プロローグ
プロローグはちょっと遊んでみました。
タイトルがアレですが、異世界転生ものは大好きです。
※本作は宇宙が舞台の冒険活劇です。
目が覚めると、見知らぬ場所にいた。
乾いた風が頬を撫でる。身を起こして周囲を見渡すと、オアシスのほとりのようだった。
小さいころに絵本で見た、アラビアの昔話に出てくるような、綺麗な水を湛えた泉。その周囲に、数本のヤシの木。それに、あまり目になじみのない種類の低木が数本。泉の水際の岩場には、苔のようなものもはびこっている。
もう日は高い位置にある。
俺は這いずるように水辺に近寄り、水面に顔を映した。
――ひでえ顔だ。
目元が赤く腫れてしょぼくれた、無精ヒゲの男が映っている。やべえな、この顔は。俺はもう少しいい男だったような気がするんだが。
頭がぼんやりしているのは、寝起きだからってだけじゃなさそうだ。
そもそも、なぜこんな場所にいるのか、記憶があいまいだった。
(俺はいったい、どうしちまったんだ)
とりあえず顔を洗ってから立ち上がり、泉の周りを少し歩くと、すぐにここが砂漠の只中であることが分かった。
ヤシの木の合間から見えるのは、見渡す限りの砂と、その中から頭を覗かせている赤茶けた岩だけだ。
(ここは――どこだ?)
少なくとも、俺はこんな場所に来たっていう記憶が無い。全く知らない場所だ。
頭にズキズキとうずく様な痛みが走る。
身に着けているものといえば、パンツ一枚だけ。そんな恰好で、見知らぬ場所に一人放り出されている状況を、どう理解すればいいのか。
途方に暮れていると、その時。
困惑する俺の頭の中に直接呼びかけるような、甲高い女の声が聞こえてきた。
〈マイク……マイケル・J・マクノウィッチ……きこえますかー〉
マイケル・J・マクノウィッチ――それが俺の名前。
だんだんと意識がはっきりしてくる。
この女の声はなんだ。どこから聞こえてくる? 周囲にはそれらしい人影もないが。
このオアシスの精とか、女神様って奴か? 斧を投げ込んだ覚えはないんだが。まあ、さすがにそれは妄想がぶっ飛びすぎだろう。
それに、どこかでこの声は聞いたことがある気がするぜ。
〈マイク。聞こえていたら返事を〉
「……俺だ」
短い返事を返すと、
〈よかった。目が覚めたみたいね〉
女の声は、親し気な口調でそう言った。
〈どこまで覚えてるかしら、マイケル?〉
そう問われて、正直に俺は答えた。
「わからん。記憶が無い。何もかも真っ白だ。ひどい頭痛もある。今、俺はどういう状況なんだ?」
〈あっきれた。本当にわかんないの?〉
女神にしちゃ、ぞんざいな物言いだ。
〈じゃあ、手短に説明してあげるね〉
記憶の混濁。頭痛。見知らぬ土地にパンイチで独り放り出されている。
これらをすべてを合理的に説明できる、そんな状況といったら――。
〈ゆうべ酒場で酔っぱらってつぶれたアンタは、寝てる間にゴロツキに身ぐるみ剥がされて、砂漠の真ん中に放り出されたのよ。頭痛いのはたぶん二日酔いね〉
やっぱりそうか。




