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第69話 「恋の相談ならまかせてください!」って断言する、お前らの神経が信じられないわっ!(1)


「・・・48・・・49・・・50。ふぅ、疲れた」


 夜の食堂で、1人で黙々と腕立て伏せするロミー。

 ようやく終わって、一息つく。

 だいぶこの訓練にも慣れてきた。

 こころなしか、筋肉も少しついてきたような気がする。


「はぁ・・・」


 ロミーは1人でため息をついた。


 こうして座っていても、頭に浮かんでくるのはジュリアの顔ばかり。

 今日は、食堂にジュリアはいなかった。

 いるのはレニー、セシル、ラーサ、それにリリーという、いつものにぎやかな面々。


 あれからロミーはジュリアと数回、町へと出かけていた。

 もちろん、その間の盗賊退治は、いつもレニーにお願いしていたのだが・・・。


 ロミーとジュリアのデート。町のカフェに行ったり、お店を一緒にのぞいたり・・・。

 取り立てて、特別、何か大事な話をしたわけではない。

 どちらかといえば、たわいもない話ばかり。


 それでもロミーは、ジュリアと一緒にいる時間が楽しかった。

 一緒にいるだけで、幸せだった。

 一緒にいる時間が長くなれば長くなるほど、もっと一緒にいたいと思った。

 でも・・・。


 気になることがひとつ。

 ジュリアは、いまだに自分のことを、あまり話さなかった。

 だからロミーには、ジュリアが自分のことをどう思っているのか、分からなかった。


 大丈夫、きっとジュリアも、自分のことを嫌いなはずがない。

 だって、こんなに一緒に出かけてくれるんだから・・・。

 そう思いこもうとした。

 でも、心のどこかに疑念が生まれる。

 あんなにかわいい女の子が、本気でおまえの相手なんかしてくれるはずがない。


 ロミーには自信がなかった。

 ジュリアが何を考えているのか、時々、分からなくなった。


「はぁ・・・」


 またしてもため息をつくロミー。

 めざとくそのため息を聞きつけたのは、ラーサだった。


「あら、暗いため息なんてついて、どうしたのかしら?なにか悩み?お姉さんに話してごらん!」


「いえ、別に何でもありませんよ」


 あわてて普通の顔を作って、否定するロミー。


 冗談じゃない。

 ラーサなんかに知られたら、面白おかしくからかわれて、ろくなことになるはずがない。

 ロミーはおびえていた。


 でも、ラーサは鋭かった。

 じっとロミーの目を見て、それから全身をなめ回すように見て、含み笑いする。


「なるほど。ジュリアのことね。あの女はやめておいた方がいいわよ、と言いたいところだけど、まあいいわ。お姉さんに話してごらんなさい」


「やめてくださいよ。なにもないですってば」


「なるほど、ジュリアのことが好きすぎて、頭から離れないと。分かったわ、お姉さんがどうやったら、あの女の心をつかめるか一緒に考えてあげる」


「僕は何も言ってませんから」


 必死に否定するロミー。

 でも、ラーサの方が一枚上手だったようだ。

 ロミーの心の中まで、すっかりお見通しだった。


「そうねぇ。もう3・4回ぐらいはデートしたのよね。それなのにキスすらまったくだなんて、それはいけないわ。もっと積極的になるべきよね」


「・・・・・・」


 何も答えられないロミー。

 でも、ラーサの言葉は気になってしまう。


「うん、まずは格好よね。デートに出かける服装がいけないんだわ。もっと男らしい、ワイルドな服装を心がけるべき。女の子はみんなワイルド、言い換えると『男らしい』のが好きなの。なるべく肌を露出した・・・いえ、いっそのこと、何も着ないくらいの方がいいわね」


「本当ですか?」


「当たり前よ。女の子の常識なんだから。決まり、今度のデートは『男らしさ』がテーマね。まず服装は全裸ね」


 いきなり過激な結論だ。

 当然、ロミーがうろたえる。


「そんな・・・無理ですよ。捕まってしまいますよ」


「大丈夫。ロミーは有名人だから、ちょっとぐらい平気よ。それに最近体を鍛えているみたいだから、今こそ見せつけるチャンスよ」


「・・・・・・」


 断言するラーサに、ロミーは言葉を失って何も言えない。


「はい、決まり。服装は全裸として、次は心構えね。男たるもの、いつでも女の子に襲いかかれるオオカミでいるべし。そうよ、女の子はみんな、オオカミさんが襲ってくれるのを待っているんだからね。まず、いつでもどこでも、スキあらばキスを狙っていくこと。相手がいやがっても、無理にでもキスすることが重要なの。『いやよ、いやよも、好きのうち』って言うでしょう」


「それこそ無理ですよ。絶対嫌われます」


「そんなことないわよ。ううん、キスだけじゃない。もっと激しいところまで挑戦してもいいわね。ええ、男のチャレンジ精神って素敵だもの。道端でも、町中でも・・・ところかまわず激しいスキンシップで攻めるべき」


「絶対に違います!一歩間違えたら、犯罪者になっちゃいますよ」


「それぐらい強引な方が、男は・・・きゃー!」


 言いかけたラーサが、後ろから引っ張られるように、突き飛ばされる。

 二人の間に割り込んできたのは、レニーだった。


 レニーがあきれたように言う。


「黙って聞いていたら、お前はなんてメチャメチャことを、教えこんでいるんだよ。まさかロミーさんも、こんなメチャメチャなお話を信じるとは思えないけれど・・・」


「びっくりしましたけど、さすがに信じれませんよね」


 ロミーが答える。


「そんなことないわ。男は絶対『ワイルド』が一番!」


「全裸でみさかいなく襲いかかる男を『ワイルド』とは言わない。ただの変質者だ」


 まだあきらめ悪くあがこうとするラーサに、レニーがとどめを刺した。


 まったくラーサは・・・。

 どうあってもロミーとジュリアの関係を、ぶち壊したいらしい。

 でも、いったいどうして?


 騒ぎを聞きつけたのか、セシルまでやってきた。


「あー、恋の話ですね。それならセシルにおまかせください」


 いやいや、さらに絶対にまかせちゃいけない人間が加わったと、レニーは思った。


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