七月機関編
『呪いの本…』
『そうだ、君も口にしたな 呪いの本、と』
『さあ、次は君が知ってる事を話す番だ 君は何を知っている? 呪いの本とはなんだ?』
おれは少し戸惑ったが全てを話した
ある夜、コンビニの前で奇妙な本を拾った事、その本には「読むな!」とタイトルがあるだけで著者名も出版社の名前も書かれていなかった事、読んでみると関西弁の口語で語りかける様な文章が並んでいた事、おれが呪いの本を読んだ事で不老不死になる呪いをかけられた事、そして全てを失い死にたくても死ねずに永遠に生き地獄を味わう事などなど全てをだ
男は身じろぎもせずにおれの言葉に聞き入り、話が終わると小さく頷きこういった
『なるほど 概要は解った 話の続きは明日また伺うとしよう 今日はもう休むといい』
男は立ち上がり、部屋から出ようと扉の方へ向いた
『待ってくれ! あんたは何者なんだ!? 事故から何日経ってるんだ? おれは何日眠っていた? いまは何時だ? そして、ここは何処だ? おれはいつここから出られるんだ?』
男は振り返ると細い目を更に細めてこういった
『君はあの事故から三日三晩眠り続けていた いまは午後11時だ ここは都内の病院だよ 君がいつ此処から出られるかは君の協力次第だ 君はこの件の重要参考人だからな そして、私は公安警察に新設された特務課、通称【七月機関】の特務官だ』
『公安警察… 七月機関だと…?』
『そうだ 七月機関は通称だがね 公安警察は元々秘密主義の組織だが、その中でも新設された特務課、七月機関は現状、国家を揺るがす大事件を扱う特務課として特に厳重に秘密が守られている そして、君はこの事件の鍵を握る重要参考人という訳だ 故に気の毒だが君はそうそう早くここを出られる事は無いだろう いずれにせよなるべく我々に積極的に協力するのが賢明だな そうすれば君もいち早くここを出て日常生活に戻れるというものだ』
『では、おやすみ 豊原くん』
そういうと男は踵を返し、部屋から出ていった
『なんて事だ…』
おれはそう呟くと呆然とした