第6話:ナイスコンビの親睦会
遅くなりました。
今回は短めです。
「天才科学者ポーロニアは父・ハイドをイッカイへ紹介する為、国最研へイッカイを連れていく。イッカイとハイドが対話している途中、カラミティが現れるが、ポーロニアが華麗に撃破―――」
「何捏造してんですか!俺が変身して倒したでしょ!?」
「んな事より俺ら爆発してたけど大丈夫なのか?」
「んな事って何ですかんな事ってぇ!」
「あーもう五月蝿いよ!兎に角第6話始めるよ」
◆
「ん……ここは」
「病院だ、ポーロニア」
ベッドの上で身を起こすポーロニア。
隣のベッドのファントはリンゴにかじりついていた。
ポーロニアもリンゴを食べる。
勿論カットされたものだ。
見渡すと寝息を立てているイッカイも居た。
「………雇い主を置いて寝ているとは、ねえ」
「安静にしてろ、って言ったのお前だろ」
「というか、何故君はここに居るんだ?王族ならもっといい場所に居るハズだろう?」
「知るか」
そう短く答えると、再びリンゴにかぶりつく。
(しかし、何だあのデバイスは。ウェイクアンロッカーに似ていた――というよりシルエットはそのままだ。何故あの少女が持っている?何か背後に巨大な組織があるのか―――)
いくら考えても答えは出てこず。
頭をスッキリさせる為、論文を読む事にした。
今世界では魔法学を含む科学が発展している。
それに関する論文をポーロニアは時々読むのだ。
因みに今読んでいる論文のテーマは『龍と自然環境の関係性について』。
「んあ……あ?もう朝か……って、何でポーロニアさん居るんですか!?」
「あまり大きな声を出すな、ここは病院だ……まあ、私も少し負傷してしまってね」
「ん~、あっ、ファントさん。俺達が後どれくらいで退院出来るって分かりますか?」
「あ?あー、お前は明日には退院できるみたいだぞ。俺らは知らねえが」
「そうなんですか。帰ったら掃除しなきゃなあ~」
「仕事熱心だな、全く―――ッ!?」
と、病室の扉が開く音にファントが気付いた―――時には、ポーロニアに金髪の少女が抱き付いていた。
ポーロニアは物凄く不満そうな顔をしている。
「ひっさしぶりポーロニアちゃん!うーん可愛いなこんにゃろ~!」
「……それがケガ人に対する行為?バカなの?」
「あの、ポーロニアさん?そちらのお方は……」
「ああ、彼女は―――」
「私はエルヴィン・オブヘブン!永遠の17歳!GAIZエンタープライズの社長でーす!これ名刺ね」
「あ、どうも」
「いやー、ポーロニアちゃんが病院に運ばれたって聞いたから副社長に職務放り投げてお見舞い来ちゃった!」
「いやダメだろ」
「で、そっちの黒髪ボーイは彼氏?ポーロニアちゃんちっちゃい頃は『エルヴィンおねぇちゃんと結婚するー!』って言ってたのに?」
「彼氏じゃないし家政夫だし。てゆーか過去捏造しないで」
「じゃあファント?」
「だーかーらー違う!彼氏なんて生まれてこの方出来た事ないし!」
思わず吹き出してしまうイッカイ、それを睨み付けるポーロニア。
「何?何か文句でも?」
「あっ、いえ……お二人って何か、姉妹みたいだな、と」
「おっ、分かってるね黒髪ボーイ!」
「余計な事言わないでくれイッカイ君……そういえばエルヴィン、アレは完成したの?」
「ああ、もうほぼ完成してるよ。あとは試運転だねー。そうだ!イッカイ君も戦騎になったんでしょ?だったらココで見せちゃおっかー!」
エルヴィンが手元の端末を操作すると、空中に資料が投影される。
そこには、車輪が前後に一輪ずつ付いた乗り物が映っていた。
「これがGAIZと国最研が共同で開発している『ライドサイクロトロン』。戦騎の移動を補助する、オートバイクってヤツだね」
「うぉぉ……かっけぇ……」
「お、分かる?やっぱこのフォルムって最高だよねー!ま、デザインしたの私だけど―――」
話の途中、軽快なメロディが鳴り響く。
エルヴィンが懐から薄い四角形の箱の様なデバイス、スマートガイザーを取り出す。
「はぁーい、もしも―――」
「社長!もうそろそろ戻って来て下さい!副社長滅茶苦茶怒ってますよ!」
「あー、はいはい。分かった。直ぐ戻るって伝えといてー。バイビー」
「ちょっ、待って―――」
テキトーに返事し、通話を切るエルヴィン。
「じゃ、そういう訳で!バイビー!」
音も立てず、物凄いスピードで去っていった。
「破天荒な社長さんだな……あれ、ファントさんは?」
「ファントなら電話しに外に行ったよ」
「大ケガしてたのにもう動けるのか…」
◆
「俺だ……ドラゴンのキー?それがどうかしたのか?」
「何だと?ドラゴンのキーの適合者が見つかった!?それは本当か!?」
「ああ……ああ、分かった。後はそっちに任せておく」
「ついに現れやがったか……」
◆
GAIZエンタープライズ本社。
そのロビーのソファーに、貧乏揺すりをしながら座っている男が居た。
ドリマー・サルヴァトリア。
エルヴィンの秘書を勤めているが…少々苦労人体質のようだ。
自動ドアが開き、エルヴィンが入ってくる。
「やっほーサリー」
「遅いです!もういきなり副社長に『私の仕事やっといてー』って言って出ていくの止めてください!」
「分かってるよー次からはやらないよー」
「絶対思ってないですよね!?」
のらりくらりとドリマーも追及をかわしながら、社長室へ入室し、椅子に腰掛ける。
暫くして副社長も入室してくる。
「社長、金輪際私に仕事押し付けるのは止めてくださいよ?!もうどれだけ大変だったか……」
「はいはーい、分かってまーす」
「分かってないですよね!?もう地獄でしたよ……」
「そーなんだー。じゃあ1ヶ月くらい休み入れとくねー」
「は?」
「だいじょーぶ、私の仕事の早さは知ってるでしょ?いーからいーから!じゃーねー」
「え?え?え?」
何も分からず押し出される副社長。
社長室から出てきたドリマーに、彼は聞いた。
「なあ、私はどうしたら良いと思う?」
「……笑えば良いと思います。という訳で、僕渾身のギャグ行きます」
「え」
「さて、この会社の男性職員にはとある共通点があります、なんでしょう?」
「……?何だろう」
「全員NICE GUYS!」
「……うん、凄くセンス良いね、そのギャグ」
◆
副社長を見送った後、社長室に戻るドリマー。
エルヴィンは何やら端末を操作している。
机には複数のコードが繋がれた銀色の手甲爪の様なモノが置いてあった。
「何していらっしゃるんですか?」
「うわわあ!?さ、サリー!部屋に入るんだったらノックぐらいしてよ!」
「しましたが」
「したんかーい!いや、只の仕事だよアハハ」
明らかに目が泳いでいる。
が、ドリマーは気にしない事にした。
ホワイト企業で知られているGAIZにも知られてはいけない事があるだろうし、社長も人間である以上秘密の1つや2つくらい持っていても可笑しくはない、と考えたからだ。
「失礼しました」と一声かけ、社長室から退室するドリマー。
ドリマーが退室した後ふう、と溜め息を吐くエルヴィン。
窓から射し込む夕焼けが彼女を照らす。
「進捗率、99%ってとこかな」
銀色の手甲爪の側には、2つのエレメントキーも置いてあった。
◆
ポーロニアが退院してか数日後。
とあるレストラン前にポーロニアとイッカイは来ていた。
「今日は外食か。珍しいな」
「はい、折角退院したんですし、贅沢に行こうかな、と!」
「そうか」
「いやー、予約取るのに苦労しましたよ。Trattoria Ipφcrisia!中入りましょう」
レストランの中に入ると、ヴァイパーが出迎える。
イッカイとポーロニアを見た瞬間、顔がニヤつく。
「いらっしゃいませー。あらら、素敵なアベックのご来店」
「っアアアア、アベック!?!?」
「?アベックって何だい?」
「アベックっていうのはですね―――」
「良いですから!俺達の席ってどこですか?」
「こちらでーす。ご注文お決まりになりましたらこちらのボタン押して待っていてくださいねー」
二人席に向かい合って座る二人。
ポーロニアは通常通りだが、イッカイは少し落ち着きが見えない。
「?大丈夫かい?」
「だ、大丈夫です。あっ、ポーロニアさん何頼むか決まりましたか?」
「ああ、私はこのスパゲッティミートソースを。イッカイ君は?」
「俺は―――」
「私のオススメはねー、このオリジナルマルゲリータ!美味しいよ?」
「えっ?あっ、はい。じゃあそれで」
突然会話に割り込むマステラ。
不意を突かれたイッカイは流され、それを頼む。
「スパゲッティミートソースとオリジナルマルゲリータ一丁!」
「了解」
スフェルが短く返事をし、料理が作られ始めた。
◆
「お待たせいたしました~」
暫く談笑していると、料理が運ばれてくる。
作りたてといい事を主張するかの様に、湯気がもくもくと立ち上っている。
「ごゆっくりどうぞー」
「それじゃあ……」
「「いただきます」」
「前々から思ってたのだが」ポーロニアが話を切り出す。
「君、私より年上なんだからタメ口で話しても良いんだよ?」
「いえいえ、俺は家政夫で、ポーロニアさんは雇い主なんですから、タメ口なんて……」
「じゃあ命令だ。今後一切、私に敬語を使わない事、良いね?」
「えっ……」
「後私の名前も呼び捨てで良い。というかそうしたまえ。これも親交を深める為だと思って、ね?」
「うぅ~…分かりました。頑張りま―――」
「はいアウト」
「えぇ!?」
「ほら、もう一回」
「んじゃあ……これから宜しく、ポーロニア」
「こちらこそイッカイ」
「……?あれ、俺も呼び捨てにされてる?」
「気のせいだよ」
どうでしたでしょうか
ヴァイパー達の店の名前、リストランテからトラットリアに変更しました。
リストランテは高級店等を表すそうなので……。