第8話:狼師匠は飴アンド鞭
こんにちは、智神です。
もう8話です。ストーリー進行速度がグダグダ過ぎますね……。
がんばります。
「天才科学者で戦騎スプリットであるポーロニアは、日々カラミティを退治しホットンレーニの平和を守っている。」
「つってもエドエンシスくらいだろ」
「……ある日ジテルヴェンを撃退し、ポーロニアとイッカイが話し合っていると、そこに予想外の人物が現れる。その人物とは―――」
「ポーロニアの姉、ローズ・アインシュタインだった」
「ちょっと!台詞取らないでよ!前回活躍したんだからさあ!」
「うっせえ!俺は主人公だぞ!目立ってもいいだろ!」
「いや暴論!私だって目立ちたいの!あー、どうなる第8話!?」
◆
「私が既に、死んだハズの人間だからさ」
「……は?」
訳がわからず、唖然とするイッカイ。
予想内の反応だったのか、「やっぱり」と溜め息を吐く。
「あの子にとっては、と言う事だ」
「び、びっくりした……それってどう言う事ですか?」
「今から5年前。国最研は平行世界を移動する為ゲートを発生させる装置を発明していた」
「それって…もしかして」
「そう、アビストロフィタワーから繋がっている世界に飛ぶためだ。闇のエレメントがあるんじゃ平行世界に辿り着く前に死んでしまうからね」
「はあ、なるほど」
「そしてその装置―――ハイゼンベルグ・ゲートは完成直前まで行った。そう言えば、GAIZエンタープライズも協力してくれたな。エルヴィンは元気かな?」
「……永遠の17歳って言ってましたよ、自分の事」
「はあ?今彼女は32のハズだが」
「え?」
「え?」
「……すいません、話を戻してください」
「……後は実験だけだった。しかし、そこで事故が起こった。ゲートの暴走だ」
「…!」
「その展開したゲートに、ポーロニアが引き摺り込まれそうになった。私は咄嗟に彼女を突き飛ばし―――ゲートに吸い込まれた」
「なら、どうしてここに?まさか、アビストロフィタワーのゲートを通って?」
「いや、『ディアントス』に着いた」
「は?あのホットンレーニ三大古都の?」
「うん。いやー楽しかったよ?お団子食べたり、観光したり、バイトしたり。で、いつの間にか5年経っててさ。気まずいなーって思いながら帰って―――ゲハッ!?」
「ふざけんなバカ姉ええぇぇぇ!」
ポーロニアのキックがローズの鳩尾にクリティカルヒットする。
「エエエェェェェェッ!?ポーロニア何してんだよ!?」
「このバカ姉!どんだけ私らが心配したと思ってんの?!」
「え?心配してくれたの?いやーお姉ちゃん嬉し―――ドハッ!?」
無言で鳩尾を殴るポーロニア。
羽交い締めにして止めるイッカイ。
「ちょっ、ポーロニア!もうローズさんのライフはゼロだ!止めろ追撃すんな!」
「離せ!この…このバカ姉だけは!」
「おっ、イッカイ君ありがとー。じゃーねー!」
ポーロニア宅から逃げるローズ。
イッカイに羽交い締めされ、ローズの後ろ姿が見えなくなるまでの間、ポーロニアはローズを見詰めていた。
◆
「何故今頃戻って来たんだ……もっと早くても良かっただろぉバカ姉……」
「落ち着けポーロニア。ほら、水」
ローズが去った後。
いきなりポーロニアが泣き出した。
というか酔っ払ったように見える。
イッカイはその対応を続けていた。
「うー、こうなったらナビエ-ストークス方程式証明してやるぅぅ……絶対にしてやるぅぅ……スゥ……」
「寝やがった……しょうがねえ、部屋に運ぶか」
「やっほー!ここにローズ来たってホントー!?」
いきなり突っ込んでくるエルヴィン。
その時、寝ているポーロニアをお姫様抱っこで運ぼうとするイッカイを目撃した。
してしまった。
「あ」
「あ」
「……イッカイ君、ポーロニアは確かに魅力的だけどさあ。それは流石にないんじゃない?」
「誤解です!違いますから!」
「いや19歳と16歳って…えぇ…?」
「誤解だって!」
「あっ、でも雇い主と家政夫の禁断の恋ってありかも!」
「誤解だっつんってだろ変態社長!とっとと仕事しに戻れ!」
「あ~れ~」
エルヴィンを締め出し、ポーロニアをベッドまで運ぶイッカイ。
「はぁ……なんつー事言ってくれてんだ社長」
ふとポーロニアの方を見る。
普段の様子が嘘の様な、年相応の顔をしていた。
(コイツも、普通の子供なんだよな……)
そう思うと、今の世界はどんなに残酷なんだろう。
項垂れるイッカイ。
(―――けど)
(コイツに何かあったら、俺が守ってやらねぇと)
「んっ……んうぅ……あれ?イッカイ?」
「起きたかポーロニア。さて、飯の準備だ」
「ああ……」
「どうした?」
「変な夢を、見たんだ」
「どんな?」
怪訝な表情をするイッカイ。
「―――いや、大丈夫だ、何でもない。さ、昼食を摂ろう?もうお腹が空いて力が出ないよ」
「……ああ」
◆
一方その頃。
ファントは国家所属騎士専用鍛練場で一人剣を振るっていた。
ブロンドの髪から汗が振り払われる。
「ちゃんと練習してるじゃない。感心感心!」
入り口から声がする。
そこには蒼い髪と目の、長身の美人が居た。
ファントはその名を呼ぶ。
「フェンリ、先生」
フェンリ・ミラーズホロウ。
ホットンレーニ最強の剣士と呼ばれる人物。
「どう?カラミティ狩りは」
「順調です。ポーロニア達の協力もあって、市民にそれほど重大な被害もありません」
「いずれは根絶やしにしないと、カラミティも、ソイツらを召喚してるヤツらも」
「……はい」
「あ、そうだ。ファント、久々に私と勝負しないかしら?」
「勝負、ですか?」
「ええ。負けた方は、勝った方の言うことを何でも聞く、それでどう?折角だから…変身して」
「分かりました……暴剣変身ッ!」
[PASSION!HO!HO!!HO!!!HORSE!GREAT!]
ディンパクトに変身するファント。
フェンリもスタンドスラッシャーへキーを挿し込む。
[WOLF KYE!]
「駕狼変身」
[PASSION!WO!WO!!WO!!!WOLF!GREAT!]
「戦騎ヴォルケーノ、参上。知ってると思うけど、この鍛練場は魔力を外に出さない結界で覆われてるから――――思う存分掛かってきなさい」
「……お手柔らかにお願いします、よッ!」
先手必勝とばかりに鋭い突きを放つファント。
勝負の行方は―――
「残念だったわね」
「やっぱ強ぇ……」
地に伏せるファントと、それを見下ろすフェンリ。
ファントのあらゆる攻撃をいなし、強烈なカウンターを浴びせ、3分足らずで下してしまった。
「言っておくけれど、これでも本気の2%も出してないわ」
「マジすか!?」
「ごめんなさい、盛ったわ。でも―――このままだと、今までより強大なカラミティが出てきた時、厳しいわ」
「……分かりました。精進します」
「精進するのは当たり前。まあ、頑張る事ね。それじゃあ」
鍛練場から立ち去るフェンリ。
ふと、ファントが気付く。
「戦騎同士で戦ってたハズだがケルベロスの野郎、来なかったな……はっ、ま、所詮その程度って事か」
◆
「はー疲れた!ロントナーおやつー!」
「あ、俺もー」
アジトに帰ってきて早々、おやつを要求するケルベロス。
それに便乗するヴェルゼフ。
「おやつならお前が昨日全て食っただろう。もう無い。欲しいなら買ってこい」
「「えー」」
面倒臭そうに言う二人。
それには目もくれず、ひたすら端末を操作するロントナ。
「てゆーか、何で私らがカラミティ倒せないの?」
「闇の世界の住人である我々では、闇の世界のカラミティを倒す事は不可能だからだ、と前にも話したはずだが」
「そーだっけ」
「忘れるなケルベロスー」
「むっ、そう言うヴェルゼフは覚えてたの?」
「……モチの、ロン」
「あー、その間は覚えてないって言ってるモノだぞー?てかモチのロンって古っ!」
「はぁ……そうしてる暇があるならカラミティを召喚しに行け。どうせならヴェルゼフ、お前がな」
「わかった。行ってくる」
「いってらっしゃーい!」
◆
適当に城下町を散歩するフェンリ。
道行く人々(主に男性)が次々に振り向く。
が、フェンリは一切気にしない。
「皆振り向いてるけどどうしたのかしら?」
そもそも自分が原因という事にすら気付いていない。
それから少し歩いていると、白いコートを羽織りマスカレイド用の仮面を着けた如何にも怪しい男を見つけた。
キョロキョロしているのでより一層怪しい。
「そこのお兄さん、少し良いかしら?」
「フェンリ・ミラーズホロウさん、ですよね」
「…ええ、そうだけど」
「少し、この子の相手してくれませんか」
そう言うと青年はキーを地面に挿し――カラミティを召喚した。
「ッ!?」
「では、よろしく」
「待ちなさい!くっ!邪魔よ!」
青年を追い掛けようとするもカラミティに邪魔される。
スタンドスラッシャーで斬り付けどけるが、もうそこに青年は居なかった。
「ああもうっ!しょうがないわね!駕狼変身!」
[WOLF KYE!]
[PASSION!WO!WO!!WO!!!WOLF!GREAT!]
変身が完了すると同時にカラミティへ飛び掛かり、投げる。
カラミティは直ぐに立ち上がり、突撃してきた。
「そんな直線的な攻撃じゃ当たらないわよっ!」
が、フェンリにいなされ、背中に連続で斬撃を受ける。
倒れたところを押さえ付け、何度も刺す。
「これで終わりよ」
[FINAL BREAK!]
[W O L F S L A S H !]
スタンドスラッシャーの刀身へ狼のエレメントを纏い、カラミティへ突き刺す。
次の瞬間、黒い爆炎と共にカラミティは消滅した。
「報告された二人以外にもう一人……アイツもいずれは殲滅しないと」
◆
「ただいま」
「おかえりヴェルゼフー!どうだった?」
「……」
無言で指を立てるヴェルゼフ。
「上手く召喚できた」
「おおー!さっすがヴェルゼフ!」
「全く……十二星座の主達が戦騎に倒されてくれれば良いのだが。その方が多くのエネルギーが集まる」
「確かにねー。はぁーあ…あ、良い事思い付いちゃった!」
「何何?」
「どうせ余計な事だろう。放っておけ」
「ふふふん、良いもんねー。勝手にやっちゃうもんねー。あー楽しみー!」
「……はあ」
制御できない部下に頭を抱えるロントナであった。
ケルベロスは何を仕出かそうとしているのでしょうか?
それは次回明らかにします。
お楽しみに!