第1話:玄室
まだ投稿のシステムがよくわかりません
失敗してたらごめんなさい。
第1話 玄室
みなさんこんにちは、こんばんは、かも知れないけれど
僕、近衛暁は大型の黒い狼型獣との戦闘で致命傷を負い
15年に満たない生涯を閉じた様だ
最愛の婚約者、桐生神楽が僕の目の前で食い殺されるという事態はとりあえず避けることができた
(あの後神楽が無事に居てくれたのだとしたら、もう悔いはないのだけれど。)
あぁいや、僕と両親が死んでしまって、孤独な身の上になってしまった7つ上の姉照子のことももちろん気にはなっているが、大学で出会った下級武家の男と結婚を前提に付き合い始めたといっていたからきっと大丈夫だろう・・・。
死んで見るのは生まれて初めてだけれど、この後どうなるのだろうか・・・すべての感覚はなくて、思考だけがどこかに飛んでいく感じがする。
(これが死ぬということだとしたら、もしこれから永遠にこんな状態が続くのだとしたら地獄だな・・・)
真っ暗などこかに居る
そんな気がしたのはいつからだったろう
僕が死んでから1時間か2時間か、あるいは何ヶ月もたっているのか確かな判断基準はないのだけれど、とにかくいつの間にか体の感覚があるのだ。
目は開いてるのか閉じているのかわからないけれど、視界は暗い
体はある、という感覚がするだけで動かすこともできない
呼吸はできず、声も出せないが息苦しいとい訳ではない
体中を暖かい何かで包まれているが何かは分からない
ただ今までなかった体の感覚は刺激的だった。
ただ暖かい、暗いというだけなのに、不思議と穏やかな気持ちになって眠れる様になった。
また眠りから目が醒めた。
といっても周囲は相変わらず真っ暗、というか目も開いているかもわからないのに目が醒めるといっていいものか。
ただなんとなく足は動かせている気がするこれは最近覚えた感覚だ。
つい最近まで動かせている気がする部分なんてなかった。
ただ漫然と思考し眠り目覚めることを繰り返してきた。
少し嬉しくなって思い切り足をかき、4回目に何かを蹴った
(蹴った!?)
蹴るものがあるということは僕にはやはり体があるということだ。
そして声が聞こえた
「・・〜・・・・・・・〜っ!」
声なのはわかるのだ、がほとんど聞こえないし意味も通じない。
それからもう2回壁?を蹴ってみたがその度に「〜!」「〜♪」と
意味の通らない声が聞こえた、心なしかはしゃいでる様な声だ。
それから少しの間声が聞こえないか耳を欹てたが、僕にそれ以上壁?を蹴る体力がなく、蹴らないでは声も聞こえず、気がついたら眠ってしまっていた。
そんな日が何日も続いた、僕は壁を蹴り、女の子の声がする。
もう気づいている、此処は胎内なのだと、生まれ変わりなんてものを自分が体験するとは思っていなかったが、生まれ変わりの存在自体は朱鷺見台でもすでに実在が確認されている、何も不思議なことなんてない・・・。
不思議な感覚だ。自分の体が自分のものでないみたいだ。
事実今の体は近衛暁のものではなく、名前もわからない生まれたての赤子のもので、まったく自由にならない。
さらに不思議なのは、いつの間にか寝てしまうことや、自分の意思とは関係なく体が動いてしまうことだ。
「〜〜♪」
さっきから聞き取れない言葉を話しながらピンクブロンドの8歳〜10歳くらいの女の子が僕を覗き込みニコニコと僕の口元に指を出してくる。
そして僕は抗えずにその指を吸って仕舞うのだ。
そうして女の子はまたキャッキャと笑い僕は悔しい思いをする。
女の子の話している言葉は、僕の知るものではない様だ。
少なくとも日ノ本語、ブリテン語、ゲルマン語ではない、少なくとも僕の知る限りの地球の言語とは違う様に感じる。
地球でないなら最悪クレイドルやネビウスであれば朱鷺見台に帰還を果たした者もいるので、何年かかろうとも神楽がどうなったかだけでも知りたいと思うのは、婚約者だったものとしては当然の感情だろう。
(それにしてもかわいい子だ)
目の前の女の子は恐ろしく整った顔立ちをしている。神楽やその姉妹たち、十家の樹様なども間違いなく絶世の美少女であったが、この目の前の童女も間違いなく将来傾国レベルの美女になるだろう。
光源氏でなくとも、童女を自分の手元で育みたいと思ってしまう、そんな美少女だ。
この子が今の僕の姉だとすれば、どれだけ間違っても僕が不細工に生まれているということはなさそうだ。
少し安心する。
せっかく生まれ代わりなどという稀有な体験をしたのだ。
前世よりも不細工に生まれて悲しい思いはしたくない。
(少しくらいなら努力で何とかするけどね)
ところで僕はどうも双子として生まれたらしい
時々隣から泣き声が聞こえてくることと、その後このかわい過ぎる姉や美人過ぎる母が誰か赤ちゃんを抱っこしているのが見えるからだ。
僕はまだ寝返りもうてないし、目も遠くまで見えているわけではないのだがそれ位はわかった。
美人過ぎる母は僕も扱いに困った。
姉の様な大きな娘がいるのだから、最低でも20半ばくらいにはなっていると思う。
だがこの母は前世の姉と変わらないくらいの若さに見える。
そんな若々しい母が今また僕の前に母の象徴たる張り詰めた二つの山をまろびだし僕に突きつけるのだ。
僕も前世では多感な思春期、婚約者までいながら童貞のまま死んでしまい、女性の肉体への憧れの様なものが大いにある。
それでも母の愛として向けられたこの乳房をその様な肉欲に当てられて本能のままむしゃぶりついてしまえば僕は動物となにひとt・・・・
(うま!!母の愛美味しい)
いくら理性で押さえつけたところで食欲に勝ることはできないのだ。
僕は最後にはいつも母の愛を貪る。乳房を手で押すと乳の出がいいので手で押さえてその柔らかさと張りに心地よさを覚えながら。
(自己嫌悪・・・。)
最近はいはいが出来る様になった。
四つんばいとはいえ、移動手段を手に入れた僕は子供部屋の中だけとは言え自由に動きまわる様になった。
このころになると僕は自分の家族の構成もわかった。言葉の意味が少しわかり始めたからだ。
赤ん坊の吸収力のためか、聞き取りにより言葉の意味は通じる様になってきた。
もちろんまだしゃべることも字を書くことも出来ないが、この家はウェリントンという家で家長たる父エドガーと、美人で若い母ハンナ、可愛すぎる姉サークラ、イケメンになることが予想される美兄トーレス、そして僕と半身の妹アイリス、これが僕の新しい家族。
ボクはアイラ・ウェリントン。
ボクは双子の女の子の姉の方としてこの世界に生を受けた。
僕が1歳になる前頃から母も仕事に出る様になった。
仕事といっても農業や機織の様で村の中での仕事らしいが、収穫に追われて仕事に復帰した様だ。
大人たちが農業に追われる中15歳までの子どもたちは村の教会の一室に集められて、大きな子が小さな子の面倒をみながらシスターの指導の下お勉強もする。
大きい子たちは農業や狩の手伝いをすることも多い。
保育所と学校の間の様な施設ということだね。
現在のメンバーは以下の通り
アンナ・ブロッサムは16歳で昨年まで子ども組だったハンナの従妹で結構な美少女、現在はシスター見習いとして、教会の神父マディソン・スクエア(78)の元で修行中で子どもたちの先生役をしている。
トーティス・ギュスターは15歳の逆毛の少年で現在のウェリントンの子ども枠最年長で、熱い情熱を持った少年。生来激し易い性格なのだが、それを自分で理解し常に冷静に慎重に行動する。頭が良いわけではないが、賢い生き方を出来るのが彼だ。アンナに対して恋心を持っている様だ。
キスカ・ネリウムは13歳でサルボウとわずか3日差で早く生まれたらしい女の子、トーティスが好きでいつも猛烈なアプローチをかけているが、特に気づかれていない様子、邪険に扱っているがサルボウとはなんだかんだ仲が良い。
サルボウ・トネリンは人懐っこい少年で面倒見も良い。同い年のキスカが大好きでいつも構っては邪険にされている。
サークラは現在10歳いわずと知れたボクの姉で、村一番の美少女だ
ピンクブロンドの髪がゆるふわしてかわいい、きっと将来は数多くの男性に言い寄られる素材だが、いかんせんウェリントンは人口300ほどの寒村である。
アルン・パースフィス 元気で明るい9歳の女の子、空気の読める良い子でお勉強も出来るし賢いけれど斜に構えた部分がある、真っ赤な髪をサイドテールにしている。
トーレスは8歳になるボクの兄で年下の女の子からモテる。本人はどうもキスカのことが好きな様だ。
ノヴァリス・パースフィスはアルンの妹でトーレスと同じ年、元気系だがアルンとは違い直情的で頭のゆるい子、頭はゆるいが、別にアホの子ではなく体力もあるため割と手に負えない。
真っ赤でクセのある髪をただ伸ばしている
エレノア・ラベンダー・ノア通称エッラ、8歳勢の中で一番高身長、すでに140cm近くある。家事を手伝ったり、子どもの世話をしたりと少し大人びた子であり、サークラほどではないが美人になると思われる。
カール・スタンリッジは7歳、鼻をほじったりスカートめくりしたりする悪ガキ、サークラに執着していていつも、俺がサークラをもらってやるからな!と言ってフラれている。年上の女の子に対して意地悪することが多い。
モーラ・シルバーレイクはカールと同い年でお転婆な女の子、妹をすごく可愛がるお姉ちゃんの面もある。よく日焼けしていて肩からちらりと見える白い肌とのコントラストが童女ながら妙な色っぽさを持っている。
ピピン・マルテは6歳の男子最年少カールの弟分でよくつるんでいる、ちょっとむっつりの気質があり、特に年少者に向かって悪戯をすることが多い、オムツを替えるといってボクの股座を割り広げてマジマジと見つめてきたこともあるので、要注意人物。
ケイト・テンペスタ風車小屋の娘、6歳ながら読み書きも習得済みで読書家で穏やかな性質だが意外と勝気な面がある。
オルセー・グランデは5歳、元気、超元気。アホな犬の様にひたすら元気な女の子、ひとつ年下のリルルと超仲良し
リルル・リン・リルレー病弱そうな印象を受ける色白な少女、事実として病弱でよく寝込む。オルセーになついている。
ノラ・ガーベラ・シルバーレイクは3歳になるモーラの妹、よくピピンに(性的な)イタズラをされている。ピピンがモーラに折檻されるまでがテンプレ
おとなしい子でいつもイスに座って眠そうにしている。
アイラ、ボクはあまり泣かず、よく笑う、手のかからない子ども。
アイリス、アイラの双子の妹、よく泣き、よく笑う、まだまだ幼いかわいい妹。
ボクたちはもうすぐ1歳になる
こんな面子で毎日過ごしている。退屈なはずがない。
ボクはまだはっきりとはしゃべれないので、いつも周りを観察してそれなりに楽しく過ごしているし、同い年の妹が可愛くて堪らないのでいつも世話を焼いては泣かせてしまう。
本当に楽しい。
同時に申し訳ないとも思う。
何の因果か僕は暁としての記憶を持ったままで生まれ代わってしまった。
そのことで僕がこのウェリントン家から、ウェリントン村から、アイラ・ウェリントンという少女を奪ってしまった様に感じて
(いや気がするのではなく実際に「僕」が奪ったのだ。)
そして罪悪感に駆られる、それでもこの簒奪を止めるわけにはいかない。
僕がこれ以上アイラを奪うわけにはいかないのだから。
そうした罪悪感と、日々流れていく穏やかな時間に僕は暁としての感覚が少しは薄くなり
2歳半の頃には、自然にアイラらしい生き物になりつつあった。
ボクことアイラ・ウェリントンは金髪に赤みがかった金の目の歳の割りに受け答えのしっかりできる子で、親の言うことをよく聞き手のかからないお利口さんと認知された、ただ少々活発で男の子と見紛う様なお転婆とも認知された。
逆にアイリスは、かわいいかわいいボクの妹は何をするにもおっかなびっくりの小心者で挙動はおっとりマイペース、暁には姉は居たけれど、妹は居なかったからこの妹の扱いにも最初困ったけれども、ボクがちょっと歩くと後ろをチョコチョコついてくるこのかわいい生き物は村の誰からもかわいがられるマスコット的なものになっている。
いつまでもいつまでもこんな日々が続くといいな
そういう風に感じる程になった。
ボクは前世での、暁としての神楽との日々を護れなかったけれど、この世界でのアイラとしての幸せを、信じられる様になった。
そうしたある日の朝のこと。
「アイラー、アイリス、朝ごはんだよ−」
二人の部屋(アイリスとボクは家で2番目に広い部屋を二人で使わせてもらっている)で、アイリスの着替えを手伝っているとサークラが部屋に入ってきた。
「おはよう、おねーちゃん」
「おはよーねーたん」
ボクとしてはもう少ししっかりとしゃべりたいのだけれど、舌がまだよく回らなくって、はっきりしない発音になってしまう。
アイリスほどじゃないけれど
「おはよう、二人とも、もう二人だけでもお着替え完璧だね!いいこいいこ」
着替えを完了しているボクとあとは整えるだけのアイリスを見てサークラがわしゃわしゃと頭をなでてくれる。
ボクのほうはやさしく、アイリスのほうはやや乱暴になでている。
あ、アイリスの寝癖が直った。
さりげなく直してくれた様だ。
「エヘヘー」
褒められてうれしいのかヘラヘラ笑うアイリス。
サークラはそんなアイリスを抱き上げ、さりげなく袖のボタンを留めた
「おきてからオシッコはした?そっかじゃあご飯だからいこっ!」
サークラはまだ12歳だけれど姉として、弟妹の面倒をよく見るできた娘だ。
サークラはボクのことをよく可愛がり、アイリスの世話をよく焼く今食卓に向かうのにも、アイリスは抱っこで、ボクは手を引かれているのもその顕れ。
まぁどちらも等しく愛されているのだけれど。
食卓に着くとすでに父と兄は待っていた。
父はなにか書類に書き込んでいる。
兄は母の手伝いか、皿や匙、アイリス用の子供椅子を用意している。
「おはよーおとーさん」
「おはよーちょーしゃん」
ボクが父に挨拶すると、続けるようにアイリスが挨拶をする、ボク以上の舌足らずで、本人的には多分ボクと同じ挨拶をしているのだけれど。
「おはよう二人とも、今サークラが起こしに行ったと思ったけれど早かったね」
父が書類から目を話さないままで挨拶してくる。
「部屋に行ったらもう着替え終わるところだったの、アイラはお父さんよりもしっかり者ですごいのよ?アイリスのお着替えも手伝ってくれて、それとお父さん二人を起こしてくるまでにそれ片付けておいてっていったでしょ。」
サークラはボクをベタ褒めした上で父を怒る。
「せっかくアイラはお利口さんなのに、お父さんの真似して、ご飯中にテーブルに虫やおもちゃを広げる様になったら困るでしょ?」
「あぁごめんよ、もうちょっとかかると思ってたから。」
あわてて書類を別の台に移す父と、アイリスをトーレスに渡しテーブルを拭くサークラ
「アイラ、アイリスおはよう。ほらアイリスはこっち」
トーレスが受け取ったアイリスを子ども用のテーブルの着いた椅子に乗せる
ボクはお行儀よく食べることができるが、アイリスはまだ結構汚すので子供用の椅子に乗せられる、イスから落ちても困るしね
それからハンナ母さんが料理をもってきた。
「おはよう、可愛い私の双子ちゃん。」
そういいながらスープ鍋をおいたハンナ母はボクとアイリスのおでこにキスをする。
くすぐったい。
アイラは(もちろんアイリスもだけれど)愛されている。
この家族の愛に、この村の愛に、ボクは応えたい。
食事の支度ができた。
母もテーブルに着き、手を胸の前で組む、アイリス以外の全員がそれに倣うと、ボクのまねをしてアイリスも手を組んだ。
聖母に祈る言葉を唱えてから、食事の時間
和気藹々と食事を始める。
ボクと違ってちゃんと子どものアイリスは、好き嫌いもあるし、食べ物で遊んだりするので、横に座っているサークラとボクとでお世話する。
カタン
また何か落としたのかなって思った、でも音の場所が少し遠かった。
音のしたほうを見ると、ハンナ母さんが真っ青な顔をしている。
額には汗が浮いている。
「ゴメン・・・」
母さんは口を手で押さえ、イスを倒しながら立ち上がり部屋から出て行った。
「お母さん!?お父さんトーレス、アイリスをお願い!!」
あわててサークラが追いかける。
ボクは少しだけ考えて、水の入ったコップを持って追いかけることにした。
家の外、すぐ近くにある茂みに母は居た。
真っ青な顔をしてサークラに背中をさすられている。
吐いているようだ。
(何か病気だろうか・・・・。)
「おかあさん、おみずもってきたよ。」
サークラが振り向いてボクからコップを受け取る。
「お母さん、アイラがお水もって来てくれたよ、気がつくいい子だね」
サークラからコップを受け取った母は2回口をすすいだあと、3回目は水を飲んだ。
その後こちらを向いてやさしい笑顔を称えて、ボクの頭を撫でた。
真っ青な顔のままで。
「そんな泣きそうな顔しないの、お母さん大丈夫だから。お水ありがとね」
撫でながら母はボクに言い聞かせる。
ボクはそんなに心細い顔をしていたのだろうか、少し青白い母の顔を見あげる。
瞬間フラッシュバックする、真っ暗な部屋で馬の様な異形に咀嚼されていた母、暗い中でもわかったその血の真紅。
どうしてかは判らないけれど、このアイラの体は時々思い通りにならない。
次の瞬間ボクはハンナ母さんにしがみついて、生まれ変わって初めての大号泣をしていた。
書き始めが肝心だと聞くので早めに書いてみました。仕事に行くので誤字脱字チェックもできてません
暁君はアイラちゃんになりましたが、あまりあわてた様子はありません。
でも心残りは十分にあります。