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邪断戦騎"クローズ"  作者: 智神
4/12

第4話:漆黒のヒーローの戦う理由

お久しぶりです。智神です。

今回はイッカイが遂に……。

「やあやあ、パーフェクトギャラクシーアルティメット天才科学者のポーロニアだ。とある住宅街でレストランを営んでいたヴァイパー・ブラッドヴェセル、スフェル・チューナー、マステラ・プリテンドの三人組。彼らには義賊団ラドリオとしての顔があった。ある日いつも通り活動していると、4Cが現れ―――」

「前回俺ら出てないじゃないですか!主人公なのに!」

「うるさいよ、今私があらすじ紹介してる途中でしょうが。てかこの物語の主人公私だし」

「いやいや、俺ですよ。題名に―――」

「はいっ、第4話スタート!」

「無視しないで下さいよォ!」



サンドイッチを頬張りながら新聞を眺めるポーロニア。

コーヒーを啜り、ある記事を見て溜め息を吐く。


「どうしたんですか?」

「4Cがまたラドリオに逃げられたらしい。これで何度目だ…?」

「ラドリオ?」

「エドエンシスのみで活動する盗賊団だ。尤も、一般市民からは義賊と呼ばれてるらしいが」

「ふーん」

「それで…今日の予定は覚えているよね?」

「はい、今日は『国立最先端科学研究所』へ訪問するんでしたよね?」


国立最先端科学研究所。

通称は国最研(こくさいけん)

およそ5千年前に設立した、その名の通り科学分野に関する事を研究している施設。

が、魔術を研究している課もある、らしい。


「ああ、君も一緒にね」

「え?」


何で俺も?という表情をするイッカイ。

一方ポーロニアは首を傾げていた。


「あれ、言ってなかったかな。まあいいや、どのみちキミに会わせたい人がいるからね。さあ、行くよ」

「え、その格好で行くんですか?」


イッカイが指摘したポーロニアの服装は至ってシンプルなものだ。

いつもの白衣、ダメージジーンズ、そして数式がところ狭しと書かれたパーカー。


「いやいやいや!なんすかそのパーカー!?」

「オーダーメイド」

「ダサッ!今からでも良いから着替えましょうよ!」

「別に誰にも何も言われなかったんが……」

「その服指摘する人なんて居ませんよ!てかそのリュックも何ですか!数式大好きなんですか!?」

「大好きだが」

「ああもう!」


結局イッカイの方が根負けし、ポーロニアは数式Tシャツを着ていく事になった。

ポーロニアは満足気だったが、研究所に行く途中の人の視線が痛かった。



「でけぇな……」


高さ100m超えの建造物を見上げ、語彙力のない感想を口にするイッカイ。

外壁は白一色で、無数の窓が取り付けられている。


「何してるんだい?早く行くよ」

「あ、はい!」


その後、自動で動くドアや、昇降機(エレベーター)と呼ばれる移動装置等の最新技術を目の当たりにし、興奮するイッカイ。

ポーロニアに次々と質問を投げ掛ける。

国最研の職員たちになんだコイツという目で見られたが、特に気にしていなかった。

そうこうしている内に目的地に着く。


「いやここ所長室じゃないすか!」

「そうだが?」

「俺が来ていいんですか!?」

「じゃなきゃ連れて来てないよ」


そう言って所長室の扉を開ける。

その奥には所長とおぼしき男性が座っていた。

そこからは、荘厳で重厚な雰囲気が醸し出されている。


「久し振り、父さん」

「えっ?」

「良く来たな、我が娘よ。そして…えぇ~、家政夫くん」

「えっ?」


混乱するイッカイ。

一つはポーロニアと所長が父娘の関係だった事に対して。

もう一つは所長が自分の事を知っている事に対して。


そのまま黙っている所長――――だったが、何故かいきなり叫ぶ。


「だぁぁぁ!ああもう堅ッ苦しい!もう止めや!」

「ちょ、父さん!雰囲気台無しじゃん!もうちょい抑えられなかったかなぁ?」

「出来る訳ないやろ!第一なあ、お父さんはなあ、こういう、もう、何て言うか…この空気感が嫌いなんや!」


そこには先程までの威厳ある風格を纏った男性はおらず、代わりに『フォッサウェスト弁』で喋る饒舌な人物が居た。


「……ああ、びっくりさせてゴメンな。とりまそこ座っとくれ」

「えっ、えっ?…あっ、はい」


ソファーに座るイッカイとポーロニア。

所長もどっこいしょ、と言いながら座る。

ソファーがボスン、と音を立てた。


「えーと、まずは自己紹介からやな!俺はハイド。ハイド・アインシュタイン。今は国最研の所長してる…って見りゃわかるか。年は38で、身長は―――っと、お菓子とお茶ないやん!ごめんな気付かんで。ヘィ、エニグマ!」

「お呼びでしょうか?ハイド所長」

「あっ、エニグマ久し振り~!」

「お久し振りです、ポーロニア様」


ハイドが手を叩きその名を呼ぶと、魔法陣が展開され、国最研の制服を着た少女――エニグマが現れる。

ポーロニアは笑顔でエニグマに抱き付く。

その姿に何処か違和感を覚えるイッカイ。


「茶菓子持ってきてくれへん?」

「了解しました」

「ありがとな~助かるわ~」

「ちょちょ、ちょっと待って!」

「?どうかされましたか」


エニグマを呼び止めるイッカイ。

首を傾げるエニグマ。


「君…人間?」

「いえ、()()()()()ですが」

「マギノイド?」


聞き覚えのない単語に困惑するイッカイ。

いきなりフッフッフ、とハイドが不敵に笑う。


「そう!マギノイドとはこの俺が開発した自律式魔導ロボット!自分で認知し、思考し、行動する!人間と同等、いやそれ以上の知能を持つ俺の最高傑作や!」


自分の発明品を自賛したがるのは遺伝なのか―――と思うイッカイ。

ハイドが咳払いをし「少し話してもええか?」と聞き、真剣な表情でイッカイを見つめる。

先程とは打って変わった様子に、イッカイは思わず身体が硬直した。


「例えば―――君が正義の為に戦っていて、ポーロニアみたいな力を持っているとする。目の前にカラミティに襲われて、死にそうな人間が居た。どうする?」

「どうする、って……勿論助けますよ!」

「そっか。じゃあ―――その人間が君にありがとうの一言も言わず一人だけ逃げたら、君はどう思う?」

「えっ、いや、それは……」


黙ってしまうイッカイ。

その姿を、ポーロニアは見詰めている。

暫くして、イッカイは口を開いた。


「―――多分イラつくと思います。“何でアイツは感謝もしないんだ”って」

「ふーむ……君は人助けに見返りを求めているのかもしれへんな」

「…………」


そんな事、考えた事も無かったとイッカイは思う。

人に助けられたら感謝する。

だから、誰かを助けた時見返りを要求するのは当たり前だと考えていた。

それが当たり前だと思っていた。自分も他人も。

でもそれが本当に正しいのか、自分は間違っていたのかと、落ち込むイッカイ。


突然けたたましくアラートが鳴り響く。

カラミティの出現を知らせるアラートだ。


「っ!カラミティか!」

「おう、いってらっしゃいなポーロニア」

「あっ、俺も行きます!」

「ちょいちょいちょい、君はここで待機や」


走り出すポーロニア。

イッカイもそれに続いて追いかけるが、ハイドが止める。


「えっ、何ですか?」

「いやいや、フツーカラミティに突っ込んで行くの自殺行為やからな?……で、キミに聞きたい事があるからやな」

「何ですか?聞きたい事って」

「さっきの話の続きなんやけどな。もし世界中の人間が助けられて感謝もしない連中ばっかやったら――――君は人間を助ける事を辞めるか?」

「―――絶対に辞めません」

「それは何でや?」

「俺の故郷には、家族も、友人も居るんです。多分俺が諦めたら、ソイツらの期待を裏切る事になる、失望させてしまうと思うんです。―――そんな事、耐えられないですから」


静かに、しかし熱を秘めてその強固な意思を口に出すイッカイ。


「戦う理由は故郷の為、ってことやな?」

「はい」

「そっか―――気に入ったわ、君!」


冷静な口調から明るい口調へかわるハイド。

オンオフの差が激しい人だな、とイッカイは思う。


「何かもう、そのあっつい魂の熱がブワーッって伝わって来たで!いやー本当本にしたい―――」


突然、国最研の玄関口から爆発音が聞こえた。

恐らくポーロニアとカラミティのものだろう。


「すいません、少し行ってきます!」

「あ、ちょ待って待って!コレ受け取ってくれ」


ハイドから何かを渡される。

それは――――


「エレメントキー……」

「それにはカラスの属性が籠ってる。御守り代わりに持っといてくれな?」

「……ありがとうございます!大切にします」


そう言いながら所長室を走って出ていくイッカイ。

エニグマはハイドへ問う。


「大丈夫でしょうか」

「大丈夫や。イッカイ君は強いからな」

「根拠は」

「故郷の為に戦うっていう意思があるから、やな」



イッカイが玄関口へ駆け付けると、ポーロニアは変身解除されていた。

ポーロニアへ駆け寄るイッカイ。


「ポーロニアさん!大丈夫ですか?!」

「大丈夫じゃないよ……」


鶏のような風貌をしたカラミティが耳障りな唸り声を上げる。

もう一度変身しようとするポーロニア。

が、イッカイがウェイクアンロッカーを取り上げる。


「え?何する気だい?!」

「アイツを倒します」

「キーを持っていないのにか!?」

「キーなら、あります」


[WAKE ANLOCKER!]


ウェイクアンロッカーを装着し、キーを装填する。


[CROW KYE!]

[ANLOCK!]


ポーロニアが変身した時と同じ様に『ソニックドライブファクトリー』が展開する。


「―――変身」


そう言うと同時に、ウェイクアンロッカー上部のスイッチを押す。

腕をカラミティへ向け、挑発するように指をクイッと曲げる。

そして、『ソニックドライブファクトリー』で製造された装甲がイッカイへ装着された。


[漆黒激烈情熱!C!C!!C!!!CROW!WONDERFUL!]


そこには、漆黒の戦士が居た。

スプリットと同じくスタイリッシュなデザインになっている。

俯いた顔を上げ、赤い複眼がカラミティを視界に入れる。

そして―――叫んだ。


「こっからは……オレの無双だァァァァァァァァッッッ!!!!!」


どうでしたでしょうか。

相変わらずうちの猫が可愛いです。

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