第103話 私は最高に幸せだったの…。ううん、最高に幸せなの…(3)
「ジュリアさん!ジュリアさんってば。ジュリアさーん!」
ぐったりしたジュリアの体を抱えて、叫び続けるロミー。
そこに、新たな泣き声が聞こえてきた。
「うわーん!どうして?どうしてジュリアさんが?だって、愛の力は絶対なのに!愛の力は、どんな物語だってハッピーエンドにしてくれるはずなのに!」
ロミーに負けず劣らず大きな声で泣いている少女。
それはセシルだった。
ロミーの恋の行方が心配になったセシルは、タナシスから2人のあとを、ずっとつけてきたのだった。
「うわーん!ねえ、どうして?どうして、こんなに悲しい終わり方になるんですか?愛の力で、悲しみなんて吹っ飛ばして、絶対にハッピーエンドになるはずなのに!」
なぜだかロミーにまで、掴みかかろうとする勢いで、叫んでいるセシル。
「セシルさん・・・セシルさんがどうしてここに?」
一方のロミーは少し冷静になって、当たり前の疑問を口にする。
ここにセシルさんがいる。ということは・・・。
タナシスに残っているのは、ゼノさん、ラーサさん。たった2人だけ?
いや、レニーさんも、戻ってきているのだろうか?
いずれにしても、タナシスは大ピンチのはずだった。
だって、ジュリアさんは言っていたのだ。
「総攻撃の日は、今日。今頃、大部隊でタナシスに攻め行っているはず・・・」
ロミーも急いで、タナシスに戻る必要があった。
なにがなんでも、タナシスは自分が守ってみせる。
だって、ジュリアさんが言ってくれたから。
「私には守れなかった。でも、ロミーには守れる。あなたにはそれだけの力と才能があるの」
きっとジュリアさんとの約束を守ってみせる。
この先、どこまでだって、タナシスは自分の力で守ってみせる。
ロミーは決意していた。
ジュリアを抱えたままで、ロミーはタナシスの方へと道のりを引き返した。
間に合うのだろうか?
絶望的に思えた。
それでも、出来るだけ急いで、来た道を引き返した。
後ろからは、まだわんわん泣いているセシルも、ついてきた。
しばらく歩いたそのとき、はるか前方から、緑の物体が飛んでくるのが見えた。
だんだん大きくなるその物体。
それは竜に乗ったラーサだった。
「ロミー!ロミーね。大変なの。早く一緒に来て!」
ラーサの声はひどくあわてていた。
ぐったりしたジュリアを抱えたロミー。
泣きじゃくるセシル。
聞きたいこと、言いたいことはたくさんあるはずだった。
それなのに、ラーサは、とにかく急いで、ロミーとセシルを竜に乗せようとしていた。
「説明したいことなら、たくさんあるわよ。でも、今は時間がないの。すぐに一緒に来て!タナシスを、そしてレニーを守るためには、すぐにロミーを連れて帰る必要があるのよ!」
もちろん、ロミーにも異存はなかった。
こうしてラーサはロミー、セシル、そしてぐったりしたジュリアを連れて、大急ぎでタナシスへと向かったのだった。
タナシスで待っているはずのレニー。
はたして間に合うのだろうか?
ラーサは竜を操って飛びながら、そんなことを考えていた。