第1話:ナイスコンビの誕生
初めまして、天乃京と申します。
正統派ヒーロー、良いですよね。上手く書けるか不安です。
ヒーローといえば僕はリュウケンドーとか好きでしたね。え、知らない?うそーん
────約1万年前。
地球のとある島国、『ホットンレーニ』の『クワトパエーゼ地方』森林地帯に、突如として巨大な塔が地中から出現。
その搭の周囲からは闇のエレメントを含む障気が噴出。さらに、未知の生物『カラミティ』、通称『魔物』が出現。人々を襲い始めた。
これを受け国は、『災害生物対策騎士団(Calamity Creature Counterplan Chivalric order)』
―――通称4Cを設立。
また、搭の周囲の汚染された地域を『魔界』とし、一切の立ち入りを禁じた。
◆
街の噴水広場で佇む、カーキのモッズコートを羽織った青年。
髪はウェーブがかった黒髪、目の色は黒で、黒のダメージズボンとブーツを履いている。
肩には大荷物を掛け、地図をじっと見つめている。
人々が行き交うそこで、彼は静かに呟いた。
「―――ココ…ドコだよ……」
青年――イッカイ・トリニティクロウは、道に迷っていた。
地元である『エストノルド地方』の『ペタシテス』から、目的地がある『エストチッタ地方』の大都市、『エドエンシス』『キュクヌス区』へ馬車で送ってもらったのは良いものの、持ち前の方向音痴が発動してしまい、さらに地図を見ずに歩き続けた結果――こうなってしまった。
これ以上宛もなく歩いていても仕方がないと考え、誰かに案内してもらう事にしたイッカイ。
(……ま、結構近くまで来てるハズだろ。大丈夫大丈夫)
そんな楽観的な考えは、呼び止めたおじさんの一言で崩壊する。
「あ、すいませーん。ここから『キュクヌス区』までってどうやって行けばいいんですか?」
「ん?あぁ~……えっと、あのさ、あんちゃん。どうしてここに来たの」
「えっ」
「あと南西に50キロは進まないと、『キュクヌス区』には行けないよ」
「えっ――――ええぇぇぇぇぇぇーーーー!?」
噴水広場に、イッカイの絶叫が響いた。
◆
そんなこんなで一週間後―――
イッカイは無事、目的地へ到着した。
少し大きめの、『エドエンシス』では一般的な家。
そもそも、イッカイがそこを目指したのは、バイトである家政婦――否、家政夫の為だ。
実家が農家を営んでいるイッカイは『エストマーレ地方』の農村に住んでいた。
両親や農場の作業人と、賑やかに暮らしていた。
だが、両親も少しずつ体力が衰え、収入も減ってしまう。
そして中学を卒業した15歳の頃、イッカイは決意する。
家政夫になろう、と。
両親の手伝いで培った家事を活かし、4年間家政夫として活躍してきた。
受け取った給与は半分以上を両親に送っている。
そして転がり込んできたのが、この仕事。
給与が高く、特殊な条件もない。キツい所と言えば場所だけ。
「これ……やってくれるかな?」
「やります!いえ、寧ろやらせてください!」
上司の顔が哀れむ様なものだったのも気にせず、二つ返事でイッカイは了解し、ここまで――途中、トラブルはあったが――飛んできた。
「雇い主さん、どんな人何だろ……すいませーん」
扉を叩き、雇い主を呼ぶ。
すると、「はーい」という声が聞こえる――事もなく、扉が開く。
出てきたのは、白衣を羽織った、白い髪のツインテール少女だった。
落ち着いている雰囲気に反し、目は燃える炎の様に紅く、アンダーフレームの黒縁メガネも掛けている。
身長は160cmくらいだろうか。
「うぉっ…あの、雇い主の方―――」
「キミの、靴のサイズはいくつだ?」
「は?」
唐突な質問に思わずそんな声が出てしまう。
しかし、白い髪の少女は気にする事もせず。しかし少し呆れた様に言う。
「だから、キミの靴のサイズを聞いているんだ」
「あ、えーと…28です」
「ほうほう、28か……素晴らしいじゃないか。二番目に小さい完全数だ」
「完全数……?」
「キミが新しい家政婦……いや、この場合家政夫か。さあ、中に入りたまえ」
家の中に入るイッカイ。
整理整頓がしっかりされており、何に使うのか分からない道具が作業机の上に置いてあった。
壁には大きい黒板があり、そこに見るだけで頭が痛くなる様な数字とアルファベットの羅列が書かれている。
とんでもない人が雇い主になっちゃったな―――と、イッカイは心で呟く。
「さあ、お茶を入れよう。キミは何が好みかな?」
「え、あ、いや、俺がやりますよ。家政夫なんですし」
「あぁ~、そうだった。じゃあ、私はペパーミントを頼むよ。ハーブは台所の足元の棚にある筈だ」
「分かりました。じゃあ、少し待っていて下さい。あ、所で……」
イッカイは、先ほど玄関で言われた言葉を思い出す。
『完全数』
「完全数って―――うぉっ」
物凄い速度で近付いて来た白い髪の少女。
「知りたいかい?」
「え、えぇ。興味はありますけど……」
「完全数というのは……例えばnという数があって、そこからn自身を除いた約数を全て足すとnになる数の事だ」
イッカイの頭にはクエッションマークが浮かんでいた。
それを察した白い髪の少女は、黒板の式を全て消し、28という数を書く。
「さて、約数についてはもう知ってるかな?」
「あ、はい、たぶん」
「ふむ……一応確認しておこう。約数は、nという数を割り切れる整数の事だ。100という数は1で割り切れる。10でも100でも、同じようにね。よし、では28の約数を求めてみてくれ」
イッカイはすぐに取り組んだ。
白い髪の少女から白紙と鉛筆を受け取り、28の約数を書いていく。
計算、ひいて数学というのはどうも苦手だが、この程度なら出来る。
少しして、イッカイは28の約数を全て書き終えた。
それを見て、白い髪の少女は満足そうに頷く。
「1、2、4、7、14、28……うんうん、いいじゃないか。次は、それらから28を引き抜いて、全て足してみよう」
イッカイは白紙に、1+2+4+7+14と書き、計算する。
どんどん式を簡単に――3+11+14と言った具合に――していく。
すると―――
「……すごい、28になった」
「そう。これこそ、この世界が誕生する前から存在している、奇跡の数字だよ。素晴らしいだろう?1000以下の完全数というのは4つしかない。その一つが今、キミの身体に宿っているんだ」
「……あの、こんなこと言って申し訳ないんですが……雇い主さんって意外にロマンチストなんですね」
そう言われ、頬を膨らます白い髪の少女。
「むっ、意外とは何だ。意外とは。それに私の名前は雇い主さんじゃない。ちゃんと『ポーロニア・アインシュタイン』という名前があるんだ」
「あっ、そう言えば名前まだお聞きしていませんでした。すいません。それと、紅茶入りましたよ。どうぞ」
「ああ、ありがとう」
一口飲んで息を吐くと、今度は白い髪の少女―――ポーロニアから質問される。
「それで、キミの名前は?」
「ああ、そうだ。俺も名乗ってませんでしたね。イッカイです。イッカイ・トリニティクロウ」
「イッカイくん、か。良い名だね。じゃ、次は―――」
突然、耳障りな警報音が鳴り響く。
と同時に、人々の悲鳴が聞こえる。
ポーロニアは険しい顔付きになり、脱兎の如く飛び出していった。
「……全く、こんな時に…!」
「えッ!?ちょっと待ってください!」
◆
走るポーロニア。
それを追いかけるイッカイ。
少しすると、ポーロニアが突如立ち止まる。
その視線の先には―――
怪物が居た。
巨大な胴体からは歪で鋭いクローが付いた腕が左右4本ずつ伸び、毛が鬱蒼と生えていた。
唸り声も上げている。
その姿に、生理的嫌悪感を感じるイッカイ。
ポーロニアは慣れているのか、その姿を見て特に動揺する事も無かった。
「うわキモっ……ポーロニアさん!何ですかあれ!」
「カラミティだ…って何だ、着いて来てたのか」
「あ、すいません。……え?カラミティって何ですか?」
「は?カラミティを知らない?キミ、出身は?」
「ペタシテスです」
「ああ、エストノルド地方か。道理で知らない訳だ」
合点が行ったみたいで、ぽん、と手を叩く。
と同時に、ポーロニア達に気が付いたカラミティが物凄い速度で接近してくる。
形容し難い咆哮を上げながら。
しかしポーロニアは呆れた様な、うんざりした様な溜め息を吐き―――
「……全く、うるさいな」
[RAPID ARROW!]
何処からか弓の様なモノを取りだし、弦を引き絞って―――
「少し静かにしてくれないか?」
怪物に向かってエネルギーの矢を放った。
すると怪物は10m程吹き飛ぶ。
「えっ…えぇ…?どうなってんだ………」
困惑するイッカイ。
「さっすが、私のラピッドアロー!……さあて、と。そろそろ本気出すとするか」
[WAKE UNLOCKER!]
ポーロニアは機械的なガントレット――ウェイクアンロッカーを左腕に付ける。
ウェイクアンロッカーが起動すると同時に、『フィッテングバント』が腕に巻かれる。
そして掌サイズのデバイスをトレンチコートのポケットから取り出し、上部を時計回りに回した。
すると中部の絵柄が変化し、下部からは鍵の様なパーツ『キーコネクター』が出現。
それをウェイクアンロッカー後部の2つある『キースロット』の内、左側に挿し込む。
[RABBIT KYE!]
テンション高めの声が何処からか発せられ、警告ブザーとテクノが混じった様な近未来的な音楽が鳴り響く。
その音楽が始まった瞬間、怪物は頭を抑え苦しむ。
「少し離れていた方が良い」
「え?はあ……」
イッカイが5m程離れた所で、ポーロニアは鍵を回す。
[UNLOCK!]
そんな音声と共に魔法陣が展開され、巨大な機械―高速装甲製造装置『ソニックドライブファクトリー』が展開される。
ポーロニアはウェイクチェンジャー上部のスイッチを押し―――
「―――超躍変身」
[TRANSFORMATION!]
再三ハイテンションな音声が発せられ、何かの装備らしきモノが形成されていく。
それらが全て完成すると、アームによってポーロニアの身体に装着された。
そこからスーツが展開し―――
「え?えっ?」
[紅眼のハイジャンパー!RA!RA!!RA!!!RABBIT!"WONDERFUL!"]
そこにポーロニアはおらず、代わりに白い異形が居た。
しかしその姿はカラミティとは違い、洗練されたシャープなボディで構成され、鎧の様な印象を受ける。
「ポーロニアさん…ですよね?」
「―――スプリット」
「え?」
「バネって意味のスプリングと、ラビット、それと分裂って意味のスプリットを掛け合わせた名前の―――ちょっとした、変身ヒロインさ」
どうでしたでしょうか。もし改善点や誤字脱字などありましたら報告していただけると幸いです。
そうです、まだ主人公は変身しません。
といっても最終回まで引っ張る事はないのでご安心を……。
12/21 スプリットの変身を変更しました。