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第78話:足音

こんにちは、暁改めアイラです。

思わぬ元日ノ本人仲間との出会いから1ヶ月が過ぎた。

大水練大会も無事に終わり3年連続優勝を決めさせといただいた。来年度の中央シュバリエールの監督生を決める投票も平行して行われ、無事ボクが来年度の監督生となった・・・・。

引き継ぎとして行っていた資料作成が全て無駄になったけれど、次の引き継ぎの時はもっとうまく早く出来るだろう


件の3人の同士とは頻繁に集まり会話をする様になった。

特に妹分になったアイビスはホーリーウッド屋敷にも足しげく通ってくる。

初めてラピス達が来たときに用意したおやつの中に醤油味のジャーキーを混ぜて置いたところ

3人がいたく気に入ってくれた


「アイラちゃん先輩!これもしかして!」

一応貴族の子女たるラピスが干し肉片手に大興奮と言うのは大変にはしたない。

「ラピス様!いけません身内だけとは言え他家のお屋敷ではしたのうございます!」

ヒースがラピスを窘めるけれど。

「【いいから、環も食べてみろよ!】」

日ノ本語で喋りながらラピスがヒースの口にジャーキーを差し込むと・・・・

「うわ!うそ!懐かしい味!」

ヒースも興奮気味にパクつく


「アイビスはどうですか?」

「ムグムグ、うん、おいしい・・・よ?ムグムグ」

うん気にいっている様だ

ボクの私室に外のお友だちを入れたのはこの3人が初めてで、最初のティーセットなんかはトリエラやナディアに用意してもらったけれど

今は4人だけのティータイム、

ティータイムのお茶請けにジャーキーはどうかなとも思ったけれど、喜んでくれてよかった。


「西の一部の地域で、味噌と醤油によく似た調味料が生産されていて、それを改良したもので味付けしたのがこのジャーキーです。」

ジャーキーは保存もそこそこ効くし、口寂しい時に食むと落ち着くので良く作っている

少しお土産屋に持たせたら、感激していた。

 ソレからも時々集まっては、だしをひける食材が少ないためどうしてもちょっと違う味噌汁もどきをつくったり卵かけご飯を食べたりした。

はじめはやはりおどおどしていたアイビスも少しずつ屋敷の人間と打ち解けてきていて、とくに南進候の寄騎のコロネとは仲がよくて、たまにコロネの部屋に泊まっていく様になった



季節が秋になると4年生の中には、春からの任地が決まる者もチラホラ出てきた。

フローネ先輩とシア先輩は勿論西側に迫り出した王領ザクセンフィールドだ。

ホーリーウッド市ー王都クラウディア間では遠回りになるので通らない場所だけれど、ホーリーウッド市とは割りと近いため交流は可能だ

卒業してもたまには会ったりしたい

西シュバリエールの監督生もボクが引き継ぐことになっているので来年過労死しそうなんだけどメイドが優秀だから大丈夫かな?


東はおとなしいままだし、他の小さな騒ぎや他種族に対する偏見も、目立った問題に発展しなかった。

ただ平穏な毎日を享受して、学友やかわいい後輩たちとたわむれて・・・

西はボクの後はアナに引き継ぐ予定なので、彼女にもフローネ先輩と一緒に今のうちからいろいろとやり方を教えている。


アナは西の寄騎子爵の庶子だ。

 去年軍官学校でいい成績を修めているので近々本家に入り、縁談を探してもらえる予定だと喜んでいた。

この上監督生ともなれば子爵の鼻も高いだろう


「キリもいいし、今日はこの位にして上がりましょうか。」

ペンを置き、書き終わった書類を軽く乾かしながらフローネ先輩が今日の業務終わりを告げる

「はい、フローネ先輩」

「ま、まってください、この1枚があと20秒くらいなので・・・!」

先輩たちをなるべく待たせない様にとアナは慌ててしまう。


「アナ、慌てなくていいよ。ゆっくり正確にやろう、せっかくボクもフローネ先輩もいるんだから明日には余裕で終わるよ」


「そうですよ、私が長女だとしたら、アナは末っ子なんです、一番ゆっくりで普通なんですから、慌てる必要はないですよ」

日没がやや早くなってきているので、女の子だらけの我々は早めに帰らないといけないからね、つい慌てるのもわかるけれど


「お、終わりました!」

うんミスも無さそうだし、中々早いね。

「じゃ終わり、鍵は私とシアで閉めておくから、みんなは先に帰ってていいですよ。」

一番学年も年齢も上のフローネ先輩たちが幼いボクらを気遣ってくれる


「それでは御言葉に甘えて、アナはボクたちが送ってくからね」

アナは寮生で一人で帰ることになる

 まだ夕方5時を過ぎたくらいで明るいとはいえ下校時間からはズレて、人通りが少ない

 寮が学校から近いとはいえ、女の子一人で帰すわけにも行かない。

 幸いボクたちホーリーウッド邸組は人数が多い、この監督生室にはボクとエイラしか居ないけれど、サロンにはユーリ、アイリス、ソニア、エッラ、ナディア、トリエラも待ってくれている。

 ユーリを含めて美少女ばかりとはいえ、8人も集まれば不審者も近づいてこない。


「いつもすみません、アイラちゃん先輩には足を向けて寝られないです。」

 最初のころは断っていたアナだったけれど、断っても無駄だということを教え込んできたので、今は素直に送られてくれる。

 サロンに行くとコロネとフィレナ、アイビスとフランルージュも居た。

 どうも遊びに来るみたいだ。


「遊びに来るのはいいけど、明日も学校だよ?大丈夫なの?」

 問いかけるボクに

「だ、だいじょうぶ、明日の準備もしてきたから・・・。」

 とはにかんで笑うアイビス。

 大丈夫というならとめるつもりもないけれど。

「夜更かししちゃダメだからね。」 

 先輩としてコレだけは伝えておかないとね。


 それからアナを寮まで送る。

 アナを送りどけたあと、もう一度学校の敷地内を通り抜けるために踵を返すと大通りで足音が聞こえた。 見れば城の方向へ早馬が走っていた

 王都内の道は、石畳になっているから馬には辛そうだね。

「今の、ラピスちゃんのおうちの、早馬だったね?」

 ラピスちゃんのおうちの、なんて可愛い言い方をされるとなんだか子どものお遣いみたいだけれど、北伐候家からの早馬だなんて結構大事じゃないのかな?

 気になりはしたものの、一学生の身分のボクたちが早馬を止めたりなんて出来ないし、そのまま早馬を見送り予定通り邸に帰った。


 最近11歳だというのに、書類仕事ばかりで眼疲れと肩こりに悩まされている・・・。

 ソレを自覚したのは先日の大水練大会のあとのことだ。

 いつもよりも運動をたくさんしているはずなのに、心地よい程度の筋肉痛しかなかった。

 あれ?じゃあこのところの肩こりってなんだろう?って考えたら、書類仕事しかなかったのだ。

 思えば、肩こりを感じる様になったのも2年の半ばに、監督生の仕事を手伝い始めてからだった。

 部活動みたいで楽しいし、書類仕事自体はいいのだけれど、11歳からそれで肩こりとかは笑えない。

 ということで、マッサージの心得もあるエイラにお風呂で体をもんでもらうのだけれど・・・。


「ひぅっ・・・・、ふぁぁ・・・」

 エイラはマッサージが非常に上手い。

 上手いのだけれど、肩や背中をもまれているだけなのに、変なところから声が出てしまうのが恥ずかしい。

「ちょっとアイラァ・・・悩ましい声出すのやめない・・?」

 ソニアは気まずそうに呆れ顔。

「アイラちゃん気持ちよさそぅ・・・コロネもして欲しい・・・かもです。」

 コロネはボクの顔を間近で観察中。

 ボクはどんな顔になってるかわかったものじゃないのでちょっと恥ずかしい。


「コロネ様、コレはアイラ様が非常にお疲れなので、気持ち良いのです。コロネ様はお疲れですか?」

 エイラがいつもの起伏の少ない淡々とした口調でコロネにたずねる。

 するとコロネは心外だとてもいいたげな表情になって。

「コロネだって南の監督生なんですから、お仕事いっぱいしてるんですよ!」

 そういって薄い胸を張る

 コロネはボクより1学年上で実年齢で言えば2年度分年上だけれど、身長はボクより4~5cm高い程度で体格も近い幼児体型だそして、幼児体型な分胸よりもお腹が少し目立つ、いくら食べても太らないのはうらやましいけれど、元がコレじゃあちょっと・・と思ってお腹をなでてやると

「ひゃん・・・アイラちゃん、くすぐったいよぅ」

 と甘えた声をだす。


 次にやさしく肩に手を回してやり軽く揉んでみる・・・。

「・・・・?」

 どうしたの?と言いたげな顔でボクのほうを振り返るコロネは何も凝ってない・・・すごくやわらかな肩。

 更に調子にのって脇の下や胸、腰、太ももといろいろ触ってみるけれど特にどこも凝っていない。

「コロネはどこも凝っていませんね?」

 とがっかりした感じにボクがいうと


 コロネのメイドのフィレナが

「コロネ様は書類仕事をさせてもほとんどおできにならないので、私とアンリエット様、カルナさんとで大体終わらせてしまうのであまり疲れていらっしゃらないかと。」

 とにこやかに言う。

「ちょっとーフィレナァ」

 ばらさないでーといいたげに口を尖らせるコロネ。

 プンスコした表情がとてもキュートだ。


 小道具なんかなくったって、裸でも皆と居るだけで楽しいし

 ボクは恵まれている、大事な可愛い婚約者を初めとする家族たち、今は近くにいないけど姉やお爺様たち。

 それにとてもすばらしい学友に先輩後輩たち。

 こんなにたくさんの笑顔や裸の付き合いが出来るほどの信頼感と安心感、ソレがアイラの生活にはある。

 毎日こんな日が続けば油断もしようってものだ。

 ボクはボクの幸せを守るために最大限の努力をするべきだった。

 大事そうな早馬がお城に走ったのを見たならお城までついていくべきだったのだ。


 この日、楽しい仲間たちとの時間を危なくする報せが北伐候から王都にもたらされた。

 ルクスに不穏な動きあり、その知らせがボクの耳に届くのはもう少しあと、翌日の昼のことだった。

明日おそくなりそうなので更新できるか怪しいです。

風邪はまだ治ってません、なんででしょうかね?

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