循環細胞
昔、ある科学者が造ったといわれている細胞は、今や世界に広がって、大戦乱を引き起こしている。
循環細胞と名付けられたそれは、自己増殖と自己死滅を際限なく繰り返していく、新しい細胞だ。
一定数になると、自動的に死滅する。
それが発表当時の話だった。
周囲の環境に応じてその数は変わるが、無限大に増えることはない。
そうも言われていた。
いろいろな実験を行うことができるという触れ込みで、全世界のいろいろな研究機関がその細胞の研究をし始めた。
だが、どこかの研究機関が処理をすることなく捨ててしまったことから、破滅は始まる。
世界は、シャーレよりももっともっと大きい。
そんなところに、どこまでも増え続ける細胞が現れた時、細胞は無限ともいえるほどの分割を始まる。
それが人類を襲うほどに栄養を求めだすのには、時間がかからなかった。
人々は、初めのうちこそ何があったか分からなかった。
だが、だんだんと事情を理解し始めると、その細胞を抹殺する方向へと進む。
それが今だ。
きっと遠からず将来に人類は勝利するだろう。
それがいつになるかは分からないが、きっとそうだ。
そうに決まっている。