第53話 第2章 プロローグ ~大切なものを守れる強さ~
外は騒々しかった。
少女はドアを小さく開けて、そっと外を見た。
たくさんの軍服を着た男たちが、こちらへ向かってくるのが見えた。
あちらこちらの家から、悲鳴や大きな物音がする。
ところどころ、燃えている家さえあった。
男たちは、少女の家の方へも向かってくる。
どうしよう?
迷っている時間はなかった。
少女は外に飛び出すと、男たちとは反対の方へと夢中で走った。
村を抜けて、草原へと。
後ろを振り返る余裕はなかった。
しばらく走った後、ようやく一息ついた。
再び歩き始めようとしたとき、前からゆっくりと一人の男が歩いてくるのに気付いた。
やはり軍服を着ているその男が、無表情に少女を見た。
少女はこわくなって、とっさに横の方へと逃げだそうとした。
そんな少女に男が声をかけた。
「行くあてはあるのか?」
抑揚のない、感情のこもらない声だった。
少女はこわごわと男の顔を見る。
初めて目があった。
やはり、男は表情を見せずに、遠い目をしていた。
「いいえ・・・」
少女がかすかに首を振る。
男はしばらく突っ立って、少女をまるで値踏みでもするかのように眺めていた。
少女は恐怖で、その場で身動きひとつできない。
長い沈黙。
それからようやく男が言った。
「もしも・・・もしもお前が『大切なものを守れる強さ』が欲しいのなら、ついてくるといい」
そのまま男は、少女に背を向けて、また歩き出した。
大切なものを守れる強さ?
少女は、男の言葉を完全に理解したわけではなかった。
それでも少女は男の後を追いかけた。
今の自分が持っているものなど、なにひとつないと思ったから・・・。
第2章 スタート!
まずはプロローグですので、かなり短め…