風峰の秘密
「もうやめてくれよ。いきなり抱きつくなんて」
十分以上抱きついてきた千春に注意をする。
「わかりました! あ、先輩に聞きたいことがあるんですけど……」
「なんだ?」
「先輩の誕生日を教えてもらえませんか?」
「七月十日だが……。急にそんなこと聞いてどうしたんだ?」
「好きな人の誕生日くらい知っておいた方がいいかなーと思って」
千春は笑う。
しばらく千春に色々質問され、それに答える時間が続いた。
「すまない、トイレ借りるぞ」
「あ、いいですよ」
トイレに行きたくなった俺は、千春の部屋から出た。
「先輩……携帯置いてってくれた……!」
千春は、風峰の携帯を手に取る。
画面にはパスワードの入力画面が映っている。
パスワードを入力しなければメールなどを見ることはできない。
しかし、千春は間違わずに入力することができた。
「よかったぁー。誕生日聞いといて」
千春が風峰に誕生日を聞いたのには二つ理由があった。
一つは、先ほど言ったように知りたかったから。
もう一つは、携帯のパスワードはおそらく誕生日だろうと思っていたから。
しかし、パスワードが予想できても、風峰をどこかに行かせ、更に風峰の携帯を自分が触れる状態にしないと試すことができない。
だから、千春は風峰が飲み物を飲み終わったらすぐに注いで、大量に飲み物を飲ませ、トイレに行くようにした。
そして、さっき風峰に携帯の壁紙を見せてくれと頼んだ。
その時に携帯をポケットから出させた。
その後、風峰は自分の携帯をポケットに入れず、テーブルの上に置いておいた。
そのおかげで、風峰は携帯を見ることができた。
「全部上手くいった……!」
千春は、風峰の携帯に届いたメールを見始めた。
すぐに戻ってくると思ったので、内容が気になるものだけ見ることにした。
届いたメールを見ていると、気になるメールがあった。
美咲からのメールだ。
千春は本文を見る。
「ふーん。そうだったんだぁ……。いいこと知っちゃったなぁー」
メールの内容は、風峰たちが美咲の家に集まった時のもの。
島原兄妹の記念パーティーをしようよ。
メールにはそう書かれていた。