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読むな!  作者: 多田緋月
9/10

窪井特務官編

窪井特務官は病院内を歩いていた

時間は午前8時、1月だけあって少し肌寒い

もうあれから半年になるのか…

窪井は公安警察特務課、七月機関が創設されてからの事を思い出していた

信じられない様な事件が立て続けに起きていたが、手掛かりはまるで無し、唯一手掛かりといえる様なものは一部の容疑者が口にした呪いの本(・・・・)という言葉だけだった

だが、今回は違う

生きたサンプルが手に入ったのだ

これは大きな手掛かりだ

窪井は有能な公安警察官であり現実主義者であったが、七月機関に配属される事で『呪い』というものを認めざるを得なくなっていた

公安警察外事課に拠れば、七月機関が扱う特殊案件『呪い』の報告は諸外国ではまだ無い

無論、諸外国でも同様の事件が起き、国家がそれを隠蔽している可能性はあるが、もしそうで無ければこの呪いの力を解明し、我が国のものと出来れば日本にとって多大な利益となる事は間違い無かった

仮に諸外国でも同様に呪いの力について隠蔽し、密かに研究が為されているならば尚の事、我が国が出遅れる訳にはいかない

事は国家の利益、さらには国防、国家の存亡が掛かっているのだ

窪井はエリートであり愛国者だ

忠君愛国を旨とし、国家の為ならば多少の犠牲は厭わない

そういう教育を受けてきたし、そういう思想を持つからこそ厳しい思想検査にパスし公安警察官に、ひいては特務課、七月機関の特務官に選ばれたのだ


『おはようございます! 特務官殿!』


いかつい顔の男が窪井に挨拶をした


『異常は無いか、碇山くん』

『はっ! 異常はありません!』


窪井はこくりと頷くと


『よろしい では昨日に引き続き事情聴取をするとしよう』


といい、碇山から渡された鍵で扉を開けた

するとそこには…

いない 豊原耕一がいない!

バカな!! ここは出入り口はこの扉ひとつしかなく外から鍵を掛け、内側からは鍵が開かない様になってる!!

何人たりともこの扉を開かなくては逃げ出す事など出来ないハズだ!!


『何処だ! 豊原っ!!』


窪井の叫ぶ声を聞いて碇山が駆け寄ってきた


『如何なさいましたか! 特務官殿!』

『豊原がいない!』


そう言いながら振り返った刹那


『ぐはっ!』

『ぐふっ!』


高速の突きが一閃、ふたりに叩き込まれた


『油断したな こうも上手くいくとは思わなかったぜ!』

『おのれ… 貴様…!』

『夜通し扉の裏に隠れてるのはしんどかったぞ なにせいつあんたが来るかわからなかったからな 配膳係が朝食でも運んで来ようものならそいつをぶちのめすしかないしひやひやモンだったよ まぁ、あんたが来てくれたおかげでおれも気兼ねなく突きをぶち込む事が出来た訳だが』

『豊原…! 貴様、逃げられると思うなよ…!!』

『あんたらには悪いがあの本は渡せない さらなる被害者が出る前におれが処分する じゃあな!』


そう言い捨てると豊原は走り去った


『くっ…』


しかし、奴はあの本は渡せない(・・・・・・・・) さらなる被害者が出る(・・・・・・・・・・)前におれが処分する(・・・・・・・・・) そういった…

まだだ… チャンスはまだある

奴を捕らえ、呪いの本も必ず手に入れる…!!


『うぐっ… 特務官殿、大丈夫ですか…?』

『ああ、私は大丈夫だ しかし、油断したな 凶器になるものを奴に与えない為に監視カメラすら設置しない部屋を選んだ私のミスだ』

『いえ、私めこそ特務官殿に気を取られました 私のミスです!』

『それをいうならこんな稚拙な罠に掛かった私はどうなる…?』


窪井は苦笑した


『まぁ、いい 処罰はいずれ下るだろう いまは奴を追わねば 私は上に連絡する 碇山くんは病院スタッフに豊原が逃亡した事を伝え、即座に後を追え! 逃がすなよ!!』

『はっ!!』


碇山はまだ苦しそうに鳩尾を押さえていたが、やがて立ち上がると豊原を追いかけていった



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