幕間4:監督生、アイラ・ウェリントン
おはようございます、暁改めアイラです。
今日は1年生の適性試験のある日です。
ボクもつい先月11歳になり、3年生になりました。
マガレ先輩はシリル先輩、デメテルと同様にホーリーウッドの近衛兵候補として入ることになり、ロディマス先輩は男爵領へ帰った。
ジル先輩は北へ帰らず、王都軍事研究所に勤めることになった。
ボクの周囲だとこんなところか、それから東シュバリエールは監督生予定だったマグナス先輩が、セルゲイたち過激派によって大水練大会にて当時1年生だったユーリに惨めに敗北したとして罷免され、代わりにセルゲイの腰巾着の片割れマイク・カッツォが納まった。
ただマイクは実力も気概もないため今でも生徒の指導に目を光らせているのはマグナス先輩のため、よりいっそう東は勢いがなくなり、マグナス先輩以外は各種大会にも選出されない状況が続いている。
西シュバリエールは予定通りフローネ先輩が監督生として、よく内部をまとめ、対東シュバリーエル対策も十分効果を発揮して、穏やかなものだ。
新入生に対しての東の強引な勧誘を抑えさえすれば後は本人たちが考えて決めることなので、西南北は一部の優秀そうな子たちに声をかけていくという従来のスタイルだ。
東は新入生を見るや、声をかけ、細かいルールを説明せずに、いいからちょっと入ろう?見たいな怪しい誘い方をしていくのだけれど、判を押した途端、あるいは入るといった途端態度が豹変するからね。
それを1人とか2人連れの女の子に集団でやるから性質が悪いんだけれど。
今年もこの適性試験の期間は、ボクたち在校生が身体能力測定の整理や検査自体を手伝っているけれど、去年はそこかしこで東生が問題を起こしていた。
『データ少し色つけてやるから、東に入ろうぜ』とかその人自身が強くなるわけじゃないんだから止めとこうよ?
まぁそんなしょうもない誘いに乗るやつなんてホーリーウッドにも必要ないけれどさ。
ボクを全校の女生徒の妹の様ものにして、対東の象徴とする作戦はそれなりに効を奏し、東の弱体化には一役買ったけれども、賢明な生徒が東に行かないという自体にもなりマグナス先輩は東シュバリエールを立て直すことも出来なかった。
(マイクは名前だけ監督生だからなにもしないしね。)
(おっとそろそろ女子の身体測定か・・・)
4年生は忙しいので3年のボクたちと2年生とが測定の手伝いをしているのだけれど。
何の因果か今年ボクは体重や身長を測る身体測定の当番になってしまった。
元男のボクとしては、女の子の秘密の数字を知る立場というものを、役得と思えばいいのか、申し訳ないと思えばいいのか・・・気分的には申し訳ない半分、悔しい半分だけれど。
不本意といえば不本意だけれど、なにせもう前世での物心ついてから過ごした年数と変わらないくらいの年数こちらで女の子してますからね、女の子の体の数字を見ても、悔しいとか負けたとかそんな気持ちばっかりで、ちっともうれしくなんてないんだ。
よく親しんだ子ならまだ邪まなモヤモヤも少しは出てくるんだけど・・・。
今この場で身体測定の手伝いとして選ばれた生徒は比較的胸の平たい子が選ばれている。
理由は去年エッラにここの手伝いをさせて、落ち込む新入生が続出したからだ。
エッラは普段から安全用の金属板を仕込んだブーツを履いているため、身長153cm程度の高さがあるけれど、実際には身長は149cmしかないそうだ。
(これは1年時の身体測定までボクも知らなかった。)
にもかかわらず・・・だ彼女の胸囲は既に92を超えている、なのに腰は細いし、足も程よい肉付きで多くの女生徒が、あの人の前で身体測定なんてムリムリ!!っ半泣き状態になってしまった。
筋肉も多いので体重は見た目より重いのだけどね。
それに対して、今ココで身体測定の手伝いに来ているものの体格ときたら。
ボクは11歳になり身長は132cmほどになって体重は27kgほど
アイリスは身長は同じだけれど、体重はボクより1kgも軽い・・・解せぬ。
エイラは12歳で142cm、体重は秘密だけれど、胸は正直ボクやアイリスと同じ階級
アイヴィはエイラと同じ12歳だけれど身長157cmもある、しかし、胸はボクと同じどころかボクたちよりも下の階級・・・あまり触れないで置こう。
この場に居る同級生で一番女子らしい体つきをしているアンリエットでも14歳でそこそこ胸はあるけれど、決して大きくはないし、そもそも獣人なのであまり比較の対象とはならないね。
そもそも胸が大きくなったのも、オーティスとの結婚後なのでまぁたぶん・・・もまれて大きくなったってやつなのだろう・・・。
ほかに2年が西南北から1人ずつ3人居るけれど皆ナインペタンがえらばれている。
(コレって新入生は傷つけないけれど、ボクたち傷つくんじゃないかな?)
「アイラちゃん先輩!こっち器具準備終りました。」
「む、早いですね。アナ褒めてあげます、よしよし」
ボクも勿論終わってるけれどね、十分に早いし、がんばった子は褒めてあげるのが信条だ。
ボクよりも10cm弱ほど身長の高い西の後輩アナの頭をなでてあげる。
去年はボクと同い年の後輩すら出来なかったため、全女性との妹を継続することになったけれど、先輩を呼び捨てというのも気まずいので、『アイラちゃん先輩』などという珍妙な呼び方がはやってしまった。
初めの頃はそもそも先輩として見られず。可愛い子が居る程度の扱いをされ、タイの色間違えてるよ?お下がりもらったの?なんて『やさしい注意』をしてくれる女生徒も多く居たけれど、大水練大会で優勝してからはソレも減った。
シリル先輩もジャン・スパロー先輩も居ない環境では、水上戦闘でボクと張れるのはユーリ、エッラ、マガレ先輩くらいだったし、陸戦でもやっぱりその3人以外敵なし、単純な魔砲ではリスティどころか、サーニャやマガレ先輩にも勝てなかったけれど。
それでも一定の成績は残させてもらった。
そのおかげで今では『頼れるけど頼られたいかわいい妹系勇者アイラちゃん先輩』という不思議なキャッチフレーズまで出来てしまった。
今も頭をなでていたボクの頭をいつの間にか他の2人の後輩がなでている。
「ミリアさん、カルナさん、準備終わったんですか?」
「はい、点検だけですしね。」
「異常ありませんでした、先輩!」
じゃあご挨拶して、始めようかね。
「ではそろそろ学長先生のお話が終わって、新入生たちも入ってくる頃でしょう。多感な年頃の、なれない環境に放り出された女の子たちが不安になったりしない様に、皆でやさしくしてあげましょう。持ち場についてください、それと新入生の中にスザク家の娘さんと、ユミナ先輩の妹のラピスさんがいるので、特に失礼の無いようにしてください。」
ぎりぎりで思い出した注意事項も伝えて、ボクたちは今日の職務を全うした。
該当の二人はなんと、同じ組み分けでソレも一組目で測定しに来た。
組み分けはあくまでも、この測定までの仮組だけれど、ラピス・ラズリ・フォン・ペイロード、アイビス・ウォーブラー・フォン・スザクの二人は仲よさそうに並んで入ってきた。
二人とも11歳で4侯の娘でもともと、王都で何度か遊んだこともあるそうで、仲良さそうに見える。
二人はボクやアイリスと同い年ということだが、二人とも140cmくらいありそうだね。ラピスのほうが一回り大きいかな?
メイドが2人の後ろに居るので。彼女らの御側だろう。
となるとどことなくジル先輩に似た薄い青の髪のメイドが、ヒアシンス・ナハト・・・か
「失礼、北伐候のご息女、ラピス様であらせられますか?」
先んじて声をかける。
「そうですけど?貴方は・・・・か、かわいい!貴方たち双子なの!?」
ヒシといきなり手をつかまれる。
かわいいもの好きなのはいいけど、ちょっといきなり失礼な子だ。
でも新入生相手だからね。
「はい、そうですよ?それでラピス様で間違いないですか?」
「あぁ!金髪でチョーかわいい子たちがいるって貴方たちだ!お姉様から伺ってます、アイラちゃん先輩?それともアイリスちゃん?」
人の話あまり聞かない子みたいだ。
「ボクはアイラ・ウェリントンです。」
「わー!ホンモノのアイラちゃん先輩だぁ!!」
目を輝かせるラピス、ユミナ先輩から聞いてるみたいだね。
「ラピスちゃん知ってる子なの?わ、私にも紹介して欲しいな。」
アイビスのほうは、ちょっとおどおど気味にボクを見ている。
「そちらはアイビス様ですね。ようこそ王都軍官学校へ」
アイビスがこっちをラピスと呼んでくれたので、確証が取れた、となれば。
「失礼ですが、お連れのメイドのヒアシンスさんだけ先にお一人でお通りいただけますか?他の方とご一緒していただくわけには行かないので。」
「あぁ、そういえば」
忘れてたといった感じに手を打つラピス、え?って感じの表情をするアイビスとそのメイドさん
「ヒース!アイラちゃん先輩の言うとおりになさい」
「はい、ラピス様、先輩お世話をおかけします。」
「いいえ、先輩としての勤めですから!」
胸を張って答え、部屋の中に先に入る、後輩たちが気にする様なことじゃあない、コレはボクの勤めなのだから。
「アイラちゃん先輩がその様に仰るとなんだか、子どもが背伸びしてるみたいで可愛らしいですね。」
「年齢的には貴方のご主人様と同い年なんですけれど?」
身長は10cmばかり違うけどね・・・。
「アイリスこの子だけ先に測定します。ちゃっちゃとするから準備して」
部屋の中に居るアイリスに声をかける。
「アイラ、もうきたの?わぁ確かにジル先輩そっくりだね。」
身長151cmくらいのこの、なんてよぼうかな?
「ヒアシンスはちょと長いのでボクたちもヒースとよんでいいですか?」
「どうぞどうぞ、私はメイドの身ですし。」
ヒースはジル先輩をそのまま髪を長くしてやったみたいな少し眠たげで可愛らしい顔立ちの男の子だ。
もう一度言う男の子だ。
メイド服を着ているし、見た目も可愛らしい女の子だけれど、超絶美少女顔のユーリとちがって地味かわいいタイプの顔立ちだ。
それで女装して北伐候の次女ラピスに近侍している。
本人曰く心は女だけど、女の子が好きだそうだ。
うんちょっと困った性癖だよね。
特例でメイドの制服は許可をだしてもらったけれど、扱いは学園としても久方ぶりの執事枠、前回はたしか7年前くらいっていったか。
問題になりかねないことはすべて除外していくということでこちらに指示が回ってきている。
何せ見た目は完全に女の子だし。
とりあえず、他の女の子はいない環境でヒースの身体測定を行った。
よかった、胸のトップとアンダーの差はボクが勝ってた!さすがに男の子に胸のふっくら感で負けたくはないよね。
そんなわけでそこからも職務を続けて、時には敗北感を味わいながらも全新入生をはかり終えたボクたちはデータを集めて、担当教官に提出してから、1ヶ月ぶりのに西のサロンへと顔を出す。
今日は1ヶ月半ぶりのシュバリエールの集まりがあるのだ。
顔を出すと既に他のメンバーは集まっていた。
今日は西のサロンに集まっては居るが集まっているのはすべてのシュバリエールの幹部だ。
といってもボクたちはマイク・カッツォを監督生とは認めていないので、この場にいる東生はマグナス先輩のみだ。
「みなさんお待たせして申し訳ありません。」
この場ではボクはアイリスと並んで一番年下なので
一番下座に座る、今回の議題の中心になるしね。
西のサロンを使っているので、西の幹部が一番出席している。
西の出席者がサリィ、フローネ先輩、シア先輩、アナ・バスケス、アイヴィとハスター、ボクとアイリスそれと付き添ってきたエッラ、ナディア、エイラ、トリエラだ。
東側からはマグナス先輩一人で南側からはコロネとフィレナ、オーティスとアンリエット、カルナ・シュトーレン・フォン・レイヴンの5人
北からは現監督生のレオンハルト・タイガーアイと一年時の班員だったサーニャとリスティに、キス族のエレベア・マスチフと2年のミリア・レヒトの5名
それから中央というべきか無所属というべきか西安候家のユーリ、北伐候家のユミナとラピスとメイド?のヒアシンス、南進候家のアイビスとメイドのフランルージュ・クレインケイプ、王領直轄地所属で中央シュバリエールのみに所属している軍務課・軍師コース4年ののローリエ・アルトラインとエーリカ・アルトライン、3年のリント、2年生の・近衛戦技兵課アミ・グリシーヌ・フォン・ボスケ、総勢33人の大所帯だ。
今回の主な議題は今まで監督生を置くことをしなかった中央シュバリエールに監督生の役割を持った人間を置くかどうかということだ。
今回のこの議題も昨年と同様にこの時期に増える東側の強引な勧誘行為に対する牽制だ、平気で脅迫とか女子に対して囲んで強姦とかするみたいだからねあいつら。
2年のときにまだ南に所属していなかったアンリエットが3人組みの東生に制服を破かれ下着も脱がされて、尻尾を握られるところまで行ったそうだ、オーティスの直感がアンリエットの危機を知らせて事なきを得、東生3名が退校うち二人は貴族だったため貴族の評判を貶めたとして王様がじきじきに出家命令をだしたけれど、どうなったやら。
このときに気分が盛り上がってしまって二人は許婚から配偶者に進んだからある意味つり橋効果的なものはあったのかもしれない。
連中は、東シュバリエールが女子生徒を派閥に取り入れる手段の一つだと言ったがセルゲイは知らぬ存ぜぬで通して処罰できなかった。
今回はコレまで以上に東に対応するため、自派閥に所属していない生徒でも王権の名の下に守ることが出来る中央シュバリエールを再組織化することを目的としている。
いままで通り中央とその他のシュバリエールは重複しての参加を出来るままにして、先にシュバリエールというシステムについての知識を十分に新入生に報せることが再組織化の目的だ。
ボクもシア先輩とフローネ先輩が接触してくるまでシュバリエールという言葉を知らなかったからね。
中央シュバリエールの監督生候補は、全校の生徒の過半から慕われる人徳が必要で、尚且つある程度穏便な思想の人物が期待されたため現在の候補は4人王家からサリィとリント、現在実質無所属のマグナス先輩、そして全女生徒から一定の人気を誇るボクだ。
ただマグナス先輩はどうしても東に反旗を翻す様なことは出来ない人なので彼に任せるとまたセルゲイたちが無理難題を言ってきかねない、サリィとボクは西所属なので、東の反発がありそう、リントはその言ってはアレだけれど人気がない。まったくないわけじゃないけれど、どうしても弱い。
目だった成績も上げてないし、もともと控えめな性格の方だしね。
話合いは長引いたけれど、もともと現在の強硬な東のやり方に反発するためのものなので、東に抵抗されてもあちらが強攻策に出ればそれを理由に王権に頼るということで一旦ボクが監督生になることになった。 ボクは次期西監督生でもあるので、中央シュバリエールの来年の監督生を決めるまで、暫くは2足のわらじになりそうだ。
中央シュバリエールの幹部にはそのまま、ユーリ、ユミナ先輩、ラピス、アイビス、マグナス先輩、アミ、が収まることになった。
アイビスは名前がアイリスに似ているからか、それとも同い年の中でもラピスと比べて胸がないからか、妙に親近感があってかわいく感じる。
む・・・まてよ?
アイラ、アイリス、アイヴィ、アイビス・・・。
アイで名前が始まる人皆胸がない・・・、いやまだボクたちは成長期・・・。
胸の大きさは遺伝の占める割合が大きいと聞いたからきっと未来はある。
ハンナ母さんは大きかった、ただあれが最初からなのかサークラが出来てからなのかによってはボクの成長時期も変わってくるけれど。
なんて雑念もはさみながら、ボクは西の次期監督生のまま、中央の監督生になることになった。
アイラの主観では1年後半と2年の間の細かい闘争やらはセルゲイのしょぼい悪事やユーリとのイチャイチャくらいしか書くことがないので少し飛ばします。
軍官学校生活後半のアイラ11歳からスタートです、同い年の後輩が入ってきました。
卒業した先輩たちも過半は再登場の予定があります。




