった。


 『フン、貴様の実力なぞたかが知れている。役に立たぬ技能ばかり身に着けたアホが』

 「その役に立たないスキルでボコクソにされたのがアンタよね」


 思わずルナは挑発に出た。が、ジェイソンは余裕の態度を崩さない。


 『それで俺を捕らえることは叶わなかったな。当然だ、俺は戦場で命のやり取りをしてきた』

 「だから?」

 『貴様等など相手にならんということさ! この《ニードルフィッシュ》で始末してやる』


 球形マシンことニードルフィッシュの機銃が、セイルステッパーに狙いを定めた。

だが、コックピットの真横に先に弾丸を当てたのは、セイルステッパーの機関銃を担当するルナの方であった。

コックピットの中でジェイソンの顔が怒りにゆがむ。


 「ステゴロじゃ敵わないからってデカブツに逃げたわけだ。だっさ!」

 『ガキが…!』


 嘲笑の直後、ルナは機関銃を乱射した。ニードルフィッシュは真横にスライドして弾丸を回避し、魚雷を五本発射。

セイルステッパーが向きを変えると、ルナは機関銃で一発ずつ爆破していった。

水柱に身を隠し、ニードルフィッシュは加速して距離を取る。追うセイルステッパー。

向かう先は内陸―――ジェイソンは都市に逃げ込む気だ。


 『追うわよルナちゃん、振り落とされないでね!』

 「ええ!」


 メルが右側ハンドルのアクセルのレバーを握ると、凄まじい加速でセイルステッパーが前進する。

追走するクルーザーを振り切るべく、ニードルフィッシュは後退しながらマイクロミサイルを乱射した。

蛇行運転で回避すると、ミサイルは海面を直撃し、何本もの水柱を上げた。

ニードルフィッシュが上げる水しぶきを浴びながら、ルナは恐るべき集中力で機関銃を連射し続ける。

SCCMエンジンによる減速の無い蛇行運転でミサイルを避け、機関銃の弾丸が空中でミサイルを落とす。


 その直後、ルナは異様な殺意を感じた。何かが自身の頭部を狙っている。

フェイスシールドに赤い光点が映ったことで、すぐに気づいた。

水しぶきの向こうから、狙撃銃に狙われている。

 見た目こそ全く異なるが、海上の敵に必殺の一撃を叩き込む点は、まさにニードルフィッシュ(ダツ)そのものである。


 「二時方向スナイプ!!」


 ルナの警告を聞き、メルはすぐにハンドルを操作し、セイルステッパーをイルカのごとく大きくジャンプさせた。

必殺の筈の弾丸は、虚しく海上を素通りする。着水すると、水しぶきを上げてすぐに追跡を開始した。

この回避でジェイソンとの距離は大きく空いた。

だが必殺の一射を回避したことで、ジェイソンには焦りが生まれているだろう。


 『やっぱり狙ってきたわね』

 「ええ。でも何か、殺意丸出しっていう感じでした。アタシでもすぐ気づくくらいに」

 『…第二にいた時ね、私、あの人には憎まれていたみたいなの』


 メルの意外な言葉に、ルナは驚きつつ、しかし集中を解かずに機関銃を乱射した。

ニードルフィッシュが動き続けるためにまともに当たらない。

しかも水しぶきを常に後方に上げているため、視界は極めて悪い。

加速しても追いつけず、彼我の距離は広がるばかりだ。


 『目が合うたび、あの人は私を憎悪の目で見ていた。理由は判らないけど。

  今の一発からはその視線と一緒の気配を感じたわ』

 「…つまり」


 十数本のマイクロミサイルが再び飛んできた。

ルナは慌てずに機関銃を乱射し、全てを空中で爆破した。


 「マーケット帰りの時はたまたま撃たれたんじゃない。

  ママを殺そうとした、ってことですね」

 『ええ』

 「あンの親父…許せねえ」


 怒りのあまり暴力的になってしまう口調を、ルナは隠そうとはしなかった。

一方的な憎悪や逆恨みで仲間を狙われたことへの怒り。

通信をオンにしているためダイアン達にも聞こえているはずだが、

咎められないということは、やはり全員が同じ気持ちなのだろう。

そして、その怒りでルナの頭の中は却って冷静になった。視界と思考はむしろクリアになる。

ルナの目と銃口は、水しぶきの向こうにわずかに見えたニードルフィッシュのフロートを正確に狙っていた。


 「撃ちます!」


 その一発は、正確にフロートを撃ち抜いた。

沈没こそ免れたものの、ニードルフィッシュはAGMTでの姿勢制御を余儀なくされる。

機体のバッテリー消費が大幅に増え、ジェイソン側はより短時間でケリを付けざるを得なくなった。

セイルステッパーは停止したニードルフィッシュに追いつく。

視界に捉え、ルナは機関銃で本体を狙った。


 その瞬間、ヘルメットとキャノピー越しに、ルナとジェイソンの視線が交わった。

同時にルナはジェイソンの表情を見た。予想通りの表情であった。

ヘルメットのカメラをセイルステッパーのモニターと同期し、フェイスシールドの映像をメルにも見せた。

息を呑む小さな声が聞こえた。


 「…ママ。アタシの予想通りです」

 『………そんな』

 「あれがあいつの本性ってことですよ」


 ルナとメルは、かつて第二分隊が担当したカルト宗教人質事件の映像を事前に見ていた。

ジェイソンの動きを少しでも憶えておくためだ。

その映像の中で、教祖の顔を見た。今のジェイソンはそれによく似た表情をしている。

その表情は―――


 ルナが思い浮かべた瞬間、船体が大きく傾き、水面すれすれまで倒れ掛かった。

弾丸はルナがいた空間を空しく通り過ぎた。

彼我の距離は約三十メートル。この距離であれば、届く。

ルナはストライクハートのスロットルを回した。

ルナは機関銃の狙いをニードルフィッシュのコックピットに定め、空いた左手だけで撃つ。

狙いは不正確だが、キャノピーに直撃した弾丸にジェイソンが怯み、動きが止まる。

その隙に銃を機関銃のソケットから引き抜き、腰のホルスターに収めた。


 「行きます!」

 『お願い!』


 ルナの考えを見抜き、メルはコックピットのボタンを押して、アームによる固定を解除した。

ストライクハートを固定していたアームが展開し、機関銃を取り付けた可動アームが倒れこむ。

直後、ストライクハートは飛び出した。

海を跳び越え、ニードルフィッシュのコックピットに正面から激突する。

そしてシートからキャノピーに跳び移ると、驚愕するジェイソンを眼下に見下ろし、拳を振り上げる。


 「ふんンっ!!」


 SMSの筋力補助を利用し、キャノピーを拳でぶちやぶった。

機関銃の弾丸を容易く弾いたキャノピーが一撃で砕け、クリア成型カーボングラスの破片が飛び散った。


 「うわぁああっ!」

 「出て来いこらァアアア!!」


 顔面をぶん殴ったついでに襟首を掴んで引きずり出すと、右腕の重力アンカーを射出し、ワイヤーで縛り上げた。

直後、銃でコックピット…そのシートの裏側にある動力機関を撃ち抜く。

爆破の恐怖に、ジェイソンがヒィと情けない声を上げた。

すぐさまストライクハートに飛び乗り、スロットルを廻して埠頭まで跳び移る。

そして埠頭に乗り上げたのとほぼ同時に、ニードルフィッシュは轟音を上げて爆発した。


 「嘘だろ…」


 ジェイソンはコンクリートに転がりながら、呆然とその光景を見た。

熱風が顔を叩き、破片が埠頭に散らばる。戦闘能力を失い、ジェイソンは抵抗を既に諦めたようだった。

ルナはバイクから降り、縛り上げたジェイソンを無理やり立たせ、近場にあったコンテナに叩きつけた。

金属の箱に男の背中がめり込む。さらにルナは、ジェイソンのみぞおちに銃口をめり込ませた。


 「ぐふっ!」

 「牢屋に言ったら今度の事を洗いざらいゲロってもらうわ。

  特にスコルピオのことをね」


 答える気が無ければ、ここでハラワタぶちまけさせてやるという強迫だ。

ルナのことは事前に資料を見せられており、この街でも最悪の存在として知っていた。

だがジェイソンは、その脅迫に笑って答えた。


 「ハハ…それを知ってどうする。あの巨大組織に立ち向かうのかよ、バカ女どもめ」


 ルナの表情は動かない。脅迫が効く相手ではないと、ジェイソンの方も知っていた。

傭兵としての生活は、そんな相手に対する話術も磨いていた。

少なくともジェイソンはそう思っていた。


 「そうね。で? アタシたちがスコルピオを粉々にするのは確定事項だけど」

 「夢でも見てろよ。それよりお前、どうだ」

 「何」

 「俺と組まないか」


 それ故、彼は懐柔する方向に切り替えた。

メルが到着し、埠頭に上がったのはちょうどそのタイミングだった。

不安げな彼女の視線を背に受けつつ、ルナはジェイソンの話を聞くことにした。


 「お前は暴力に生きる奴だ。犯罪者を叩きのめすことに喜ぶ、暴力の権化だ。

  人を撃つことに喜びすら感じる俺と、お前は同じなんだよ」

 「………」

 「その素質は腑抜けのシティポリスなどに収まる物じゃあない。

  力を活かせる上、収入も桁外れだ。お前自身、鬱憤が溜まってるんじゃないのか。

  ポリスなどにいては好きに暴れられないと。何なら俺が取り次いでやるぞ。

  なあ、マッドポリス・ルナよ」

 「ルナちゃん…」


 メルが見守る中、ルナはワイヤーをほどいた。

一見すれば、ジェイソンの勧めを受け入れた物と見えただろう。だが、メルは一切止めなかった。

解放されたジェイソンは手首をさすり、ルナの肩に手を置こうとした。


 「助かるよ。じゃぁ―――ぼぐぅぇえっ!!」


 その余裕が醜い悲鳴に変わったのは、ルナの前蹴りをみぞおちに食らった瞬間であった。

ジェイソンの体は金属の外壁を砕き、カラのコンテナの中に転がり込んだ。

倒れ込んだ彼の左手を、ルナのブーツが踏みつけた。

ゴキリ、ぐしゃりと骨が砕ける音が聞こえた。


 「ぎひぃぃっ!?」

 「たまにアンタみたいな勘違いする奴がいてさ。そーいう勧誘も百や二百じゃないのよ。

  毎度こうやって断ってるんだけど。そのくらい考えつかなかった?」

 「な、なに…!?」


 ジェイソンはルナの本質を見誤っていたのだ。

先刻のバスで見ていた筈が、澱み濁りきった彼の頭では受け付けなかったのだろう。

子供達や運転手に対し、彼女はその身をもって守ろうとし、明るい笑顔を見せていた。

凶暴でこそあるが、しかし悪を許さぬ正義の味方なのである。

その牙を剥くのはあくまで犯罪者相手の時だけだ。

そして一方、ルナの方はジェイソンの根本を見抜いていた。


 「あと、アンタなんぞと一緒にしないで。何が俺と同じよ、イキってんじゃないわよ」

 「何だと…!?」

 「アンタは人を撃たずにいられない殺人狂。そして―――


  家族を殺した犯罪組織にケツの穴を差し出す、ただのマゾ犬よ」


 ジェイソンと視線が交差した瞬間、ルナは彼の表情をつぶさに観察していた。

傭兵部隊本部の守衛が語った通り、彼はだらしない顔で笑っていた。

殺戮の快楽とは似て非なる―――快楽を授けてくれる者への感謝を湛えた、狂信者の笑顔だった。

それは事前に見ていた映像の、カルト教団の教祖とよく似ていた。

そして、かのカルト教団は『キング・スコルピオ』の傘下にあったと、当時の資料も確認済みであった。


 メルは彼の笑顔に驚愕したが、しかしすぐに受け入れた。

大切な家族を奪われて心が折れたにも関わらず、何故今なお傭兵部隊で狙撃ばかり請け負うのか。

心の傷を自ら広げる、一見して矛盾に満ちた行為だ。

その答えは一つしかない。九.五係のメンバーに、ダイアンが引き入れなかった理由。

彼の、『影』だ。


 「アンタは心が折れたんじゃない。家族の死でタガが外れた(・・・・・・)のよ」

 「……」

 「『撃たせてくれてありがとう、スコルピオ様』…こんなところかしら」


 ジェイソンは震えた。何も言い返さない、その反応は肯定を意味している。


 「………ヒヒ」


 と、震えていたジェイソンが笑い出した。今までの余裕をかなぐり捨てた、悪党そのものの笑い方だ。


 「ひひ、ひひゃああはははは! そうだよ! 俺ぁ人を撃ちたくて、撃ち殺したくてたまらなかった!!」

 「……先輩」

 「なのにあいつらとポリスのおかげで、自由に人を撃ち殺せなかった!

  あの女とガキが消え、ポリスをやめた時、俺は本当の自由を手に入れたんだ!!」


 高笑いを上げるジェイソンの姿に、メルは少なからず驚愕した。

シティポリスにいた頃からは考えられない姿であった。


 「ずっとずっと耐えていた、耐え続けたんだよォ…傭兵になって、任務でしか撃てない間もなァ~…

  だが『キング・スコルピオ』は俺を拾ってくれたんだァ!! 俺の銃もな! ひはは!!

  あいつらはいつでも人を撃たせてくれる! 殺せば報酬もくれる! スコルピオ様々さぁ!!」


 彼のどす黒い心にとって、任務や依頼による狙撃は、たまのガス抜きでしかなかった…

傭兵部隊本部の守衛が言っていた、『だらしない笑い』の正体であった。

ルナは彼の根本的な性情を、一目で見抜いたのである。

そしてそんな彼の元にメルが歩み寄り、かがみこんだ。

ジェイソンの顔が憎悪にゆがむ。


 「そしてな、俺はお前が憎かったんだよ。フォンテーヌ…!

  ずっとお前を殺してやろうと思っていたんだ…」


 視線が合うと、ジェイソンは今度はメルへの憎悪を吐き出し始めた。


 「いつもいつも、お前は射撃とマシンの操縦以外で、俺を全て上回っていたよなァ!?」

 「…ええ」

 「どれだけ俺が射撃の腕を上げても、逮捕術もコミュニケーション能力も筆記試験も、

  そのほか何もかもで、俺の成績を全部、全ッ部超えてきやがった!

  俺の射撃の腕がかすむ程にな! 超人体質の奴はいいよなぁ、何やってもうまく行くんだからな!!

  ガキと女も、お前にはコロッと手なずけられたよな!!」


 彼がメルに対して抱いた殺意の正体。それはメルへのコンプレックスだった。

あふれ出る殺意。それをほんのひと時の狙撃任務で満たしてくれる、組織へのマゾヒズムじみた恭順。

だが殺意への枷となる家族や立場があり、とどめとばかりにに自身の能力をかすませる、優秀な同僚がいる。

心身を苛む状況に、彼の苛立ちは鬱積していったのであろう。

自身のブレーキであった家族さえ奪われたと思い込んだジェイソンの鬱屈は、常人では計れぬほどであった。

だがメルに、それを受け止める意思はさらさらなかった。


 「フレデリック・ジェイソン」


 メルはあくまで、諭すように彼の名を呼んだ。

憎悪に凝り固まったジェイソンの狂った笑顔は、次の言葉で固まった。


 「―――腕、落ちましたね」


 「…何だと……?」

 「あなたの腕が落ちた、と言ったんです」


 メルはQスマートを操作し、カルト教団鎮圧時の映像を再生した。

立てこもっていた教団の教祖は薬物で興奮し、数人の人質と信者を伴ってビルの外に飛び出した。

そして自動車に乗り、時速七百キロ近くでハイウェイを走り始めた。

蛇行運転で何台もの自動車を跳ね飛ばし、窓から顔を出して騒ぐ教祖と信者たち。

だがその教祖が、突然のけ反り動きを停めた。すれ違ったポリス用車両からの、ジェイソンの狙撃だった。


 「この時教祖を撃ったのはあなたでした。憶えていますね」

 「……」

 「あなたにはこれだけの腕があったんです。けど、私とルナちゃんには一発も当たらなかった。

  海の上だけじゃない、街中でもそうでした」


 ジェイソンは、自らの右手を見下ろした。声を震わせ、答えようとするが。


 「それは…お前達が、動いて…」

 「この時の教祖たちと同じく、蛇行しました」

 「………」

 「あなたの弾丸はかすりもしなかったんです、ただの一発さえ」


 この一言で初めて、ジェイソンは目を見開いた。みるみるうちにその顔が青ざめていく。


 「ずっと傭兵とスコルピオでお仕事していたんですね。おもに要人暗殺を」

 「……それは」

 「命のやり取りでしたか。でも一方的に撃つだけだったんでしょうね。

  それも射殺の楽しみのために、止まった的しか撃たなかった。違いますか?」


 ジェイソンが震え出した。それは先ほどの、本性を暴いた時のそれとは明らかに違っていた。


 「守る物もなければ、撃つために腕を磨くことも無く、ただただ衰えただけです。

  それに対して私達は、常に誰かを守るため、心身を鍛え続けました。

  他のポリスだって同じです。人の命と心を守るため、日々を全力で闘っています」


 第八だけは例外だが、ルナはそこに言及するのを避けた。

ジェイソンは頭を抱え込み、うめき声を上げ始めている。

容易く見抜かれたことの恐怖、快楽にかまけて研鑽を怠ったことの後悔。

それら綯い交ぜになった、絶望にも似た感情から出る声だ。


 「あなた程度が太刀打ちできるわけが無いんです。先輩」


 そして、メルは冷たい一言を最後に放ち、立ち上がった。

最早彼に対する同情は微塵も無かった。


 「せめてこれ以上奥様とお子さんの名誉を穢さぬよう、素直に刑を受けてください」

 「――― ……嘘だ…」


 ジェイソンの右手が、震えながらホルスターに伸び、拳銃を取り出した。

まだ持っていたのかとルナが取り上げようとすると、メルがそれを手で制した。

大丈夫だと、彼女は言外に言っていた。


 「嘘だ…俺は第二分隊、いやシティポリスで、射撃の腕はトップだったんだ」


 銃口がメルに向けられる。絶望しながらも、その瞬間だけは手の震えが収まっていた。

メルが動くより先に、彼の指が引き金を引く…素人の目にはそう映るだろう。

だが、ここにいるのは超人体質にして、体術を鍛え抜いた達人である。


 「そうですね。…いえ。そうでした(・・・)ね。記録上は」

 「ふざけるな、お前などが…お前なんか、おま…」


 ジェイソンの指が引き金にかかり、引いた。

だが弾丸が銃口から吐き出される前に、拳銃それ自体が粉々に砕けた。

メルが超高速で銃を掴み、握力だけで握りつぶしたのだと、ルナは気づいた。


 「ぎゃあっ!!」


 男の醜い悲鳴が上がる。彼の手は無傷であったが、衝撃で痺れたようだった。


 「ね。私の手の方が速いでしょう」


 銃で生きてきた男にとって、それはあまりにも残酷な宣告だった。

超人体質のアドバンテージがあるとはいえ、指先が引き金を引くだけの動作を、握りつぶす動きが速度で上回ったのだ。

それも憎悪し続け、殺そうとしていた標的に見せつけられた。

狙撃は回避され、早撃ちの速度も意味をなさない相手。しかもその原因が、自身の怠慢にあった。

その現実をついに悟り、彼は頭を抱え込んで、泣き叫んだ。


 「う…ぁああああ! あああああああ! うそだあああああ!!」

 「……」

 「あああ、うそだ、うそだ、うそだあああ! ああああああ!」


 心を粉々に砕かれ、最早彼は抵抗する意思を失っていた。

これ以上叩きのめす必要は無い。業界への復帰など見込めないだろう。

ルナはヘルメットの通信機能で、護送用の車両を呼んだ。

ルナもメルも、既に失意のどん底に落ちた男のことなど、見てはいなかった。




 「鑑識の結果が出た。あのバスの外装と車体の材料は、これと同じだ」


 任務終了の翌日、九.五係のオフィス。朝食後のミーティングの時間。

ダイアンが全員の前に出したのは、ルナとメルが回収した盗聴器入りのネジであった。


 「どちらも砂生理科学工業の製品。ただし、あの人工島とは別の工場の物だ」

 「部門別の工場っていうことね。どうやってバスをすり替えたのかしら」


 首をかしげるメルに、運転手に事情聴取したルナが答えた。


 「幼稚園に行く直前で、いきなりバス会社の社長にあれを使うよう言われたそうです。

  一見してバス会社の車両と同じですが、車体重量から材質の違いが明らかで。

  断ろうとしたら、スコルピオの連中がご家族を人質に…と」

 「じゃあさ、あのバスで何する気だったの?」


 ルナの隣に座ったレッシィが身を乗り出して問うと、今度はダイアンが答えた。


 「社会科見学に乗じて、資材として持ち込むつもりだったそうだ。

  途中でジェイソンが乗り込んだのは護衛、そして我々の目をバス本体から逸らすためだ」

 「しざい? なんの材料?」

 「今、第二分隊が人工島の工場の調査に当たってる。

  …んだが、どうもただの工業用ドローン工場にしか見えないらしい」


 無論、この中の誰もが、それが真実だなどと信じてはいなかった。

第二分隊の方も、確たる証拠が見つからず、忸怩たる思いを抱いていることだろう。


 「調査結果待ちだな。それと、ジェイソンの銃の件も」

 「ですね…それにしても、バスの運転手さんは災難でした」


 現場で彼の無言の救助要請を受けたルナは、思い返してため息を吐いた。

彼自身も家族も、果たしてどれだけ恐ろしかったものか…想像するだに気が滅入る。

だが彼が勇気を振り絞り、園児の手を借りてルナに助けを求めなければ、

バスの正体を掴むことはできなかったのだ。


 「感謝状をあげないといけませんね」

 「うん。彼が勇気ある人で良かった…子供達も優しかったな」


 保護された後に彼が真っ先に口にしたのは、危険な目に遭わせてしまった園児たちへの謝罪だった。

もちろん園児たちはそのことに怒りも恨みも無く、運転手をねぎらったのである。


 ルナは昨日の事を思い出していた。

 ジェイソンは、ルナを暴力的なだけの悪党と見誤った。

それは彼女の凶暴さゆえであるが、しかしその正義感は、市民たちが確かに知っている。

昨日の園児の一人の宣言は、まさにそれを体現していた。


 『おれ、シティポリスになる!』


 彼らを迎えに来た家族がギョッとする中、ぼくも、わたしも、それがしもと他の園児が続いた。

園児たち曰く、ルナやメルのように強く優しいシティポリスになるのだという。

子供達の決意を聞いた保護者達は、ある者は感心し、ある者は困惑、あるいは露骨に嫌な顔をしていた。

我が子が危険な仕事に就くと聞いて、親としては受け入れられぬこともまたやむを得ないところだ。

しかし園児たちは、一部の親たちのそんな嫌悪感を物ともしなかった。

どうすればなれるのかという園児たちの質問攻めに、メルは優しく教え諭した。


 『自分ができることを、精一杯頑張ること。そして、たくさんの人を好きになることよ』

 『そしたら、おれたちもママたちみたいになれる?』


 園児たちの質問返しに、メルは答える前に僅かに間を置いた。

最前線で闘うポリスの一人として、決して子供たちをぬか喜びさせる答えは出せない…

それ故に確約はしきれないという意思表示であったが、子供たちに通じたかどうか。


 『ええ。きっとなれるわ』


 その言葉に、園児たちは力強くうなずいた。

決してメルそのままでなくとも、その心をなくさなければ、彼らは強く優しいポリスになれる。

メルも、そしてルナ達もそう思っていた。

 

 「―――さて。じゃあ行ってくる」


 と、ダイアンの言葉でルナは我に帰った。ダイアンはいつの間にか支度を整え、署に向かおうとしていた。

メルがそのそばに立ち、見送る。


 先日ダイアンに聞いたところ、彼女はメルの超人体質をとうに知っていたという。

本人が隠したがっていると言ったら、ハイスクールの頃からそうだとの答えが返ってきた。

今年で三十五歳になる二人の付き合いは、つまり相当長いらしい。


 「いってらっしゃい。気を付けてね、ボス」

 「うん。じゃあママ、後を頼むよ」


 それだけ言うと、二人はオフィスのドアの前で口づけを交わした。

途端、ルナがウヒョア!!と奇怪な声を上げた。何事ぞと驚いたダイアン達とルナの視線が交わる。


 「どうしたルナ。そんな心臓発作が爆発したみたいな顔をして」

 「い、いや…その…え、ええ…き、きっすであらせられますか!? こんな公共の場で!?」


 顔を真っ赤にして慌てふためくルナに対し、ダイアンとメル、そしてレッシィとトラゾーさえもキョトンとしていた。

が、ルナがこの時間にいるのが初めてだったことを、ダイアンはやっと思い出した。


 「そうか。ルナは初めて見たんだったね」

 「私、いつもこんな感じでボスをお見送りしてるのよ。うふふ」


 そんな二人はまだ結婚こそしていないが、傍から見ると明らかに婦婦(ふうふ)である。

こんな光景に免疫の無いルナにとって、余りにも刺激が強い。


 「実質新婚のママとママじゃないですか…」

 「そんなところさ。じゃ、ルナもパトロール忘れずにね」


 そう言って、ダイアンはオフィスから出て行った。

ルナは呆然と見送る。気づくと腰が抜けたようにソファに座り込んでいた。

その肩にライが寄りかかり、隣にレッシィが寄ってきた。


 「…レッシィ、いっつもあれ見てんの? ライも?」

 「うん。ライもなれたと思うよ」

 「さすがセンパイたち…」


 背もたれに倒れ込むルナの額からは、よほどの熱が出たのか、湯気が立ち上っていた。


 「これからパトロール行くって時に、何てェもんを見せてくれるんですかね」

 「うふふ。思い出して爆発しないように気を付けてね」


 からかうように笑い、メルはクレンジング(滅菌)バリアで食器を洗浄し始めた。

昨日の超人的戦闘能力など嘘っぱちと言わんばかり、軽やかな鼻歌が聞こえる。

ルナは両隣にライとレッシィを座らせたまま、ため息をついてつぶやいた。


 「…ママってのは、奥が深いなあ」

 「フニ~」


 苦々しいルナのつぶやきに答えたのは、トラゾーの気の抜けた鳴き声であった。



―――File3.完―――

登場人物紹介


▽メルセデス・水江・フォンテーヌ

 所属:イーストシティポリス機動部隊第二分隊→第九.五係


 九.五係のサブリーダーにしてマネージャー。愛称は「メル」で、皆にはママと呼ばれている。三十五歳。

 マシンの操縦や射撃は不得手だが、超人体質故に常人を遥かに超えた身体能力を誇る。武術も得意。家事スキルは桁外れに高い。

 彼女の母性溢れる人柄は他者を癒し、心に安らぎを満たす。それ故の「ママ」である。


 ・名前は「水曜日」+泉(Fountain)の如くあふれ出る母性から。



用語解説


◇超人体質

 「ナチュラルボーンスーパーヒューマン」。

 超人的な身体能力を先天的に持って生まれる特異体質。突然変異であると言われ、詳しい原因は判っていない。

数十トンの物体を軽々と持ち上げる、百メートルを一秒で走る、厚さ三十センチのコンクリートの壁を素手で破壊する、

目の前で引き金が引かれる前に銃を掴み握りつぶす、沈むことなく水面を走る…など、恐るべき身体能力を誇る。


 その一方、自力でパワーを制御するのは至難の業で、この体質が発覚した際は訓練を受けることが義務になっている。

かつては周囲の無理解から「何でもかんでも壊してしまう奴」と扱われ、孤立してしまうケースもあったが、

二一五〇年代に専門の訓練施設の設営、適切な訓練法やカウンセラー職などが確立している。

本作の劇中年代では、訓練によって常人と大差ない生活を送れるようになっている。

それでもパワーコントロールに集中するあまり、精密な動きを不得手とする者も多い。


◇シティポリス退職時のルール

 在職時に使用していた支給品を返却するのは他の職業と同様であるが、特に銃に関しては厳しく定められている。

本編中にも記載した通り、シティポリスの銃は電子制御式であり、高精度の射撃が可能になる一方、

使用に関するあらゆるログが残るようになっている。

このログ、および高品質な銃が外部に流出して犯罪に用いられるのを防ぐためである。

在籍時のログは暗号化されて、隊長職以上でなければアクセス不可の状態で署のサーバに一年間保管され、

銃本体は事務担当者立ち合いの許でプレス機で粉砕され、摂氏十万度の超高熱炉で溶解する。



ガジェット解説


〇ケッタ

 二十一世紀以前でいう自転車によく似た乗り物。

タイヤに相当する部分は円盤状のAGMT(前話後書き参照)を縦にして備え付けている。

この名前は当時の方言にある自転車の呼び名から決められた製品名である。

これ以外には「チャリンコ」も候補に当たったが、擬音に似た名称であるこちらは採用されなかった。

最高速度は時速三十キロ、有料の専用レーン以外は走行不可(敷地内を除く)、最大荷重重量は二十キログラムまでと、

法律で厳正に決められている。


〇SCCMエンジン

 九.五係の専用マシン『セイルステッパー』の船外取り付け式推進器。レッシィのハンドメイド。

モーターボートの船外機と似た構造だが、スクリューによる回転ではなく、噴射孔から排出した冷却水で推進する。

内部に搭載した秒間二万四千回転するモーターで、冷却水を竜巻状にして押し出す、言わば『ものすごい鉄砲水』を飛ばすのである。

減速の際はメインの噴射孔周辺の小さなダクトからの排水に切り替え、多方向に推力を拡散させることでブレーキとしている。

余りにも推力が強いため、迂闊に動物が近付かないよう、常に水棲動物が嫌う電磁波と音波を出し続けている。

また、モーターとは別に給水を利用した水力発電式の充電池も搭載している。

これによって運転しながらの充電が可能になり、バッテリーが切れた時も最長で五十時間の運転が可能である。


 最大の特徴は、操作ハンドルの動きに連動し、自在な航行が可能な点にある。

減速の無い蛇行、海面からの垂直ジャンプ、九十度真横に倒れてからの復帰など、

本編でもメルの操縦によって、独特かつ繊細な動きを可能とした。


〇リアルサイトシミュレイトスクリーン

 周囲の状況から物理および自然現象・光学的現象および色彩・物質の状態や地形などを演算し、

作成した立体映像を球形スクリーンに映す映像機器。

映像を見る際のアングルによって不自然に映ることは殆ど無く、

周囲に動く物体が少ない環境に置けば、人間の目で周囲と区別するのは困難。

ある家電メーカーの開発で、現在は用途を検討中。

エンタテインメントムービーの上映に使うのが一番ではないかと、企業内では考えられている。


〇クレンジングバリア

 滅菌・消毒専用の微弱な電磁バリアを発生させる、一種の食器洗浄機。

これを通すことで食器の汚れは瞬く間に消滅する。

二十一世紀以前の食洗器のように全自動で洗浄する型もあれば、流し台にバリアを張って手で通す型もある。

洗剤と水道の使用量が大幅に減り、環境にやさしく経済的な主婦の味方。


・ガジェットは「こんなのあったらいいな」という願望と「二十二世紀くらいにはできるよなァ」という希望的観測を元に設定しています。

よろしければ評価、いいね、ブクマ、感想、レビューなどお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ