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第23話『酔う宵-後輩ちゃんもいっしょver.-』

「それにしても、こうして実際に会ってみると、お二人が100歳を超えた方達とは思えないなぁ」


 ビールの入ったコップを両手で持ちながら、愛実ちゃんはエリカさんやリサさんのことをじっと見つめている。

 俺も2人が100歳を越えていると知ったときは驚いたなぁ。若々しいし。平均寿命が600歳越えであることには更に驚いたけど。


「ええと、正確には何歳だったっけ? 前に宏斗先輩に教えてもらった気がしたんだけど忘れちゃって」

「私が110歳で、リサが115歳だよ」

「えっ! エリカちゃんの方が年下なの?」

「……エリカ様の方が大人っぽい雰囲気ですからね。顔も体つきも……」

「こ、個人差があるからね、リサ。それに、ダイマ星人にとって5歳なんて同い年のようなものだから。私達、平均寿命は600歳で、長寿の方だと800歳越えの人もいるの」

「えええっ! そんなに生きるんだ。だからこそ、110歳でもこんなに若々しいんだろうなぁ」

「ふふっ」


 ダイマ星人の110歳は地球人でいうとどのくらいなんだろう。確か、成人になるのは50歳で、400歳くらいまで子供を作れるんだったよな。そう考えると、愛実ちゃんと同じ23歳くらいなのかな。

 そういえば、愛実ちゃんは2人に対してタメ口になっている。いいことだ。

 それにしても、この唐揚げ美味しいなぁ。ビールとよく合う。明日から3連休ということもあってかより美味しい。


「私達からすれば、地球人の成長の早さに感心します。寿命が短いからかもしれませんが」

「そうだね、リサ。2人とも20代なのに働いて。そういえば……愛実ちゃんも宏斗さんのように一人暮らししているの?」

「うん。ここに比べたら大分狭いけれど。ただ、実家にいた頃に家事をあまりやらなかったからか、最初は大変だった」

「なるほど。愛実ちゃん偉いねぇ」


 エリカさんは椅子から立ち上がり、柔らかい笑みを浮かべながら愛実ちゃんの頭を撫でる。

 俺は実家にいた頃も家事をやっていたけれど、一人暮らしに慣れるまでは時間がかかったな。それに、あの頃は業務を大量にやらされて、平日は家で寝ているだけだった。


「あの、宏斗様と愛実様は一緒にお仕事をされていますが、どのようにして出会ったのですか?」

「去年の10月に、新人研修を終えた愛実ちゃんが俺のいる部署に配属されたんです。当時は一番歳が近い人間が俺ということもあって、彼女の指導係になったんです。それからはずっと一緒に仕事していますね」

「そうだったのですか。基本的に家では落ち着いていますけど、会社でも落ち着いているのですか?」

「そうだね。いつも落ち着いていて、優しくて、私がミスをしてしまったときとかは叱ってくださって。他のメンバーも言っているけれど、宏斗先輩がいると安心するよ」

「さすがは宏斗さんだね!」


 お酒の影響もあるのか、エリカさんは俺の背後に回って、ぎゅっと抱きしめてくる。

 俺はプロジェクトリーダーとして、色々と模索しながらやっているだけなんだけど。それがメンバーの安心に繋がっているのであれば嬉しい。


「ただ、お客様との会議があったときに、無茶な要求を笑いながら怒ってはね除けたって話を聞いたときは驚いちゃった。その会議が終わってからは終業時刻までずっと、コーヒーを飲みながら笑っていましたよね」

「あぁ、そんなこともあったね。あのときは、笑ってないとやってられなかったから」

「笑いながら怒る……あっ、もしかして、パンを天井に飛ばして汚したときも……」


 あああっ、とエリカさんは青ざめた様子に。そういえば、先週の土曜日にフレンチトーストを作ってくれたとき、一度、食パンを天井に飛ばしていたな。


「エリカ様。そんなことをしていたのですか。力の加減には気を付けてくださいね。私達の力では地球のものは壊れやすいですから」

「そうだね。気を付けます」

「リサさんの言う通りです。あと、あのときのことは怒っていませんから」

「……うん。宏斗さん、大好き!」


 そう言うと、エリカさんはさっきよりも強く抱きしめてくる。酔っていて力のコントロールができていないのか、かなり痛いぞ。


「エリカさん、痛いです!」

「あっ、ごめんなさい」


 エリカさんは苦笑いをして自分の席に戻った。お酒を呑んでいるときは特に気を付けないといけないな。

 ビールを呑み終わったので、ウイスキーを呑む。これまでウイスキーはあまり呑んだことはないけれど、結構美味しいな。


「宏斗さん、愛実ちゃん。今度は2日間じゃなくて、3日間お休みなんだよねぇ? それってどうしてなの?」

「月曜日が海の日っていう祝日だからですよ。なので、3連休なんです」

「海の日?」

「日本は島国なんで、海に感謝しましょう的な意味で制定された祝日だったと思います。昔は家族で海へ遊びに行ったことがありますが、エリカさんやリサさんはそういった経験はありますか?」

「子供の頃は家族やメイド達と一緒に遊んだことがあるわ。別荘の近くにダイマ家の関係者のみが利用できるビーチがあるから」

「エリカ様が成人になられるまでは何度も遊びに行きましたね。エリカ様に泳ぎ方を教えたときもありました。写真や動画でしか見たことがありませんが、地球の海の方が綺麗な気がしますね」


 ダイマ王星と地球の環境が似ていることは知っていたけれど、ダイマ星人も海で遊ぶんだな。別荘の近くにあるプライベートビーチで遊んだというのが、さすがは王族とそのメイドといったところか。

 すると、愛実ちゃんは急に椅子から立ち上がって、


「じゃあ、実際に地球の海へ遊びに行かない? 3連休だから泊まりがけで! 温泉にも入りたいなぁ」


 普段よりもかなり大きな声でそう言ったのだ。


「おお、いいね! 私、地球の海に行きたい!」

「私も行ってみたいです! 海もそうですが、本場である地球の温泉にも興味がありますね」

「エリカちゃんやリサちゃんもこう言っているんですから、宏斗先輩も一緒に行きましょうよ!」

「夏のボーナスも出たし、遊びに行くのはかまわないけれど、今からホテルや旅館の部屋を取れるのかな。明日だと急だから、日曜日に泊まるとして。できれば、男女別で2部屋ほしい」

「分かりました。海に近いホテルで調べてみますね」


 愛実ちゃんはスマートフォンを取り出して調べ始める。

 一緒に住んでいるエリカさんやリサさんとだけなら、1部屋でも何とかなりそうだけれど、愛実ちゃんが一緒だと男女で分かれた方がいいだろう。

 ただ、リゾートホテルだと、1人部屋がないところもありそうだ。俺もスマートフォンを使って調べてみよう。

 旅行として行くんだから、ここから2, 3時間くらいのところがいいか。夏休みの直前だし、意外と今からでも予約が取れたりして。

 海で遊ぶんだから、できれば海沿いがいいよな。あとは温泉のあるところか。確率を上げるためにも大きめのホテルを調べていこう。


「……3連休ってこともあってか、日曜日も結構埋まってますね」

「近くじゃなくてもいいんだよ。私やリサのテレポーテーション魔法を使って一瞬で行くことができるからさ」

「エリカ様の言う通りです。地球のどこでも一瞬で行けますから」


 そうだ、エリカさんとリサさんの魔法があったんだ。これなら、往復の交通費が浮くのでいいな。旅の道中にも楽しみはあると思うけれど、行き帰りが一瞬で済むのは魅力的だ。


「宏斗先輩。夏海町なつうみまちにある夏海シーサイドホテルってところは、まだ部屋が空いてますよ。海から近いですし、プールや天然温泉もあります」

「夏見町……ああ、昔、友達が家族で旅行に行った話を聞いたことがあるよ。とても綺麗なビーチがあって、近くの大きなホテルに泊まって食事が良かったとか。そのホテルかもしれない。よし、そこにしよう。ありがとう、愛実ちゃん。予約は俺がするよ」

「やったー! 海に温泉だよ、リサ!」

「ええ!」


 エリカさんやリサさんも嬉しそうだな。

 俺もスマートフォンで夏海シーサイドホテルの公式サイトを見る。立派そうなホテルだな。全部屋オーシャンビューなのか。

 日曜日の部屋の空き状況を見てみると……うん、空き部屋がいくつもあるな。シングルと……おっ、トリプルルームがあるな。あとは和室も空いている。


「みんな、和室と洋室どっちがいいですか? ざっくり言えば洋室は家みたいにベッドで寝て、和室は畳の上でふとんを敷いて寝る形になりますが」

「あたしはどちらでもかまわないです。エリカちゃんとリサちゃんの希望で」

「私は和室に興味があります。畳の上にふとんを敷いて寝た経験がないので」

「王宮ではベッドだもんね。じゃあ、和室で!」

「分かりました」


 畳は日本の床材だもんな。畳の上にふとんを敷いて寝るということを一度、体験してみたいのだろう。リサさんって意外と好奇心が旺盛だな。

 シングルと和室の2部屋を無事に予約することができた。そのことに3人は大喜び。

 こうして、4人で日曜日から1泊2日の旅行に行くことが決まったのであった。

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