三人でお出かけ
千春は暗い部屋で布団に入りながら笑っていた。
大好きな風峰と出かけに行けるのが嬉しいのだ。
千春はどんな感じで話すか、どういう行動をするかという内容のメモを、携帯のメモの機能を使い、入力し始めた。
今まで異性と話したことがほとんどない。
それどころか、同性ともあまり話したことがなかった。
だから、どんな感じで話せばいいかなどを考えておかないと混乱してしまうのだ。
「これでよしっと……」
千春は携帯を枕元に置く。
「できれば二人っきりで出かけたかったけどな……」
千春は美咲に嫉妬していた。
もし美咲がいなければ、考えていた。
大好きな風峰の隣にいるのが羨ましい。
そう思っていた。
「よしっ、と」
俺は支度を終え、家を出る。
家の前で美咲と千春が待っていた。
俺たちは早速美咲が行きたいと言っていたレストランに行くことにした。
「うーん……」
期待していたが、微妙だった。
不味くはないのだが、美味しいとも言えない。
「ごめん二人ともー!」
美咲は謝る。
「仕方ないですよ。初めて行ったんですから」
千春は言う。
このままでは微妙なものだけ食べて帰ることになってしまうと思った俺は辺りを見回した。
「じゃああそこに行こうぜ」
俺が指差したのはゲームセンターだった。
二人は俺が指差したゲームセンターを見る。
その時、千春の体がピクッと動いたような気がした。
「行きましょう!」
千春は突然俺の手を握った。
そして、そのままゲームセンターまで走った。
「私、あれやりたいです!」
千春は、隅っこにある格闘ゲームコーナーを指差した。
椅子に座り、ゲームを始める。
「お、これ懐かしいなー」
「あー、懐かしいねー」
「やったことあるんですか!?」
「ああ、昔にちょこっとな」
里奈先輩の家に同じゲームがあったので、一緒にやっていたのだ。
里奈先輩が強すぎて全く勝てなくてボコボコにされたことをよく覚えている。
「千春はこのゲームやったことあるのか?」
「まあ、少し……」
話していると、ゲームが始まった。
相手はコンピューターだ。
千春がキャラクターを選ぶとゲームが始まった。
俺と美咲は千春のプレイを見る。
千春は少しやったと言っていたが、嘘だろと思うほど強かった。
二試合連続で勝利、コンボも繋がっており、体力もほとんど減らなかった。
「……本当に少しか?」
「本当です! 家で百時間ちょっとやった程度です!」
千春の言う通り、百時間はやり込んでいる人にとっては少しだ。
「あっ、誰かが乱入してきました」
乱入とは、同じ店のプレイヤーが他のプレイヤーに挑戦することだ。
千春は今使ったキャラクターを選び、試合を開始する。
「……強い!」
相手プレイヤーはかなりの強敵だった。
だが、千春はなんとか一勝する。
「……なんか見たことある動きだな……」
「そうだね……」
千春は二回戦目で負けてしまったが、三回戦目で勝つことができた。
「まさか……!」
俺は千春と対戦した人を探す。
相手プレイヤーは千春の反対側にいた。
「里奈先輩! 美奈江先輩!」
「あれ、風峰くん何してんの?」
「あんたってゲーセンに来るのね」
どこかで見たことがある動きだと思ったら、里奈先輩が昔俺と美咲とやっていた時に見た動きだった。
里奈先輩に負けすぎて、記憶に残っていたのだ。
「え、まさかさっきの風峰くん? いつやり込んだの?」
「えっ、いや、やっていたのは俺じゃなくて……」
「風峰先輩、何してるんですか?」
千春がゲームの筐体から顔を出す。
「もしかして、あの子?」
美奈江先輩が言う。
「風峰先輩、知り合いですか?」
「ああ、一つ上の先輩の里奈先輩と美奈江先輩」
「どうもー」
里奈は手を振る。
「角見千春です! よろしくお願いします!」
千春は挨拶をし、里奈先輩の隣の席に座る。
「千春ちゃん強いんだねー」
「もしかして、さっきの対戦相手ですか?」
「そうだよー」
「私そのキャラクターあまり使ったことがないんですけど、操作難しくないですか?」
「慣れれば余裕だよー」
二人はゲームの話を始めた。
そして、里奈先輩と千春の格ゲートークが続いた。




