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9/10

9 だってキミがあまりにスゴすぎるから……。




「おまえ、こんな所に何しに来た」


 僕は立ち上がり、エリアーデを守るようにする。


「待ってくれ、あの時は大変すまないことをした。とある理由で僕は表立って奴らに反対ができず、そのせいであの時はその子を逃がすのに苦労していたとこだったんだ」

「……あ」


 そういえばとエリアーデは思い出しように言う。


「たしかにその人は、他の二人を止めようとしてくれていた節がありました」

「まじ?」


 じゃあ本当に悪い奴ではないのか?

 んー……そういえばコイツ、ワールドリアライズで二重スパイ中って情報も出てた。表立って反抗できない理由はそれか。


「なら、平気か? エリアーデ」

「はい。それに、(マールさんが一緒にいてくれるなら、私はごにょごにょ)」

「なに? 後半よく聞き取れなかったんだが」

「なんでもありません」


 そんなやり取りを微笑ましそうに「ふふ」と眺めていた男は、やがて名乗る。


「ボクは”サルコ”、よろしく。まあキミとはレベルが違いすぎて、若干気恥ずかしいのだけれど、一応、探知士だ」


 そういえば彼のフィールドの範囲は半径百メートルと言っていたか。

 たしかにそれは、あまりに狭すぎるか。

 でもまあ探知士の善し悪しはフィールドの広さだけで決まる訳じゃあないし。得手不得手はひとそれぞれ。それぞれにあった戦い方がある。


「ふふ、もしかするとキミは少し考え違いをしているのかな?」

「ん?」

「ボクのフィールドは常人と比較するとむしろ広い方に分類される」

「なに言ってんだ?」

「本当だよ。しかもかなり(、、、)広い。三桁のフィールドを持つ探知士など、一握りしかいなのだから」

「ウソだろ?」

「本当。神に誓うよ」


 ……まじ?

 横でエリアーデは「ほらぁー私の言ったとおりじゃないですかあ」とジト目をしてくる。


「それでキミのフィールドは、いったい何百なんだ? ボクの予想では……、そうだな、五百は固いと踏んでいるんだが」

「何百っていうか、三十なんだけど」

「おいおい、今さら冗談はよしてくれ。三十なはずがないだろう。三十なら、先日ボクの探知をすり抜けたことの説明がつかない」


 ——と、そこまで言って、サルコはハッとする。


「おい……嘘だろ……? もしかして、単位が違っているのか? まさか、キロなのか? キミが言っているのはキロの話なのか!?」

「まあ、そうだな」


 僕が肯定すると、


「……えぇ……」


 サルコはガタガタと震えた。そしてそのまま腰を抜かし、


「あ、あ、あぁぁ……三十キロ……だと……!? 神……神だ……」


 ジョオオオオ——と、おもむろに小便を漏らした。


「きゃああー!!」

「うわああーーーー!! ぼ、ボクとしたことがああーーーーっ!」


 黒歴史。

 彼は顔を真っ赤にして、責任持って綺麗に掃除する。


「す、すまなかった……。だってキミがあまりにスゴすぎるから……」

「いや、いいんだ。僕も正直半信半疑だったんだけど、サルコの反応で割かし信憑性を感じることが出来たよ」

「それは良かった。それで、出来ればその……今ここであったことは、その、ここだけの……ひ、秘密でお願いしたいんだが!」


 僕らは了承した。

 まあ、もとからそんなことを言いふらすような人間はうちにはいない。


「しかし、よもやここまでずば抜けているとは……。……でもそれならば納得だよ。この地図店は、キミにしか不可能なビジネスだ。誰にも真似しようがない。そして間違いなく、この攻略時代に革新を起こすことだろう」

「その割に、客はまだサルコ一人だけだけどな」

「ふふ。キミほどの人なら、何か打つ手を考えてあるんだろう?」


 僕は笑む。


「まあ、一応ね」


 ”ゲルゲンシタの窪地”の地図を、僕はプリンに渡す。


「うにゃ?」

「特別にこの地図をプリンのゴート王国に進呈する。好きに使ってくれていいぞ?」


 プリンは察してニヤリとした。


「分かった、このあたしに任せなさいな」


※※※


 翌日——。

 ヤーナム全体に激震が走る。冒険者たちが口々に騒ぎ立てた。


「”ゲルゲンシタの窪地”が攻略された!」

「なに!? まだ見つかって二日しか経ってないんだぞ! そんなバカなことが……」

「本当だ! どうも旧大陸の獣人どもが攻略しちまったらしい!」

「ゴート国のか? でもアイツらって先日この街に到着したばかりだったろ? 右も左も分かんねえ状態のはずだ。それでもう攻略ポイントを落とせたっていうのか?」

「何でも……”地図”を見たらしい」

「地図?」

「そこに”ゲルゲンシタの窪地”の全貌が書き記されていて、だからあっという間に攻略出来ちまったんだと」

「そんなものがあるのか……? いったいどこで手に入るんだ?」

「なんでも……町外れにある、”マップ屋”で売ってるらしい」

「マップ屋?」

「本当はマール・アッピヌなんちゃらっていう長い店名らしいが、長いんでみんな略してそう呼んでる」

「……マップ屋、か」

「なんかスゲえ店がでてきたもんだよな……」

「まったくだぜ。俺らの冒険の全てを、その店に握られかねねえぜ」


 ————斯くして。

 翌日より、僕の店には大勢の客が押し掛けてくるようになった。

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