第36話 たとえ世界中のすべてを敵に回したとしても、ラーサだけは俺が守ってみせる…(2)
バロンの魔法が直撃して、吹き飛ばされたレニー。
それでも、レニーは槍を杖代わりにして、なんとか立ち上がった。
状況はよくない。いや、絶望的だった。
すでに何度もバロンの魔法をまともに食らっている。
それなのに、レニーの槍はバロンをかすめることすらしない。
ケイン…。お前はやっぱり強かったんだな。
たしかにケインはもっと速かった。もっと力強かった。
あいつなら、このバロンまでの距離さえ一気に詰めて、簡単に槍を叩き込んでいたんだろう。
ちきしょう…。
俺は何をやっているんだ?
なぜ俺には何もできないんだ。
レニーは再び槍を構えた。
もっと早く、もっと強く…。
直線距離、バロンのもとへとまっすぐに、最大限の力で踏み込んだ。
防御のことなど、すでに考えていなかった。
それでも、槍が届こうとするときには、バロンはもう後ろに飛びのいていた。
「光滅連弾」
バロンの魔法がもろにレニーを襲う。
派手に吹き飛ばされたレニー。
すでに服も、体も…なにもかもがズタボロだった。
なのに、心だけは負けない。
レニーは、再びその場から、のろのろと立ち上がった。
ここで倒れるわけにはいかないのだ。
俺にはまだやらなければいけないことがあるんだ。
目の前のラーサを守らなければ…。だって、約束したから。
ラーサは俺が守るんだって、あいつと約束したから。
すでに目の前すら、景色がかすんで見えた。
ダメージは残っていた。
立っているだけで、足が震えていた。
それでも槍を構えて、目の前のバロンだけに集中した。
一撃でも、たった一撃でもこの槍が届けば、何かが変わるかもしれない。
レニーは次の攻撃に集中した。
少しでもバロンのスキを見つけらえれれば…。
残ったすべての力を使ってでも、たった一撃にかけることができたなら…。
「光滅弾」
バロンの魔法をかいくぐって、レニーは渾身の力で、ダッシュ。間合いを一気に詰めようとした。
でも、もう手足がいうことをきかなかった。体が重かった。
レニーがようやく槍を振ろうとしたとき、そこに待っていたのはバロンの魔法だった。
「地底壁」
地面からの真っ黒い壁に下から突き上げられたレニーは、そのまま宙に大きく飛ばされて、それから音を立てて地面へと落ちてきた。
ぐにゃりと曲がったように見えたレニーの体。
その体は意識を失ったようで、しばらく動かなかった。
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