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ある寒い日に

短い上にまだ内容といえる内容はないです。

「先輩、これ渡しておいてください」


1通の封筒がそっと差し出された。白地に所々うっすらと水色を染めたシンプルな封筒。

この封筒の中になにが書いてあるか、なんて愚問だ。私はすでにこの中身を嫌と言うほど知っている。

私の友人に宛てたラブレター。愛を告げる手紙。

いや、目の前の艶めく黒髪と端正な和風の顔立ちを持つ青年には恋文と言った方が相応しいかもしれない。

「先輩?」

「あぁ、わかった。渡しておく。」

どうして受け取らないのか?と訝しげに眉を顰め、首を小さく右に曲げた彼をこれ以上不快にさせないために想いの詰まった手紙を慌てて、けれどもそれを悟られないように受け取った。

「先輩、いつも思ってたんですけど、こんなところにいて寒くないんですか?」

「寒いよ」

「だったらなんで屋上なんかにいるんです?こんな真冬に」

「理由なんて、ない」

そう理由なんてない。彼に言える理由なんて、ない。

彼は理解出来ないという顔をして私の顔を覗き込む。私を真正面から覗き込む彼の、陽の光を受けて黒曜石のようにキラキラと光る瞳が綺麗だ。重苦しい想いに縛られ続けている私には少し眩しい。彼の目の光源が友人への恋である事実が胸を締め付ける。


見たくない。見ていたくない。


私はそっと立ち上がった。

冬の風が強い日特有の控えめだけれど美しい青空と街並み、そしてサッカー部が使用するグラウンドが視界いっぱいに広がる。

そしてこの古風な後輩の想い人を見つけた。

「あ」

私の目線を追った青年は嬉しそうにはにかんだ。それはとてもとても嬉しそうに。それは愛おしい者を見る目だった。それはそうだろう。彼が恋い慕う、私の友人を見つけたのだから。

ギリっと奥歯を噛み締める。こうでもしていないと叫び出しそうだ。


どうして彼女なの

なんで私じゃないの


くだらない。こんな醜い私を彼には見せられない。勿論友人の明里にも。

サッカー部のマネージャーをしている友人に嫉妬してるなんて認めたくないし、知られたくない。彼女は大事な友人。こんなつまらない感情で失いたくない。それに勝手に後輩を思って、振られてなんて嫌。そんなことになるくらいならこの感情を殺した方がましだ。

だから今日もこの汚くて醜い感情を心の奥に放り込み、綺麗な私で厳重に封をする。

この秘めた想いが決して表に出ないように。

「ほら、もう明里来てるみたいだよ。早く部活行かなくていいの?」

「言われなくても行くつもりでした」

「だよね。はい、じゃあ、行ってらっしゃい!」

手紙を持っていない手でひらひらと手を振る。

彼は一瞬だけ何か言いたそうな表情をしたが、くるりと私に背を向け出口へと向かった。

「先輩、手紙の中身見ないでくださいね?」

奏くんはそう言い残し、あの子の元へ走って行った。

黒い短くも長くもない髪が速さを示すように宙を舞う。


「見るわけないじゃん・・・」


明里への想いが詰まった手紙を見て一体どうなるというのか。自分が惨めになるだけじゃない。

すぐ近くにある鞄を手繰り寄せ、小さなファイルを取り出し手紙をしまう。

このファイルも随分分厚くなった。明里渡すのが怖くて渡せなかった手紙が10通くらい入っているから。

その全部が奏くんから明里への恋文。

表面に名前こそかかれていないが、間違いない。

そろそろ覚悟を決めて明里に手渡さねば。

その時、私のこの奏くんへの恋心を殺す日になる。


「なんで好きになっちゃったんだろうな」


明里に笑いかけてる奏くんの笑顔がやっぱり悔しいけど大好きだと思った。


悲恋にするかハッピーエンドにするかまだ何も考えていません。

ゆっくりでも更新していくつもりですので、よろしくお願い致します!

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