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第86話:凶報4

 おはようございます、暁改めアイラです。

 昨日は初めての戦争で興奮してしまいなかなか寝られなかった

 そのせいか、いつものように一人でに目覚めることは出来ずに、朝から騒がしい声で目を醒ましたのだ。



 目をあけると昨日の静寂が夢幻の様に感じられる程の喧騒。

 特にアイリスの狼狽ぶりは胸が痛くなるほどだった。


 手早く装いを正しつつ皆の声を聞けば、どうも第3遊撃隊の面々が帰還してきたらしいのだけれど・・・



「おはよう、何かあったのかな?」

 ボクが声を掛けると言い辛そうに、いや本当に辛そうに、ユーリがボクの髪を撫でながら答えてくれた。


「アイラ、まだなにもわからないから、落ち着いて聞いてほしい」

 その瞳は見たことがないほどの不安感を浮かべてボクを射抜く

(やめてよ、君にそんな目でみられたらボクまで不安になる)


「第1、3遊撃隊がまだ帰還していないんだ」 

(!?)

 その 言葉の意味するところは・・・

 体温が失われていく錯覚、出来事が走馬灯の様に頭のなかを駆け抜けていく

 

 隊が分けられて『マスターと一緒が良かったですのに』と拗ねていたトリエラのしょんぼりした耳も

 トリエラをなだめていたエッラの聞きなれた優しい声も

『アイラちゃん先輩事件です!隊が離れちゃいました!』なんていつも伝令をしてくれた感じに真顔でおどけるアミのユーモアセンスの低さも

 いつもしっかり者の様に振る舞う優等生だけど、本当はちょっとポンコツでお茶目なフローネ先輩とシア先輩主従のすました笑顔も

 無愛想で余り話さないけれど本当は世話焼きで優しいデメテル先輩の不器用な笑顔も

 いつもふわふわした笑顔を絶やさず、でも実は毒舌もはく、得体が知れない強さでどうやったて死ななそうなシリル先輩の余裕の表情も・・・・


「嫌だ・・・嫌!!」

 下着同然の薄着、具足もつけないままで部屋を飛び出そうとするボクをユーリが腕を掴んで止める

「アイラ落ち着いて!」

 ユーリは優しい声でボクを呼ぶけれど

「放してよ!邪魔をしないで!」

 ボクはユーリの腕を振りほどいてドアに走る


 すると後ろから再びぐいっと腕を掴まれて引っ張られて・・・パシンと小さな音が響いた。

 頬に軽い痛みが走る!

()っ」

 それからすぐに口に押し当てられるユーリの唇

「んっ!?んぅ・・・」

 舌を挿し込まれて急速に頭が冴えてくる、ボクにとってユーリのキスはドキドキするけれどすでに日常の象徴だ・・・落ち着きを取り戻したボクをユーリが優しく抱き締めて背中に回された手がトントンと肩甲骨の間辺りを叩く。


「アイラ、まだなにも確かめてない、まだ帰還していないだけ・・・」

 不思議なことにユーリに言われれば不思議とそんな気がしてくる

「うん・・・ボクたちで確かめよう・・・。」

 そのためにもまずは腹拵えからだ。

「アイリス、ボクたちが、エッラたちをみつけよう。きっとお腹が空いてるから、ご馳走をもって迎えにいこう!」

 まだ混乱しているアイリスを今度はボクが抱き締める。

 きっとアイリスも大丈夫、一緒にエッラたちを迎えにいこう

 そう思ったのだけれど・・・。


「ごめんねアイラ・・・きっとエッラたちは無事だって私も思うよ?思うけど、もしそうじゃなかったら、もしそれを見てしまったら私はもう立ち上がれないよ!もう、頑張れないよ・・・ごめんな・・・さい、ごめん・・・」

 アイリスが力なく頭を垂れて許しを請う。

 アイリスはアイラボクとは違い、ちゃんとした五歳の時に母の遺体を、男の欲望の捌け口となり惨たらしく首を手折られたそれを見ている。

 瞬間こそ見ていないものの、敏いアイリスはある程度を悟っただろう。

 年を重ねて日常生活に困らない程度には慣れてきたものの始めは男の人も苦手でボクの後ろに隠れていた。

 誰がアイリスを責められようか・・・でもボクはアイリスの姉だから、今手を引っ張らないといけないんだ。


「アイリス、無理にとは言わない、ただいまならアイリスの治癒魔法なら助かるかも知れない皆がいるかもしれない、もしそこにアイリスがいたら・・・ってなってもボクたちはアイリスには伝えない、でもきっとアイリスは悩むことになる。」

 アイリスは無言でボクの言い訳ワガママを聴いている。


「そうなったらきっとアイリスは立ち上がれない、ついてきてそれを見てしまったてもいつかは立ち上がれる・・・、だけど後悔に囚われたらきっともう立ち上がれない!だから今傷ついて欲しい、ボクと一緒に傷ついてほしい・・・何があっても立ち上がらせるって言えないお姉ちゃんでゴメン、一緒に傷つくくらいしか出来ないお姉ちゃんでごめん!」

 言葉はお腹のなかから次々溢れてくる、その言葉がどういう意味なのかわからないままで流れ出ていく。

 ひとしきり叫んだ後で項垂れるボクのほほをアイリスの小さな指が撫でて、涙を拭う。


「お姉ちゃん、いつまでも支えにすら為れない妹でゴメンね、涙を拭く位しかできないかもしれないけど大好きなお姉ちゃんと一緒に傷つかせて欲しい」

 アイリスの表情からはまだ不安の色は消えていないけれど、 涙を流しながら浮かべた笑おうとした顔には迷いがなかった。


 腹ごしらえは軽く済ませて、代わりにボクとユーリの収納にたくさん温かいものをつめた。

 それからボクたちは起床後30分ほどで北側の捜索に向かった。


 北側の王国沿いは盆地の更に北に当たるツェラー渓谷に面していて、帝国側はやはり盆地の北側に当たるヘドル山のふもととなる。

 昨日初めに帝国側への砲撃を行ったのは、渓谷か山を抜けてきた帝国の工作部隊だった可能性がある。

 先に仕掛けたのは王国だというあまりにも軽いいいわけのために。


 そうだとすれば、あの王国よりの位置から急に魔導砲による攻撃が可能だったのもわかる。

 射程に優れる魔導砲は物理バレルによる魔砲攻撃なので装備の重さがある。

 やすやすとあそこまでの距離に侵入はされまいが、昨日聞いた様に味方側に内通者が居たとなれば話は別だ。

 更に、そうとなればこの辺りの森にはまだ帝国兵が潜んでいる可能性がある・・・エッラたちを探すにしたって、ボクたちは自分の身を護りながらで慎重を期さねばならない。


 南側の森と生えている木や動物の種類は同じだけれど、地面の硬さが違う、北側はどうも石が多い様だ。

 昨日の砲撃が始まった時間からすれば、シリル隊が戦闘状態に入るのはこの辺りからだ。

「皆、注意して、ココからは戦闘があったかもしれない区域だから、手がかりを見つけたら教えて。」

 マガレ先輩が捜索の指示を出した。

 時刻は朝7時ほどになっている。


 盆地のほうの戦闘は・・・今は睨みあい。

 また何があって戦闘が始まるかわからないけれど・・・。

「マガレ先輩!みんな、こっちへ!」

 一番渓谷側を探していたユーリの声が、マガレ先輩を呼んで。


 帝国側を警戒していたエイラとボクもユーリのほうへゆっくり移動を始めた。

 王国側を探していたアイリスとナディアもユーリのほうへ行こうとしたけれど。

「アイリスとナディアは王国側で待機、安全路の確保をお願い」

 ユーリが慌てた様に待機の指示を出す。


 やさしいユーリはアイリスに気を使ってくれたのだ。

 渓谷と盆地北の森の境目、そこには大量の王国兵の死体が転がっていた。

 

本日(10/23)は連載2ヶ月突破の日ですが、特になにも用意してませんでした。

読んでくださってる方々ありがとうございます。

読んでくださる方がいるというのは、モチベーションが上がるものなのですね。

コチラで書き始めるまで知りませんでした。

今後とも完結まで連載を続けていくつもりですので、見捨てられない様にがんばりたいと思います。


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