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第70話 「恋の相談ならまかせてください!」って断言する、お前らの神経が信じられないわっ!(2)


 ロミーのジュリアへの恋についての相談(?)。

 そこには、ついにセシルまで加わって、状況は最悪(?)に。

 セシルは、分かったような顔で、ロミーの顔を見て、うなづいていた。


「なるほど。ジュリアさんの心を、さらに近づけるいい方法ですね。分かりました。簡単ですよ。セシルにとっておきの方法があります」


 自信満々に話し始めるセシル。


「名付けて『大ピンチのお姫様を救出する、かっこいい勇者作戦』です」


 名前を聞いただけで、レニーはセシルが何を言い出すのか分かる気がした。

 それでも黙ったまま、聞き続ける。


「女の子は自分を助けてくれた、強い勇者にあこがれるものです。だから、ジュリアさんが悪党に襲われる。そこをロミーさんが助けるんですよ。これだけで完璧ですね。助けてくれたロミーさんに、ジュリアさんも本気で恋に落ちること間違いなし」


 セシルにしては、まだまともな案だが・・・。

 でも、そんなにうまくいくものか?

 そう思いながら、レニーが聞き返す。


「そんなに都合よく、ジュリアさんが襲われるなんてことがあるはずがないだろうが」


「それは大丈夫です。ちょうどこんな時のために、うってつけの人物がいるんですよ。入っていいわよ」


 セシルの合図とともに、ドアから1人の人物が入ってきた。

 それはファンサーガだった。

 ついこの間、レシチアという町にて、セシルを狙った暗殺者アサシン

 でも、彼はあまりに純粋なセシルを殺すことが出来ずに、そのまま去っていったのだった。

 その彼がこんなところへ・・・。


「セシル様ー!」


 笑顔で、駆け寄ってくるファンサーガ。


「ファンサーガ・・・待っていたよー!」


 セシルもファンサーガの方へと走ってゆく。

 2人が出会おうとしたその瞬間、セシルがファンサーガの首へと飛びついた。


「ひっさーつ・・・飛びつき三角締め!」


「ぐへっ!ちょっと、ちょっと!首が締まる・・ギブアップ、ギブアップ!死んじゃう、死んじゃうぅぅぅぅ・・・」


 完全に決まったセシルの三角締め。

 必死でタップして、ギブアップ宣言するファンサーガ。

 でも、セシルが力を緩める気配はなかった。


「ぐえぇぇぇぇ!落ちちゃう、本気で落ちちゃぅぅぅぅぅ・・・」


 ファンサーガの声がみるみる弱まっていく。

 やがてぐったりと青白い顔で、力を失ったファンサーガ。

 セシルはようやくプロレス技を解くと、涼しい顔で言った。


「ね、完璧な人材でしょ。ファンサーガなら関節技でも、投げ技でも、何でも大丈夫。全部受けて、ちゃんと最高のリアクションで倒されてくれるから」


 どうやらセシルは、ジュリアに襲いかかる悪党の役を、ファンサーガにやらせるつもりらしい。


「完璧ですね。町でジュリアさんがファンサーガに襲われる。『助けてー!』と叫ぶジュリアさん。そこにロミーさんが駆けつけて、ファンサーガをかっこよくやっつける」


「でも・・・。僕がかっこよく、ファンサーガさんをやっつけるなんてことができますかね?」


 ロミーの当然の疑問に、セシルが平気な顔で答える。


「大丈夫ですよ。ファンサーガならどんなことをしても、ちゃんと受け止めてくれますから。まあ、関節技が安心だとは思います。でも、いざとなったら、バックドロップとかブレーンバスターで思いっきり投げ飛ばしちゃうのが簡単ですね。なるべく固い地面に頭を打ちつけるように、投げ飛ばすのがコツですからね」


「いやいや。さすがの僕でも死んじゃいますから。コンクリートで投げ技はやめて、やめて!」


「だったら、ちゃんとロミーに関節技をかけてもらいやすいように、ジュリアさんを襲うことね」


 セシルの無茶苦茶な注文。

 やっぱり相変わらずなファンサーガとセシルの関係だな、とレニーはファンサーガに同情した。


 こうしてセシルの「大ピンチのお姫様を救出する、かっこいい勇者作戦」が採用されることになったのだった。

 決行は2日後。

 さっそくロミーはジュリアへとデートの申し込みに向かった。


 ロミーのいなくなった部屋。

 レニーは小さな声で、ファンサーガに聞いた。


「ところで、どうしてお前が、こんなところにいるんだよ」


「ちょうど西の町バーレンへと任務に向かう途中で、セシル様に出会ってしまったんですよね」


「バーレンか。また誰かを殺しにいくの?」


「人聞き悪いなぁ。違いますよ。今回は情報収集と、情報操作。いわゆるスパイの通常任務ですね。僕だって、そんなにむやみやたらに、暗殺ひとごろししているわけじゃないですからね」


 いつもの笑顔で、物騒なことを話しているファンサーガ。

 またこの宿が、さらににぎやかになりそうだと、レニーは思った。

 

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