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読むな!  作者: 多田緋月
8/10

白い部屋編

頭の中でいろんな考えがぐるぐるとまわり吐き気がする

なんでこうなったんだ? 呪いの本、読むな! と書かれた呪いの本を読んだ報いがこれなのか?

おれは激しく後悔した

あんな本さえ読まなければ、そもそもあんな本を拾わなければこんな事にはならなかったのに…

しかし、どれだけ悔やんでも後の祭りだ 時間は戻らない

陽子… 母さん… おれのせいで死んでしまった…

妹や母親だけではない おれが呪いの本を読んだ事で飛行機は墜落し、多くの命が失われたのだ

そうだ! あの本!!

あの本はいま何処だ!?

あの日の夜、家で本を放り投げたままならまだ家の中にあるはずだ!

あの本は三章構成だった

第一章が呪い

第二章が狂気

そして、第三章が死 だ

あの本を読めばなにかが分るかもしれない

なにか解決の糸口が… 死んだ者は生き返らなくともなにか現状を好転させる糸口が見つかるかもしれない

無論、その逆も考えられる

そもそも呪いの本だ

おれはあの本を読んだ事で呪いにかけられ全てを失った

狂気の章を読めばおれは気が狂うかもしれない

死の章を読めばおれは死ぬかもしれない

だが、それでもおれは呪いの本を読むべきだと思った

もう失うものはなにもない ならば僅かの可能性に賭けてみよう、と…

そもそもこれは俺が撒いた種だ

あの呪いの本が一体何で、どんな目的を基に書かれたものにせよおれにはそれを見届け、この事件を解決すべき義務がある

ここでふと思った この事件を解決する為におれはあの男に協力すべきだろうか?

少し考えてみたが、答えはNOだった

あの男は公安警察特務課、七月機関の特務官だといった

それが本当なのかどうかわからないが、仮に本当だとしても奴等に協力し、あの本を奴らに渡すのは危険過ぎる

あの本は読む人間に呪いをもたらす本だ

あの男に、七月機関の奴等に本を渡せば調査の為に本を読む人間が必ず出てくるはずだ

あの呪いの本を誰にも読ませるべきでは無い

犠牲者はおれひとりで、いや、おれと妹や母親、そしてあの事故で亡くなった人たちだけで十分だ

おれはそう思い、覚悟を決めた

先ずはこの部屋から脱出しよう

しかし、どうやって?

部屋を眺めてみても出入り口はひとつだけで窓すらもない

ベッドの横には小さなテーブルと小さな椅子が一脚あるだけで、時計すらも無かった

念の為にテーブルの引き出しを開けてみたが、案の定何も入って無い

トイレに行きたいといえば外に出られるか?

食事は運ばれてくるのだろうか?

その時、隙を伺えばあの扉から外へ出られるかもしれない

いずれにせよ出入り口がひとつだけで窓もないも無い以上、あの扉から出るしか道は無いだろう

おれは少し考え、尿意も便意も無かったがとりあえずトイレへ行きたいと言ってみることにした

扉に近付いてドアノブを回してみる

ガチャガチャと音がするだけでやはり扉は開かない

どうやら鍵がかけられており、内側からは扉は開けない仕様の様だ

ドンドンと扉を叩いてみる

すると扉の外側から『なんだ?』という声がした


『あのう、トイレに行きたいんですが…』

『朝まで我慢は出来んのか?』

『すいません、漏れそうで我慢出来ません…』

『仕方ないな…』


がチャリと鍵を開ける音がすると扉が開いた


『トイレはこっちだ ついてくるように』


がっしりした身体つきにいかつい顔をした男はそういうとトイレまで先導した

どうやら病院というのは本当の様だ

キョロキョロとまわりの様子を伺いながら男に着いて行く

男は背を向けながらおれを先導していたが、隙が無い

おれは空手の有段者だが、背後から襲いかかっても逆に取り押さえられるだろう予感がした


『ここだ』

『ありがとうございます』


おれはトイレに入り、様子を伺おうとした

するとそのいかつい顔の男はトイレの中まで入ってくる


『あのう、トイレの中まで着いてくるんですか…?』

『そうだ』


ダメだ、かなり警戒されている

おれは尿意を振り絞って小便をした

ちろちろ音を立てながら小便が便器に当たる


『はは、おしっこしたかったけど緊張であんまり出ないや』


男はいかつい顔をさらにいかつくしていった


『そうか、じゃあもう戻るぞ』


おれは男に先導されながら部屋に戻った

これではどうしょうもないな

方法はひとつしかない 一か八か… 賭けてみるか

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