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二度目の恋は満月の下で  作者: 秋野うみ
3/3

偽月

僕に友達はいない。僕にとってそれは、恥ずかしいことであり、誰にも言いたくないことだ。だから、今まで『友達がいる』というウソをいろんな人にして来た。例えば、親や親戚、顔見知りの八百屋のおじいさん。全員合わせて20人くらい、嘘をついてた気がする。

最初に嘘をついたのは、母さんだった。晩飯を食べてる時、突然

『友達出来た?』

と言って来たから、

『出来たよ』

とすんなり答えた。表情が変わってないことに気づいたのは、そのすぐあとだった。

嘘がバレたと思った。

だが、母さんは嬉しそうな顔をした。

(え...)

唖然した。

嘘を通せた理由が母さんがちょろいかだけか、嘘を付くのが上手かっただけか、この2つのどちらかであるが、僕は自然と後者を選んでいた。

自然に選んでいたから、僕は嘘を通すのが得意だと心の底から思った。



人間、自身を持つと思い通りにいくらしい。

いろんな人に嘘をつけば付くほど嘘のつき方が成長していった。それと並行に嘘を付く事が確信に満ちていった。

20人目ぐらいまでいくともはや役者みたいだった。


そして今日も、水野ゆりという人物に嘘を付いた。

絶対的自信の元に、嘘を付いた。

絶対的なのに...

彼女はさらっと僕の嘘を見破った。

驚いた。

初めてだった。

手足の指の先端まで止まった。

1秒という時間長く感じた。

僕の絶対的自信は何処かへ行ってしまった...


*******************

『まあさ、今までに友達がいなかったら私と友達になってよね!』

彼女は前を向いて、進みながら少し絶望している僕に彼女が言葉をかけた。

陽気な言葉に少しムカっとしたが、そこまで腹が立たなかった。

『君と友達にはなりたくないね

一緒にいるとめんどくさそうだ』

彼女は振り向いて怒った顔をし、僕を睨みつけたがすぐにははっと笑った。

『君は頑固だね

 私と友達となってくれたって良いじゃん』

後ろ歩きする彼女に僕は疑問を持った。

『なんでそこまで僕と友達になりたいの?』

『ん〜?』

彼女は悩んでいた。悩むほどの事があるのかと思ったが口には出さなかった。

『えっとね』

『えっとね?』

リピートするように僕が言葉を発した後、彼女は土手上までを走っていった。気付いたらこの川の最後の方まで来ていたようだ。時差みたいにきた足の痛みが長距離を歩いたことを物語っている。

『私が友達になりたい理由は

 君の最初の友達になりたいからだよ

 じゃあまた明日、バイバイ!』

彼女は向こうの方へ走って行った。

『最初じゃないけどね...』

ぼそっと呟いた言葉は小さな風にかき消された。

新月はまた雲に隠れていく。












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