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読むな!  作者: 多田緋月
5/10

テイクファイブ編

おれは急いで支度を済ませると圭織と一緒に一階へ降りた

というか、大阪への里帰りの準備といってもおれの荷物は普段着や下着の替えだけだ


『よし、着替えは詰めたし準備万端!』

『じゃあ、耕一いってらっしゃい おばさんも陽子ちゃんも気を付けてね』

『お出かけのキスは?』


おれがそういうと圭織の顔が曇り、露骨に軽蔑の眼差しを向ける


『そんなもんある訳ないでしょ ホント、耕一の頭の中には何が詰まってるのか…』

『兄貴の頭の中にはエロいものしか詰まってないんだよ…』


といって首を振る陽子


『ちょっとした冗談じゃんか!』

『つまんないわよ その冗談 だいたいセクハラだし』

『ほらほら、ふたりともタクシー来たわよ もう行かないと 圭織ちゃんもいつも耕一のお世話ありがとうね』

『いえいえ〜』

『じゃあ、行ってくるわ』


そういっておれたち家族はタクシーに乗り羽田空港を目指した

空港に着くと、さっそくチェックインと保安検査を済ませる

うーん 飛行機は搭乗までの時間が長いのが難点だよなぁ

そんな事を思いつつおれがスマホゲーに勤しんでいると搭乗時間が来たらしい

おれたち家族は搭乗口から飛行機に乗り込み座席に座った


『羽田から関空までどれくらいかかるんだろ?』

『1〜2時間ほどじゃない?』

『うーん 関空に付くまで微妙に暇だなぁ ゲームでもするかな』


おれはスマホを取り出すといつもやってるスマホゲーで時間を潰すことにした


『ちゃんと機内モードにしなよ』

『ハイハイ』


しばらくおれはスマホをポチポチしてたが小便がしたくなったので席を立ってトイレへ向かう

すると客室乗務員が小走りに駆け寄ってきた


『お客様、座席にお座りシートベルトをしてください』

『あ、はい ちょっとトイレすませたらそうします』


客室乗務員は俺の返事を聞くとまた小走りに去っていった

なんだ? なんかトラブルでもあったのか?

すると機内アナウンスが響き渡った


『ご乗客の皆さま、現在機内でトラブルが発生しました お客様は万一の為、シートベルトをご着用ください』


おれは小便を済ませると座席に戻り、陽子と母親と顔を見合わせる


『大丈夫かしら…』

『大丈夫、滅多なことじゃ飛行機なんて落ちないよ 母さんも陽子もシートベルトをして座席でじっとしておこう』

『うん、わかった…』


まわりの乗客も不安でざわついている

中には客室乗務員を呼び止めて事情を説明しろと詰め寄る者までいた

すると突然、機内がガクンと揺れた


『兄貴…』

『耕一…』

『大丈夫だ 落ち着いて こういう時こそパニックに陥っちゃいけない』


『ご乗客の皆さま、機内トラブル発生の為、羽田空港に戻り緊急着陸致します お客様は万一の為、シートベルトをご着用ください』


再度、そうアナウンスされると乗客に一斉に緊張が走った

緊急着陸とはどういうことだ! 機内トラブルとは具体的になんだ! と詰め寄る乗客がいる一方、不安気ながらも静かに座席に座る乗客たちもいた


『もうすぐ羽田空港に緊急着陸致します 緊急着陸時、シートベルトをご着用ならなければ大変危険です お客様はシートベルトをご着用の上、座席にお戻りください』


客室乗務員を詰め寄っていた乗客はなおもなにか言いたそうだったが、緊急着陸となるとシートベルトをしていない方が危険だと理解したのか席に戻った

そして緊急着陸、轟音とともに激しい衝撃がはしる

それは凄まじい衝撃だった

おれは衝撃で気を失っていたのか、気が付けば機内は業炎に包まれていた

即座におれは隣に座る妹と母親に目をやる

ふたりとも死んでいる

緊急着陸、というか地面への激突の衝撃でふたりの身体はあらぬ方へねじ曲がり、身体の一部は破損し血塗れになり、目はカッと見開かれたままだった


『おい、嘘だろ…? 陽子!! 母さん!!!!』


おれは業炎と煙の中、母親の身体を揺すった

母親の身体はぐにゃりとまたあらぬ方へと曲がり、その後、ピクリともしなかった

手には生温かい母親の血がべっとりと着いた

ダメだ… 死んでいる

おれは受け入れ難い事実を受け入れるしか無かった

機内は業炎に包まれ、煙と炎で生存者がいるのかどうかもわからない

ともかく機内から脱出せねばと思い席を立つ

だが煙と炎に包まれた機内でおれは身動きが取れなかった

おれもここまでか… 煙を大量に吸い込んだおれは朦朧とする意識の中、そう思った



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