表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/107

第24話 何も出来なかった俺のことを、英雄だなんて呼ぶんじゃねえっ!(1)

 目の前には、ダーラ帝国の大軍隊がいた。

 1万人にもおよぼうかという、強大な軍隊だ。


 そのすぐそばで、レニーたちアスカルトの軍は、森に身をひそめて隠れていた。

 その数は千人にも満たない。

 差は明らかに思えた。


 でも、アスカルトの兵にひるんだ様子はなかった。

 逆に身をひそめながらも、目は輝いていた。


 ダーラ帝国の軍が、連なって通り過ぎてゆく。

 半分を過ぎたあたりで、レニーは魔法を唱え始めた。  


炎連撃エイラン


 レニーの手から、炎の球が次々と発射され、ダーラの軍を奇襲した。


 それが合図だった。

 すぐ後ろから竜に乗った一人の男が、先頭をきって軍に切り込んでいった。


 竜騎士軍団。

 ケインを筆頭とするアスカルト自慢の精鋭部隊。


 その槍が上空から敵を襲ったかと思うと、すぐに地上に降り立ったケインが、槍を振るって、あたりの敵を一掃していた。

 それに続いて、アスカルトーの軍が一斉に攻撃にかかる。

 不意を突かれたダーラの兵は、陣を崩して、誰もが逃げまとっていた。


 アスカルトの兵に攻撃されて、バタバタと倒れていくダーラ軍。

 アスカルトの兵はかさにかかって、そんなダーラ軍を責め立てる。


 でも、ダーラには次から次へとやってくる、たくさんの兵がいた。

 しばらくして、ダーラは体勢を立て直すと、波状攻撃でアスカルトへの反撃を始めた。


 レニーはダーラの魔法を、自分の魔法で打ち消しながら、戦況を冷静に分析していた。


 最初の奇襲で100人から200人ぐらいの兵は倒した。

 幸い、こちらはまだ数人程度の被害だろう。


 でも、ダーラはもう体制を整えて、本格的に攻撃に入っている。

 レニーもそろそろ相手の魔法を、支えきれなくなっていた。

 そろそろ一度引くべきか…。


 レニーは迷わず、退却の合図を出した。

 アスカルトの兵が戦いながら、引き下がり始める。

 アスカルトの魔法使いたちが、それを援護するために、魔法で炎壁や雷壁を作る。


 レニーが戦場を見ると、ひとり竜騎士が、敵の奥深くまで突っ込んでいるのが見えた。

 まったく…。

 ケインのやつは、いつもこうなんだから。


 アスカルトの兵が無事に戻ってくるのを横目に見ながら、レニーは戦場を前へと駆けてゆく。

 すでにケインは完全にダーラの兵に囲まれて、独りで奮闘していた。


炎壁エイイン


 レニーは魔法で、敵の魔法使いの前に炎の壁を作った。

 けん制だ。

 これでしばらくは、敵の魔法使いの目をくらませることができる。

 ケインが走ってくるレニーに気づいた。


「よう。相変わらずの迫力の炎だな」


 

 のんきなケインにレニーはあきれる。


「あのなあ。一人でこんなところまで突っ込むんじゃない。もう、みんな退却を始めてるぞ」

「え?あ、本当だ。全然気付かなかったよ」

「気付かなかったじゃねえ。お前、そのうち死ぬぞ」

「いいねえ。戦場で死ねるなら、最高だ」


 まったく…。懲りていないんだから。

 ダーラの兵は、完全に二人を包囲し始めている。


 前に剣士と騎士。後ろに魔法使い。

 さて、どうする?

 レニーは戦いながら考える。


「ケイン、場所を変わるぞ。前の剣士たちは、俺が魔法で一気に片付ける。だから、後ろの魔法使いをどうにかして、道を開いてくれ」

「分かった」


 答えるよりも早く、ケインは駆けていった。


炎壁エイイン


 レニーの魔法が、目の前の剣士たちを、あっという間に燃やしつくす。

 それを見て、次から次へとやってくるダーラの兵たちが、少しひるんだ。


 レニーはちらっと後ろを見る。

 ケインも後ろの魔法使いは、おおかた片付けたようだ。

 

 レニーは後ろに駆け寄って、ケインにささやく。


「その場で、やってくる敵をしばらく撃退しておいてくれ」

「分かった。どれくらいの時間だ?」

「20秒」

 

 レニーがさらに後ろに下がる。

 しばらくして、レニーが振り返ると、ダーラの兵たちが次々と、ケインに襲いかかっていた。


 レニーは目の前に集中する。

 目に見える炎の要素を集めて、それが増殖する様子を頭に思い描いていく。


 一人で奮戦していたケインが、気合い一発で敵を押し返して、それから走って戻ってくる。


炎爆エイリオン


 何かが爆発したかのような、地響きが起こった。

 強大な炎が、敵をあっという間に包み込んでいた。

 その炎はしばらく燃え上がり、それがおさまった時、あたりには一面の焼け野原に変わっていた。


「いつ見ても、すごいな…」


 ケインは焼け落ちた目の前の風景を見て、言う。


「いいから早く戻るぞ。また敵に取り囲まれないうちに…」


 レニーはケインの手を取ると、急いで味方のいるところへと戻った。


少しでもいいなとか思っていただけましたら、ブックマーク、高評価、感想などいただけますと、作者が喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ