友達
今日は始業式なので、午前中に学校が終わった。
学校が終わったクラスメイトたちは、部活に向かうか家に帰るかのどちらかだ。
俺と美咲は部活に入っていないので、家に帰ろうとした。
教室から出ようとすると、俺の前に突然人が現れた。
告白してきた女子生徒だ。
「なんだ? 付き合うことはできないぞ」
「付き合えないなら、私と友達になってください!」
女子生徒は、俺に頭を下げる。
「風峰、この子ってさっき言ってた子?」
その通り、俺に告白してきた名前も知らない女子生徒だ。
「ああそうだ。で、友達になってくれと……」
「ダメですか……?」
「いや、別にいいぞ」
そう答えると、女子生徒の不安そうな表情が、喜びの表情へと変わった。
「ありがとうございます!」
女子生徒は、突然抱きついてきた。
「お、おい! 離れろ!」
「嫌ですよー。あ、そうそう。私の名前は角見千春って言います。千春って呼んでください!」
「自己紹介の前にまずは離れろー!」
「あ、そちらは風峰先輩の彼女ですね! よろしくお願いします!」
千春は俺に抱きついたまま言う。
「私の名前は島原風峰だよ。千春ちゃん、これからよろしくねー」
美咲は笑顔で答える。
「いいから離れろー!」
抱きつかれている間、色々な人に見られていたので、恥ずかしすぎて死にそうだった。
「仕方ないですねー」
千春はやっと離れた。
いきなり抱きつかれたので、心臓がものすごく動いている。
「あ、そういえば二人とも同じ苗字ですよね?」
「えっ……」
俺たちが兄妹だということは隠している。
だから、俺と美咲が兄妹だとバレたくなかった。
「まさか……」
「な、なんだ……」
「結婚を予定してるほど仲が良くて、もう苗字を変えちゃったとか……」
「そんなわけないだろ!」
俺は突っ込む。
「え、じゃあ美咲先輩と結婚する予定はない? じゃあ、私と……」
「付き合わない!」
「私なら結婚を前提に付き合いますよ!」
「だから、俺は美咲と付き合ってるんだ! 何を言われようが美咲と別れたりはしない!」
「風峰……!」
美咲が、後ろから抱きついてきた。
俺は驚いて、大きな声を出してしまった。
「な、なんだ美咲!」
「風峰がそこまで言ってくれるなんて……風峰大好きだよ……!」
美咲の抱く強さが強くなる。
教室とその周辺には俺たち以外いなかったので、誰かに見られることはなかった。
「わかった! わかったから誰かが来る前に離れてくれ!」
美咲に離れてくれと言っていると、千春が再び抱きついてきた。
「なんで千春はまた抱きつくんだ!」
「いいじゃないですかー誰もいないんですし」
「ダメだ! いいから二人とも離れろー!」
しかし、二人は離れない。
俺は春花と秋葉が来るまでの数分間、ずっと抱きつかれたままだった。