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第47話 初めての恋はパフェとコーヒーと絶望の味がした…(5)

 いつもと同じ暖かい日差し。

 いつもと同じカフェへと向かう道のり。

 いつもと同じように、セシルはウィンザードと手をつなぎながら、スキップしそうな勢いで歩いていた。


 10月の終わり。

 昨日のことなど話していたウィンザードの話を、セシルはじっと聞いていた。

 ちょうどその時だった。


 2人の男が現れた。

 ウィンザードよりもちょっと年上に見えた。


 急に話をやめて、ウィンザードはじっとその男たちを見ていた。

 2人はウィンザードのほうへとまっすぐにやってくると、ウィンザードを物陰へと連れて行った。


 ボソボソと何か言いあっている。

 低い話し声。

 その声はだんだん大きくなっていった。


「そんなはずないだろう!」


 ウィンザードの大きな声が響いた。


 セシルがそっとのぞくと、男の肩を後ろからつかんでいるウィンザードが見えた。


 男は何か言うと、ウィンザードの手を振り払って、セシルのほうへと歩こうとした。

 その時、ウィンザードは後ろから男に殴りかかった。


「やめろ!」


 ウィンザードに殴られて、男は道に倒れた。

 しばらくして男は起き上がると、口を袖で拭いながらウィンザードに向きあった。


「何しやがるんだ!」

「やめろって言っただろう」


 今度は男のほうから、ウィンザードに殴りかかった。

 ウィンザードも殴り返して、派手なケンカが始まった。

 もう1人の男も、すぐにケンカに加わった。


 2対1。それでもウインザードは、一歩も引かなかった。

 何度も殴られながらも、すぐに殴り返した。


 気がつくと、1人の男が道端にうずくまっていた。

 ウィンザードはその目の前で、荒い息をしている。


 その時、もう1人の男がナイフを抜いたのを、セシルは見た。

 ウィンザードからは死角になっていて、まったく気付いていない。

 男はナイフを持ったまま、ウィンザードに突っ込んでいった。


 あぶない!

 意識したわけではなかった。

 気づいた時には、セシルはとっさに呪文を唱えていた。


光弾シャイレン


 光の魔法。

 白い大きな玉が、ナイフを持った男のほうへと飛んでいった。

 魔法にはじかれて、ナイフを離し、その場に崩れ落ちる男。

 その時には、ウィンザードもナイフを持った男とセシルに気づいていた。


 倒れた男を見て、魔法を見て、それからセシルを見て、ウィンザードは驚いた表情を浮かべた。

 それから、なぜだか悲しげな表情になった。


 苦しそうな、切なそうな、なんともいえないウィンザードの顔に、セシルは戸惑った。

 セシルには、どうしてウィンザードがそんな悲しそうな顔をしているのかわからなかった。


 セシルはウィンザードに何か言おうとしたけれど、何も言えなかった。

 ウィンザードがセシルを拒絶するような目をしていたからだ。


 ウィンザードは何も言わずにセシルに背を向けると、そのまま去って行った。


「ウィンザード!」


 セシルは追いかけようとしたけれど、足が動かなかった。

 たった今、ウィンザードが見せた悲しげな冷たい視線が、セシルの心に突きささっていた。

 それは今までウィンザードが見せたことのない顔だった。


「ウィンザード…」


 セシルはその場で小さくつぶやいた。

 胸がドキドキした。

 ウィンザードが、このまま永遠に去ってしまうような気がした。


 どうして?

 どうしたんだろう?

 何が起こったんだろう?

 どうしてウィンザードはあんな顔をしたんだろう?


 セシルには、いくら考えてもわからなかった。


 このままウィンザードがいなくなってしまったらどうしよう?


 不安でいたたまれなくなりそうなその考えを、セシルはすぐに打ち消した。


 ううん、そんなことはありえない。

 だって、ウィンザードと私は強い運命に結ばれているんだから。

 きっと明日また会える。

 明日会ったら、ちゃんとあやまろう。

 何があったのかもわからないけど、あやまろう。

 だって、ウィンザードに会えなくなるなんて、絶対いやなんだから…。


1章終わりへのカウントダウン!

残り5~6話ぐらい…(たぶん)。


ここまで読んでいただいてありがとうございます。


すこしでもいいなと思っていただけましたら、ブックマーク、高評価などしていただけますと、作者が喜びます。

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